製鉄所のファクター5
地球温暖化ガスの7%は製鉄から排出されている。単一産業としてはセメントと並ぶ大きな分野である。2010年の世界の鉄の生産量は約14億トンである。
製鉄を産業基盤と捉える国が多く、歴史的背景や政府の政策に大きく影響を受ける産業でその国の国情を反映しているために一概に効率の違いを国家間では比較しにくい複雑な産業である。
製鉄の効率は1トンの鉄を作るのに必要なエネルギーの総量で表す。世界平均(1995年)では約28GJ/T、1トンの鉄を作るのに28ギガ・ジュールのエネルギー、電力にして7700kWh、石炭に変換すると約1トンを使っている事になる。製鉄所と言うと高炉を連想するが、製鉄の方法には大きく分けて高炉と電気炉がある。高炉では主に鉄鉱石から電気炉では鉄スクラップを原料とする。石炭を大量に使う高炉は熱効率は40%にとどまるが、電気炉はその半分のエネルギーで済む。いずれの方法もまだまだ改善の余地がある。電気炉では1965年から1990年までの間に50%の効率アップを達成しており、1990年には550kWh=2GJ/トンを達成している。世界の44%を生産する中国では高炉と低効率のシーメンス・マルタン炉による生産が主で有る為に36.7GJ/tonである。ドイツは18GJ/ton、日本は22GJ/ton(いずれも1995年)である。
現在世界で一番効率の良い製鉄工場はアメリカのNucor社である。ここでは主に自動車のスクラップを電炉で溶解しそのまま直接薄板を作るというストリップキャスティングと言う技術で製鉄から最終製品まで全てを含めて2GJ/tonを達成している。Nucor社はリーマンショックの際に1名の解雇者も出さずに乗り越える事ができた優良企業である。このストリップキャスティング技術は日本のIHIとオーストラリアのBHP Billiton社の共同開発になる技術である。ちなみにこの技術は1857年に英国で発明され150年間日の目を見る事の無かった技術である。
Castrip社のホームページ(英文のみ)
http://www.castrip.com/
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