ダンテの森    
19 Jan 2016   03:37:59 pm
遅れた年頭のご挨拶
遅れた年頭のご挨拶

ブログ管理人

 2016年も早や20日間が経ってしまった。ブログ「ダンテの森」の更新を一カ月以上怠ってしまった。特に健康上の問題があった訳ではないし、1月7日に大阪で講演会が有った以外は遠方に出かけていたわけでもない。要するに怠惰である。時々、このダンテの森を訪ねてくれている読者の方には誠に申し訳無い事をしたと反省している。

 2016年は一体どんな年になるのだろうか、友人の一人が丙申(ひのえさる)は「激動の年」になると言っていた。確かに5月に伊勢志摩サミット、7月には参議院選挙が有るが、「激動」が起きるような雰囲気ではない。ゲリラによるテロでも起きない限り「激動」は起きないのではないだろうか。このままの政治体制が「平穏」に続くのが決して良いとは思わないが、一般国民としては「平穏」が何よりなのかも知れない。

 年末に岸田外務大臣の内輪の会合に出る機会があった。岸田大臣は自民党の保守本流と言われている宏池会の代表であるが、その宏池会の会合であった。岸田大臣はスピーチで、外相就任3年間で50数ヶ国を歴訪し要人と話すと、その最重要課題は地球温暖化対策であると言う。特に先進国の首脳は話の8割〜9割が地球温暖化対策と持続可能な社会への移行であり、テロ対策や安全保障が主要課題では無く、ましてや経済成長などは話題には上らない。ところが国内に戻ってくると地球環境問題は全く話題にはならない、このギャップに大きなストレスを感じると、話していた事が印象に残った。

 1月15日には国連大学で「SDGsシンポジウム」が開催された。昨年5月に国連総会で決議された「持続可能な開発の為のゴール(Sustainable Development Goals)」の事で、エスディージーズと読み国際社会では最も新しいキーワードである。海外の要人と付き合いのある人は絶対に知っていなければならない言葉である。ところが日本では全く広がっていない。これは2030年までに達成すべき17の目標と169の小目標が設定され、これらを世界196カ国の国連加盟国全ての国が2016年1月1日から実行して行くと国連決議が行われた。その数値目標の設定や達成方法は各国の裁量に任されており、法的な拘束は無い。ただ、各国が設定した目標は国連に報告され、その達成度合いは検証され報告される。

 例えば、SDGsの目標1は「すべての場所における、あらゆる形態の貧困の解消」である。そしてその小項目1.1には「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」とある。これは一見日本には関係ない目標のように見えるが、日本の企業が原料を輸入する時にその輸出元が1日1.25ドル未満の労働者を使っていないかどうかを確認する具体策を打つ必要がある。また、米国に次いで先進国中6位と大変高い相対貧困率(2012年で16.1%)を2030年までにX%に下げますと言う目標を設定しなければならない。日本のこども貧困率も先進国では大変に高いのでその為の目標も設定すべきである。

 SDGsは貧困と格差、食糧、健康、教育、ジェンダー、水、資源・エネルギー、生物多様性、ガバナンス(制度の構築)など多岐にわたり具体的な目標が決められている。日本では慶応大学の蟹江教授が率いるPOST2015プロジェクトがSDGsの第一人者で、今回のシンポジウムもこのプロジェクトの主催であった。同プロジェクトでは「処方箋」を発表している。
http://www.post2015.jp/

 伊勢志摩サミットは世界が注目するが、そこで議長国である日本がG7の議論をSDGsに集中することができれば日本は世界から見直される大きなチャンスを持っていると思うが、今行われている国会の議論を見る限り日本政府にはSDGsは全く頭に無い。

 SDGsの全ての項目が達成されるとその向こうに見えてくるのは、まさに「ファクター5」の提言する持続可能な社会が出現する。処方箋に書かれるべき治療法は「ファクター5」の中にあることを広めて行く事を今年の目標にしようと決めた。

本年も宜しくお願い致します。

敬白 ブログ管理人
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16 Dec 2015   10:05:29 pm
円安でも負ける日本製品
日本製品が売れないのは決して価格だけではない。安倍政権が円安誘導を続けているにも関わらず国際市場における日本製品の凋落は続いている。次はNewSphereの記事である。(ブログ管理人)

