ダンテの森    
03 Jan 2012   03:31:14 pm
持続可能社会へのシナリオ
ヴァイツゼッカー教授のファクター5

 ヴァイツゼッカー教授の「ファクター5」は一部と二部に分かれている。第一部では省エネの具体的な実現の方法が述べられており、個々の具体例はこのブログで毎回紹介している通りである。

 その多くは単に実現可能であるだけでなく実際に成果を上げている。それらの実例を証明するために数値や図式を使って説明しどうしても専門的になってしまっている。前著「ファクター4」が資源を4倍に活用する改善方法を数値を使って証明していたが「ファクター5」の第一部もそのスタイルが踏襲したものになっている。

 「ファクター5」の第二部では省エネを進める為に現存している考え方や政策の例を挙げて、省エネを効果的に実施するには法的な規制や政治的な力を抜きには難しいことを述べている。また、過去の例を挙げて省エネは成功しても、かえって需要の増加を招き、その結果エネルギーの消費は以前より増えてしまう「エコ・リバウンド」について述べている。エネルギー消費の増加は人口の増加や今よりも更に快適な生活を追い求めるライフスタイルにより起きていることにも言及している。更に、改善可能な方法があるのに拘わらず既得権益を守るために現状維持が行われている現実世界の問題にも触れている。

 読者の皆さまから内容が難解であるとの御意見を頂戴しているので、できるだけ簡単な表現にするように心がけますので、ご愛読のほどよろしくお願い致します。また、皆様からのコメントもお待ち致しております。


本書はアマゾンで購入できます。
http://www.amazon.co.jp/dp/1844075915
カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
02 Jan 2012   07:11:17 am
省資源リバウンド
省資源―低価格―需要の増大―資源不足の連鎖

 これまで省エネのリバウンドについて述べて来たが、他の資源でも同じ事が起きる。

■米国の乾燥地帯に於ける水資源利用の効率アップについてはファクター4で紹介したが、効率向上によってより多くの土地が利用可能となった為にそれまで価値の無かった乾燥地帯の土地に買い手が付き、開発が進められた為に更に水資源が必要となるリバウンド現象が起きた。

■従来通信の伝達には銅線が使われていたが、グラスファイバーに依る光通信が開発された事で銅の需要は著しく減少し銅価格は大幅安となった。値下がりした銅は開発途上国での新たな銅需要を呼び起こした為に銅需要のリバウンドが起きている。

■農地使用の効率改善は1950年代から盛んに行われた結果EUにあっては農産物が過剰生産となった為に休耕促進の為に補助金が支払われるようになった。人口の増加、食肉の消費増加、農地の宅地化、バイオマス燃料の栽培等に依り土地が不足し、食糧危機を招く程のリバウンドが起きている。

■初期の携帯可能電話は1台数キロの重量が有り、価格は数十万もした為その使用者は警察とか大企業の役員などに限られていた。これが25年後の現在は数10グラムの軽さとポケットに入る大きさとなり使用される資源の量は1/100以下となった。しかし、小さく、軽く、何よりも安くなった事で一般に使われるようになり市場規模が数10万倍となった。その為に現在携帯電話に使用される資源の量は25年前に較べ1000倍となった。これも典型的なリバウンド効果である。(写真はNTTのショルダー電話)

 このように省資源の為の開発が成功すると、必ずリバウンドが起きている。これからはリバウンド対策も考慮した省エネや省資源の開発を行う必要がある。


カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
01 Jan 2012   12:34:33 am
本年も宜しくお願い致します。
2012年が持続可能社会へ近づく年となりますように。

 昨年は地球の人口が70億人を突破した。10億人の先進国、30億人の発展途上国そして30億人の後発開発国の人々がこの奇跡の惑星に住んでいる。

 生命を育む条件が整っている奇跡の惑星が生まれたのは46億年前と言われている。当時の大気には高濃度のCO2が有ったが、32億年前に現れた植物性プランクトンの光合成により徐々にCO2は減少し長い歳月を経てやっと現在と同じ程度の濃度となり8億年前に多細胞生物が現れ、20万年前にぼくたちの祖先と言われるホモサピエンスが現れた。1万年前に農耕と牧畜が始められ、200年前に産業革命が起きた。

 かつて高濃度であったCO2は光合成により油脂に変わり海底に沈み圧力で地層となっていた。これが石油や石炭である。ぼくにはこれは地球と言う奇跡の惑星が生命体を育む為にCO2濃度を下げる為の準備だったと思える。

 産業革命はそれまで人力、家畜、風力、水力等で行っていた作業を機械に置き換えた。その為には動力のエネルギー源が必要で石炭石油を掘り出して燃やすようになった。電気の発明は発電所を必要とし、自動車は石油を必要として、人類はかつて地球がそっと地底にしまっておいた石炭石油を掘り出して燃やしCO2にして大気中に放出をしている。その為に過去何万年も変化が無かったCO2濃度がこの100年間で急激に上がり、それにつれて地球の温度も上がった。これが地球温暖化だ。

 地球が育んできた生命体の頂点に立つ人類が母なる地球を傷めている。現在の地球温暖化を引き起こしたのは10億人の先進国のぼくたちだ。今発展している30億の人たちがぼくらと同じ方法で化石燃料を使うと単純に考えて3倍の速さでCO2濃度が上がることになり、残りの30億の人々が発展する前に奇跡の惑星は人類を養って行けなくなってしまうかも知れない。時間はもう無いのだ。

