中国、インドにすぐにでも切り替えを提言
セメント産業は重工業の中で際立って環境負荷が大きく、2011年には世界で30億トンのセメントが生産され、7億トンのCO2を排出している。生産量は中国、インドを中心に急激に増加しており2030年には年産50億トン(CO2,排出11億トン)となる。その先はアフリカ、ラテンアメリカ、アジアの後発開発国での需要が伸び、2050年には60億トンが生産されると推測されている。これを従来のポートランドセメントで行うと年何13億トンのCO2発生源となってしまう。
ファクター5では、古代人の知恵である古代セメント、ジオポリマーセメントに切り替える事を提言している。現在のセメント、ポートランドセメントは石灰石を1400度の高温で焼結して作る為に大量のエネルギーを必要とし、焼結時に石灰石から大量のCO2が出る。その為に、省エネ技術が進んだ日本や欧米の最新設備でも1トンのセメントを作るのに0.19トンのCO2が発生する。製造技術が遅れている中国やインドでは0.25トンのCO2が環境に放出される。これから急激に生産量の増加が見込まれている中国、インド、後発発展国にこそジオポリマーセメントを使う必要がある。特に中国、インドにはフライアッシュもスラグも再利用されること無く、文字通り「山積み」になっている。
現在、ジオポリマーセメントを商業ベースで大量生産している会社がオーストラリアのゼオボンド社である。メルボルン大学のジオポリマーの専門家でもあるジェニー・バン・デベンタ―(Jennie van Deventer)教授が2008年に設立した。原料には石炭火力発電所から出される微粉末にされた後バーナーで燃やされた後に残る石炭灰、フライアッシュと製鉄所から出されるコークスの燃えカスであるスラグが使われる。ジオポリマーセメントは常温で製造される為に、製造工程でのCO2排出は僅かである。
当社の製品はイ―・クリ―ト(E-Crete)の商標で販売されている。現在のところ製造コストはポートランドセメントより10%程割高になっているが、大量生産されるようになれば、ポートランドセメントよりも安くなる可能性が高い。
ジオポリマーセメントの性能は、ローマのコロッセオがジオポリマーセメントで建造されており、2000年経った今も現存している事から実証済みと言える。強度的には、鉄道用の枕木として使用される実績が有り十分である事が分かっている。ポートランドセメントに較べ水分の透過率が少なく鉄筋の腐食も少ない事が分かっている。
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