NewSphere
2015/12/11

中国が日本を抜いてアジア最大のハイテク輸出国に データが示す急速な輸出構造の変化

 アジアにおいて、ハイテク製品といえば日本――というイメージは、もう実態にそぐわなくなっているのかもしれない。それを示唆するデータを、アジア開発銀行(ADB)が8日、明らかにした。それによれば、2000年時点では、ハイテク製品輸出で日本がアジアのトップだったが、2014年にはシェアを大きく落としていた。反対に、著しい伸びを見せたのが中国で、2014年には日本に代わってトップに立っている。中国はアジアのハイテク製品輸出における日本の支配的地位を終わらせていた、とブルームバーグは報じた。

◆ハイテク製品で日本の後退、中国の台頭

 ADBは8日、アジア経済統合の現状に関する報告書を発表した。その中で、輸出製品の技術レベルをハイテクからローテクまで4段階に分類し、それぞれについて、アジア全体の輸出に各国が占めるシェアを明らかにした。またその4分類に基づき、それぞれの国の輸出構成比を示した。

 国別シェアの表の中で最も目を引くのは、ハイテク製品での中国のシェアが、2000年から2014年の間に、9.4%から43.7%へと大幅に拡大していることだ(なお、この表では、1996年、2000年、2014年時点でのシェアが示されている)。その半面、日本は25.5%から7.7%へとシェアを落としている。

 ハイテク製品のシェアが急激に伸びたことについて、ブルームバーグは、中国が自国経済の最重要の推進力として、イノベーションとテクノロジーを強化する点で成功していることを示している、と伝えている。

◆2000年以降市場シェアを大きく奪い続けてきた中国
 ADBの報告書の4分類について詳しく見てみよう。それぞれのレベルには次のような製品がカテゴライズされている。

ハイテク:航空機、宇宙船、医薬品、事務機器、電気通信機器、医療機器、精密機器など。(注・コンピューターや携帯電話はこちらに含まれる)
中程度ハイテク:電気機器、自動車、医薬品以外の化学製品、鉄道設備、その他の機械・設備など。(家電)
中程度ローテク:船舶、ボート、ゴム製品、プラスチック製品、石油製品、その他の非金属鉱物製品、卑金属など
ローテク:リサイクル、木材製品、パルプ・紙製品、食品、飲料、繊維製品など

 これらは、研究開発費を売上高で割った研究開発集約度によって分類されている。そのため、売上規模が大きな自動車などは中程度ハイテク製品に分類されている。

 2000年時点では日本がトップだったが2014年では中国に追いこされているというパターンは、ハイテク製品だけではなかった。中程度ハイテク、中程度ローテク製品のシェアでもそうだった。

 ローテク製品では、中国がもともとトップだったが、2014年には55.4%と他を圧倒するシェアを獲得している。

 つまり、2014年には4分類全てで中国がアジアのトップに立っている。アジア全体の製品輸出に占める中国のシェアは2000年から2014年の間に急激に伸びており、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、この変化はハイテク製品において最も印象的だと報じている。

 またFTは、中国の輸出企業は、地域の競争相手から市場シェアを奪い続けてきたが、中でも熱望されるハイテク製品部門においてそうだと語っている。そして、中国の市場シェア拡大の大部分は日本の犠牲のもとで起こったものだと語り、日本から奪ったものだという見方を示した。

◆日中の輸出産業の構造はどう変化したか
 次に、各国の輸出内訳について見てみよう。

 日本の場合、1990年、2000年、2014年時点でのデータが示されている表(一部の国を除く)によると、全期間を通じて、中程度ハイテク製品が輸出の最も大きな割合を占めていた。2014年には54.1%までも占めていた。中程度ハイテク製品に自動車や家電が含まれていることを考えれば、これはうなずけるものだ。その一方、2000年には31.7%を占めていたハイテク製品が、2014年には18.5%となっている。

 中国は、1992年時点では、ローテク製品が全体の54.3%と、最も大きな割合を占めていた。それが2014年となると、ハイテク製品が30.6%と最も大きな割合になっている。中国の輸出産業の構造が、この間に大きな変化を遂げていたことが分かる。

 この報告書の作成の中心人物、ADBチーフエコノミストの魏尚進氏はブルームバーグに、中国製ドローン、スマートフォン、さらには高速鉄道さえも国際的に競争力を持つようになっていること、中国のハイテク製造業企業の数は、2000年には1万社未満だったが、現在3万社近くまで増えていることをメールで語った。