 ファクター5でヴァイツゼッカー教授はエネルギー効率を5倍にする方法が既にたくさん存在する事を証明している。さらに10倍にする事も可能であるし、ゼロエミッション(排気ガスがゼロであること)も夢では無い。方法はあるのだ。これを実行するには乗り越えなければならない幾多の壁が有るが、一番大きなものはぼくたち自身の考え方の改革であろう。
カテゴリー : ブログ管理人 | Posted By : dantesforest |
31 Dec 2011   11:12:07 am
良いお年をお迎え下さい。
2011年は地球環境を考えさせてくれた。

 あと、僅かで今年が終わる。人類は地球の公転の周期により繰り返す季節の移り変わりの変化を事前に知る智恵として暦を作り厳しい自然と向き合って来た。

 先進国に住む現代人にとって暦はどのくらいの意味を持つのかは疑問である。農業や漁業に直接かかわる人は別にすれば今や季節はさほど個人の生活に影響は与えない。それでも年末になると人は気ぜわしくなり急にいろいろと身の回りを片づけたりする。人間のDNAには1年と言う周期に対する反応が書き込まれているのであろう。

 2011年3月11日に失われた多くの命にはそのご冥福を祈る他ないが、この日は人類、とりわけ日本人にとってエネルギー問題を振り返らせてくれた。地球の営みに対する人間の無力さ、人類の作りだした技術のもろさ、政治家の責任の重大さの3つであったと思う。

 この日は環境問題には長年関心を持ってはいたが特にこれという活動をして来た訳ではないぼくにこのブログを書くきっかけとなった。8月15日から書き始めて書き込みは130回を超え字数は通算で7万字になった。毎回図版を入れて読者が少しでも興味を持ってもらえるように努力をしているつもりである。最近は多い日には200人もの訪問者があり、平均でも5〜60人の人が読んでくれているようである。内容が難解とのご指摘を何人かの読者から直接戴いて居り、ぼくの表現力の足りなさを反省している。

 ファクター5はもともとローマクラブへの報告書であるところから、どうしても内容が専門的になってしまう。もっとかみ砕いて書く必要があると思う。ヴァイツゼッカー教授は月刊総合誌「潮」で連載をしているが、それを読む読者の参考にして戴ければ幸いである。

 拙文をがまんしてお読み戴いた読者の皆様に感謝を申し上げると共に、2012年が皆様にとってより良き年でありますようにご祈念いたします。

カテゴリー : ブログ管理人 | Posted By : dantesforest |
30 Dec 2011   05:41:01 pm
省エネ・リバウンド
自動車に見る省エネの対策の歴史

 今年も後2日となった。皆様はもう正月への準備は万端整えられたと思う。お正月はダイエットをしているぼくには最も気をつけなければならない時である。ダイエットにはリバウンドが付きものであるが、省エネの世界も同じである。

 最も有名なリバウンドは1975年米国議会で制定されたCAFE(燃料消費基準)である。この基準はそれまで7.6km/ℓであった乗用車の燃費を11.4km/ℓを目標に改善すると言うものであったが、結果的にはこの目標達成には20年もの歳月を要した。
1986年にガソリン価格が下がり自動車の使用率が1990年代まで伸び続けた結果CAFEの基準からは遠く離れてしまった。

 その典型的な例がSUV(Sports Utility Vehicle)である。自動車業界はCAFEが乗用車を対象としていた事に目を付け、高級乗用車の快適さを備えた4輪駆動トラック、SUVと言う新しいカテゴリーを創出した。

 当時のロナルド・レーガン政権(1981〜1989)は当時世界のすう勢であったガソリン税を認めないばかりか、SUVに対して税の優遇まで行った。この為、簡単に誰にでも借りられるサブプライムローンによって大量に販売された郊外の建売住宅に住みSUVを何10キロも走らせて仕事に通うライフスタイルがブームを呼び、アメリカ経済は最高潮となる。これに伴いアメリカのガソリン使用量とCO2排出も最高となる。

 この後2000年に入ってガソリン価格が高騰し、郊外からの遠距離通勤は魅力が失せ、郊外の新興住宅地の価格が下がりサブプライムローンが破綻し、それを金融商品としていた市場が下落してリーマンブラザーズの倒産とつながった。

 現在のオバマ政権は2016年までに14.4km/ℓ、2025年までに23km/ℓの燃費を達成すると目標を発表している。燃費の優れた車には連邦環境保護局が発行するEPAステッカーが車に貼られる。

 来年の大統領選挙でオバマが敗退するとこれも変わる事になるかも知れないが、私たちの奇跡の星は1日の余裕も持っていない。

 写真のようなトラックがアメリカでは今でも最も人気が有る。
カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
 
ページ: Prev 1 2 3 ...198 199 223 224 225 Next
Dec 2024 1月 2025 Feb 2025
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
にほんブ�前村
カテゴリー
Factor Five [220]
General [13]
ブログ管理人 [315]
他メディアより [577]
リーセント
北極海氷、2番目の小ささ
地球環境の救世主になるトランプ?
Oceans’18Kobeを訪ねて。
第三回国連環境総会
気候変動は国際社会の責任
トランプに消されるEnergy Star
トランプ大統領の誤算
ドイツ市民の誇り
水中CO2センサー
6年ぶりのメキシコ
アーカイブ
7月 2012[77]
6月 2012[80]
5月 2012[93]
4月 2012[97]
3月 2012[98]
2月 2012[68]
1月 2012[96]
12月 2011[100]
11月 2011[99]
10月 2011[109]
9月 2011[111]
8月 2011[97]
ユーザーリスト
Admin[5]
dantesforest[1120]
検索
組織化
Powered by myBloggie 2.1.4