わずかな環境バランスの変化は生物多様性に大きな影響を与える
ブログ管理人
世界的に感染が広がり、中米などでカエルなどの両生類の大量死を引き起こしているカエルツボカビ菌が、日本を中心にしたアジアが発生源の可能性があることが国立環境研究所などの調査で分かった。日本のオオサンショウウオなど両生類の多くが同菌に感染しながら死んでおらず、菌の遺伝子の種類も海外の25倍と多様だからだ。米国では感染したオオサンショウウオが死なない理由を解明し、両生類絶滅を食い止めるための研究にとりかかるという。
カエルツボカビ菌は真菌の一種。水を媒介に広がり、感染すると皮膚が硬化し、皮膚呼吸ができなくなるなどして死んでしまう。
写真のコスタリカ原産フライシュマンズ・グラス・フロッグやコスタリカの両生類はカエルツボカビの急激な増殖により、この数年で絶滅の危機にさらされている。研究によると、平均気温の上昇とカエルツボカビの増殖には関連があるとされている。
中央アメリカ・パナマの国立公園では1998年に同菌が確認され、約2カ月間でカエルの種が6割以上絶滅し、生息数も9割以上減った。オーストラリアでも年間100キロのスピードで菌が広がったことが報告され、「両生類にとって過去最悪の感染症」といわれている。
カエルツボカビ菌はアフリカ原産のアフリカツメガエルがペットや実験動物用に輸出されるとともに世界的に広がったというのが通説だった。日本でも平成18年12月、外来のペットのカエルで初めて確認され、専門家らが緊急事態宣言を出す大騒ぎになった。
ところが、国立環境研究所が北海道から沖縄まで全国1千カ所で約5500の両生類の検体を検査したところ、全体の3%が菌に感染しているにもかかわらず、大量死が発生していないことが判明。菌の遺伝子も海外では2種類にすぎないのに、日本では50種類あることが分かった。
さらに、世界でカエルツボカビ菌が広がり被害が出たのは1980年代だが、日本ではそれより100年近く前の1902(明治35)年のオオサンショウウオの標本からもこの菌が検出された。このことから、日本では同菌が昔から自然に存在し、日本の両生類は抵抗力を持つようになっている可能性が高いという。
米国・ワシントンのスミソニアン国立動物園は日本から譲り受けたオオサンショウウオでこの謎を解明、研究するとしている。
韓国や中国でも日本と同様、カエルツボカビ菌の被害が出ておらず、この菌はアジアが起源の可能性が高い。同菌についての脅威は日本ではないと思われるが、環境破壊や地球温暖化などの影響で、両生類が危機的状況であることには変わりはない。
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