 またテック・ノードは、ハイテク分野のいくつかの中国ブランドは、この2年間で世界的成功を収めていると語る。ドローン製造のDJIや、スマートフォン製造のOnePlus、シャオミといった名前を挙げている。

◆中国が真のイノベーションを生むのはこれから?
 中国のハイテク製品の輸出シェアは大幅に拡大したが、その内実や将来性はどうだろうか。

 魏氏はブルームバーグに、「いくつかの産業での成功のしるしを目にしつつある」、「しかし中国はまだアメリカやドイツのようなテクノロジーの世界的リーダーではない。私たちが目にしつつあるのは、中国が『並の技術』製品で迅速に追いつき、独自のイノベーションを生み出し始めているということだ」と語っている。

 これを深読みすれば、これまでの中国は、かつての高度成長期の日本のように、技術先進国に「追いつけ、追い越せ」と、主に模倣によって製品を送り出していた段階といえそうだ。

 逆にいえば、まだ伸びしろがあるということでもある。HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏はブルームバーグに、「中国は、まだ多くの重要部品を他国から輸入してはいるものの、国内でのハイテク製品製造にますます進出している」、「中国には高度な技能を持つ労働者がいて、高い競争力を備えつつある」と語っている。

 テック・ノードは、中国ではますます多くの企業が、本土でより多くの中核的ハイテク製品を製造することを競ってはいるけれども、いまだに、半導体技術を含め、製造のためのハイテク製品を多数輸入している、と語っている。こちらでは工作機械なども念頭に置かれているのかもしれない。

(田所秀徳)

原文URL: http://newsphere.jp/economy/20151211-1/
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03 Dec 2015   09:30:14 pm
731部隊の残渣
化血研と言う企業は、細菌兵器開発の731部隊の残党が設立した企業だ。もともと旧陸軍体質なので人命尊重の風土などあろうはずが無い。

 旧731部隊の高級将校は戦後GHQとの裏取引で戦犯を免れ、多くの幹部は国立大学学長、教授、国立研究所長、防衛大教授などの官職を得ている。また、薬害エイズのミドリ十字(現三菱ウエルファーマ)、日本製薬、日本ブラッドバンク、この化血研など日本の血液産業を作った。中には勲章の受賞者もいる。

 今回も書類に紫外線照射して古く見せる等まるでスパイもどきの犯罪をしている。731部隊の残党が戦後も日本に細菌をまき散らしながら、日本の医学界と製薬産業で隠然たる地位を占めていたことを良く表す事件である。病原菌をまき散らす事で、病人が増える事は製薬業界に巣食うこの連中には決して悪い事では無いのかも知れない。

 戦犯を自国の検察が今日に至るまで執拗なまでに、訴追し続けているドイツと違い、連合国の戦犯裁判で終わらせてしまい、自国の検察が戦犯を追訴しようともしないどころか、連合国によりA級戦犯とされた岸信介に首相までやらせるこの国には反省は無く、自浄作用も働きません。今、岸信介の孫が現在この国の首相である。昨日の毎日新聞の報道を読んで驚いたのは40年間放置していた厚労省は本当に今日まで知らなかったのかと言う事である。以下はその記事である。

毎日新聞 2015年12月02日
化血研:40年以上、不正製造…非承認方法で血液製剤

◇厚労省、処分へ

 血液製剤やワクチンの国内有数のメーカーである一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)が、国が承認していない方法で血液製剤を製造した問題で、化血研は2日、製造記録を偽造するなど隠蔽(いんぺい)工作をしながら、40年以上にわたり国の承認書と異なる不正製造を続けていたとの調査結果を明らかにした。厚生労働省は化血研を行政処分する方針。【古関俊樹】

 ◇「常軌を逸した隠蔽体質」

 化血研は、宮本誠二理事長が2日付で辞任したと発表した。他の全理事も同日付で辞任や降格などの処分とした。

 化血研が2日にあった厚労省の専門家委員会に第三者委の調査結果を報告した。報告書によると、化血研は遅くとも1974年には一部の製剤について加温工程を変更し、国の承認書と異なる方法で製造していた。90年ごろには幹部の指示によって、血液製剤を作る際に血液を固まりにくくする添加物を使用する不正製造を始めた。製造効率を上げるためだったという。ワクチンでは同様の不正行為は確認されなかった。

 医薬品メーカーは法令に基づき、国の承認書に従って製造し、記録を残す義務がある。国は定期的に記録を確認しているが、化血研は95年ごろから承認書通りに製造したと虚偽の記録を作り、検査をクリアしていた。記録用紙に紫外線を浴びせて変色させ、古い書類だと見せかける工作もしていた。

 ◇接種予約、中止の動き

 厚生労働省は化血研に対し、血液製剤の出荷差し止めに続き、ワクチンの出荷自粛を要請している。化血研のシェアが高く代替品の確保が難しい日本脳炎とA型肝炎、B型肝炎のワクチンが不足し、東京や千葉など各地で接種の予約を中止する病院が出始めている。ワクチンを販売しているアステラス製薬によると、出荷が再開されなければ、日本脳炎は来年1月下旬、B型肝炎は来年1月中旬?下旬に市場の在庫がなくなる可能性がある(11月27日現在)という。

 厚労省によると、日本脳炎ワクチンは2013年度に延べ429万2409人が接種。A型肝炎、B型肝炎は任意接種のため接種人数の統計がないという。厚労省は「製剤ごとに優先順位を付けて調査しており、終了後に出荷自粛の要請を解除する」と説明するが、解除の時期は未定。

 化血研が未承認製法で血液製剤を出荷していたことで、厚労省は他の製剤についても製法の実態調査を化血研に指示した。化血研は報告したが、厚労省は報告に不備があるとして、9月までに29製品の出荷自粛を要請。安全性が確認できたり、緊急性が高かったりする製剤は出荷できるようになったが、現在もワクチン3種類、血液製剤7種類は出荷できない。【古関俊樹】

毎日新聞記事のURL:
http://mainichi.jp/select/news/20151203k0000m040054000c.html?fm=mnm
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28 Nov 2015   09:47:40 pm
英国のシリア空爆
難民がテロを生むのでは無く、テロや戦争が難民を生んでいる。
ブログ管理人

 英国のデイビッド・キャメロン首相が英国議会で、シリア空爆に参加を議会審議するように求めた。1週間前に起きたパリのテロを受けてオランド大統領が非常事態宣言を出し、シリア空爆を強化したことや、ロシアの空爆の激化を見てシリアにおける紛争に終わりが近づいた事を見て取り、中東における英国のプレゼンスと利権を取り戻す為には空爆に参加しておく必要が有るとの判断だろう。

 キャメロン首相の提案理由によると、1番目にテロの脅威を取り除く唯一の手段が空爆であるとしている。これはどう考えてもおかしい。今回のパリでのテロの犯人は、全てフランスやベルギー生まれのアラブ系の若者である。彼らのほとんどは普通の若者であったと、若者たちを知る人たちは口ぐちに語っている。もちろん彼等を勧誘し手筈を整えたISのリクルーターは存在したとは思うし、ISの援助なしに自爆ベストや自爆ベルト、またカラシニコフや大量の銃弾や手投げ弾の用意はできなかったであろう。しかし、実行犯はごく普通のアラブ系のフランス人やベルギー人の若者であったことはまちがいないと思う。

 オランド大統領はパリでのテロを国内問題では無く、即座にISの犯行に結び付け、「これは戦争だ!」と叫んだ。911の時にジョージ・W・ブッシュが「これは戦争だ!」と叫んだ事を思いだす。ブッシュはアルカイダの犯行としその背後にはイラクが居ると決めつけて直ちにイラク攻撃に出たが、今回のオランド大統領の行動は、その図式に余りにも似ている。

 現在欧州には1500万人のアラブ系の人たちが住んでいる。その殆どは貧困層に属している。社会保障が比較的整っている欧州でも、新自由主義化の傾向が強くなるにつれ富を持つものはより豊かになり、持たざる者は貧しさを増す経済格差が大きくなってきている。その中で社会層の底辺に多いアラブ系の人たちが格差を感じる事は増してきていると思う。それに加えて欧州各国の地元民の貧困層を背景にした右翼の台頭である。彼らはムスリムを敵視し、各地でモスクの襲撃や、反イスラムデモを繰り広げたりしている。その為に反動的になるアラブ系の若者が出てくることも容易に理解できる。

 その内フランスには約500万人のムスリムが居る。彼らは第二次大戦後フランスの経済発展が目覚ましかった頃に、単純労働者として中東から移住してきた「出稼ぎ労働者」の2世や3世である。フランスでは出生するとフランス人となり2重国籍は許されていないので、彼らの祖国はフランスとなる。ムスリムの家庭で育ち、ムスリムである彼らはキリスト教徒が多いフランスの中では少数派として差別を受ける。タカ派のサルコジ政権時代には、女性にスカーフの着用を禁じたりしてそれが顕著になった。

 空爆は最も愚かな方法である。空爆はいわば無差別攻撃だからだ。高射砲が届かない数千メートルもの上空から攻撃目標を500kgも1トンもある爆弾を投下するのであるから、目標とする敵が居ると思われる建物であり目標物の周辺に居住する子どもや女性を含む非戦闘員が大勢死ぬ。敵とする目標の戦闘員がどれだけ損害を受けたのかは判明の由もない。しかし、必ずと言ってよいほど非戦闘員の女性や老人、それにいたいけな子供たちが死んだり重傷を負ったりしている。欧米の空爆やドローンによる攻撃は、それにより家族を失くした若者を過激派にする原因を作っているだけである。そもそも航空機による無差別爆撃は禁じられるべきであると私は考えるものである。その最たるものが広島・長崎であったが、これを戦争犯罪と断じなかった事が、いつの間にか空爆は通常の戦術の一つのように語られるようになってしまっている。これは米国での、銃所有を基本的な権利と考える、アメリカ人特有の権利意識の延長線上にあるものではないだろうか。米国内であれだけ銃の乱射事件が続いても、いまだに米国社会はかたくなに銃の保有を個人の権利と考えている。

 いつイスラム過激派が攻めてくるか、いつ空から爆弾が降ってくるか分らない、そんな所には住む事はできないと、住みなれた故郷を捨てて決死の覚悟で危険なボートに乗り、何日も野宿をしながら徒歩で国外を目指す難民の様子を私たちはメディアを通じて目にしており、心を痛めている人も多いはずである。ドイツのメルケル首相は「困っている人を助けると言う事が間違っていると言うのであれば、それはもう私のドイツではない」と言ってシリアからの難民を受け入れようとしているが、それとて出身党のCDU/CSUから反対意見が出され風前の灯である。しかしここで私たちが知るべきは、難民がテロを生むのでは無く、テロや戦争が難民を生んでいるのだと言う事実である。
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16 Nov 2015   05:00:28 pm
731部隊の記録
「フェス・731の記憶」に参加して
ブログ管理人

 11月14日に東京都大田区民ホールアプリコで開かれた731部隊展実行委員会主催の「フェス・731の記憶」に参加して来た。私の友人(故人)の子息の奈須重雄さんはNPO法人 731部隊細菌戦資料センターの理事として長年731部隊の研究をしている。その方から久しぶりにメールでこのイベントの案内を戴き参加した。
 13:00〜夕食の為の休憩を挟んで20:20までと言う長丁場に耐えきらず、最後の演劇は見ずに失礼した。

 最初の映画「前事不忘 後事之師 〜731部隊元少年隊員(飯塚良雄さん)の証言」59分は、飯塚さんが自ら語る戦争加害者体験が生々しかった。14歳で志願して731部隊の少年隊員としてハルビンの731部隊に配属され次第に自らの人間性を失ってゆき人体実験などを手助けする自分になって行った様をカメラの前で淡々と語る。戦後21歳の飯塚さんは、遼寧省の撫順戦犯管理署に戦犯として収容され3年余り寛容的な扱いを受ける事で、逆に悩み呻吟して徐々に人間性を取り戻し自ら罪を告白する。同収容所には約三千人が戦犯として収容されたが、約七割の人が不起訴となり日本に送還されている。終戦直後の中国では貴重であったはずの白米を毎回の食事に出すなど恵まれた食事、清潔な宿舎、草花を育てたりする自由も与られ、強制的な思想教育も無い寛容に満ちた雰囲気の中で、戦争により狂わされた兵隊達の人間性を取り戻すと言うこの収容所自体が、有る意味で中国の実験施設であったのかも知れないと思った。

 次に「731部隊遺跡を世界遺産に向けて」と題する侵華日軍731部隊罪証陳列館館長の金成民教授は、本年8月にリニューワルして毎日1万人の来訪者が絶えないと言う731部隊の施設跡地の保全と最近の発掘の模様をスライドで見せ、世界遺産登録への協力を呼びかけた。ドイツ国内にはユダヤ人を収容しガス室で殺していたKZが保存され、ドイツの子どもたちが第二次大戦の歴史を学ぶ教材となっている。また、隣国ポーランドには有名なアウシュビッツには大勢のドイツからの若者が訪れているが、日本には広島・長崎のような被害者としての展示は有っても加害者としての展示は乏しく、日本の若者には日本が加害者であったと言う意識は殆ど無い。ましてや、安倍首相は今年8月の70年記念談話で「孫や子に加害者としての責任を感じさせるような事が有ってはならない」とまで言っており、70年前の戦争責任は消え去ろうとしている。731部隊は細菌の研究をしていた純然たる医学研究所で、細菌兵器の研究などしていないと言うのが日本政府の言い分であるが、実際に人体実験をしたり、細菌爆弾を作って実験までしている証拠が出て来ている。金教授達の運動が成功して世界遺産への登録が行われる事を応援したい。

 その次の「731部隊解明の地平と謎」を熱く語ったジャーナリストの近藤昭二さんの話は、敗戦が色濃くなった時に731部隊は大規模な証拠隠滅作戦を実行して全ての証拠を無きものとしたが、米軍は日本国内に保管されていた資料の多くを米国に持ち帰った。その後、これらの資料は決してソ連に渡さないと言う密約の上で、多くの731部隊の上級幹部は米軍に対し証言をし、研究成果を米国に渡すことで戦犯を免れた。その後、数十万ページの資料が米国から日本の当時の防衛庁に返還されている。近藤さんは何度も政府に開示を求めたが、はじめの内はそんな資料は無いの一点張りであったのを、米国議会図書館の公開資料の中から、日本に返還された731部隊関係の資料の送り状の控えを発見して、それを根拠に防衛省に開示請求をしたが、こんどは見つからないと言っていると言う。開示請求は今後も続けるとのことであったので、今後が楽しみだ。

 フォアイエで展示されていたパネル展示はその内容の濃さと証拠性に圧倒された。最初にHIVで有名になったミドリ十字と言う血液製剤メーカーには数多くの731部隊出身の幹部が居たことである。下級研究員や研究所の労働者は、中国で捕虜となり先に述べた飯塚さんのように遼寧省の収容所に収容されていたが、彼ら幹部は戦況が悪くなる前に日本に帰国して、米軍との闇取引で免責され堂々と社会に復帰していたのである。それどころか、上級幹部の中には731部隊の研究成果を元に戦後10年以上も経った後に博士論文を書き、それが認められて博士となっている。東大や京大の医学部長まで務めた元731部隊員までおり、多数の大学教員、国立研究所員、大企業の研究所員がいた事をパネル展示には示されていた。貴重な話と資料を見る事ができ、これらを主催された方々に感謝の言葉を贈らせていただきたい。

 ドイツは連合国によって行われたニュールンベルグ裁判とは別に、ドイツ検察が独自に戦犯を洗い出し裁判を受けさせている。つい最近も93歳になったアウシュビッツの収容所のSS隊員が、過去を隠してドイツ国内で生活していたのをドイツ検察が見つけ出し訴追して、禁固刑に処している。それに比べ、日本ではただの一人も日本の検察は戦争犯罪人の訴追は行っていない。安倍の祖父に当たる岸伸介などはA級戦犯であったが、米国と日本政府の対ソ戦略上の措置としての密約により戦犯は解除され後に日本の首相になった。安倍の大伯父に当たる佐藤栄作は造船疑獄と言われた汚職で一旦検察に訴追されたが、当時の法務大臣の指揮権発動と言うウルトラCで訴追を免れている。このように日本の高級官僚は絶対に罪には問われないと言う前例が、安倍のように憲法違反も平気で行える土壌を作っている。これは、日本人の「のど元過ぎれば熱さを忘れる」「人の噂も75日」「過去は見ずに流す」と言う悪いことは忘れると言う国民性と関係があると思う。「忘年会」のシーズンが近づいているが、今年起きたことは決して忘れない「不忘会」としてゆきたいと思う。

NPO法人 731部隊・細菌戦資料センターのURL:
http://www.anti731saikinsen.net/
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