地球温暖化と大海流
地球温暖化は大洋の循環システムにどんな変化を与えるか。
科学者は北大西洋の海水温度と北極海の氷山の溶解による淡水の増加が大洋のベルトコンベヤーと呼ばれる海流への影響に注目している。この海流により地球の気候は大きく影響を受けていると考えられるからである。
2016年9月6日Yale Environment360 Nicola Jonesの記事より
原文(英語)URL:
http://e360.yale.edu/feature/will_climate_change_jam_the_global_ocean_conveyor_belt/3030/
デューク大の海洋研究チームのリーダー、スーザン・ロージアー(Susan Lozier)とスタッフには多忙な年であった。5月から9月までの間に彼らは北大西洋に5回の調査航海を行い、海底深くの深層海流まで測定機材を潜らせ計測を行った。この実測データセットは史上初の北大西洋における海流の変化を包括的に捉えたものとなった。この観測結果はこれまで謎とされていた海流の長期的変化を予測するのに寄与するのではないかと期待されている。
同様の計測が大西洋の中央部のカナリア諸島からバハマにかけて既に実施されており、大洋の大規模な循環が阻害されていることが報告されている。この計測は2004年からはじまり、これまでに海流の動きが30%以上減少しているとし、北海に向けて送られる温かい海水の流量が減少しており欧州の気温は低下するであろうと予測している。
この数年、科学者は大西洋の動きが遅くなっていることに懸念を持っている。大西洋は地球の海流のエンジンとして、大量の冷水を北大西洋で海底深く沈め南から来た温かい海流を北海で浮上させて海流を起こして南へ押し出し、更に太平洋にまで運ぶ動力源となっている。フロリダ大の古気候と海洋流の研究者であるエレン・マーチン(Ellen Martin)は「キーコンポーネント」だと言い「大西洋の動きが鈍くなるとそれは全球的な影響が起きる。北半球は冷たくなり、インドとアジアのモンスーン地帯には乾燥が起き、北大西洋の嵐は強さを増し、大洋の海水の攪拌の度合いが少なくなることはプランクトンの減少につながり海洋の生態系に悪影響を及ぼします。」と語る。
古気候学者は海流の流れが急激に低下した時にヨーロッパの気温が5〜10℃低下し、それが気候に変動を与えたことを指摘している。コンピュータシミュレーションを行っている人たちは、人類の活動により引き起こされた地球温暖化が大西洋海流に与えた影響と、どのように速度が低下し気候に影響を与えるのかをを証明しようと試みている。
現在議論となっているのは、現在の大西洋海流の速度低下が気候変動によるものか、それとも海流の速度の歴史的変化サイクルによる変化かであるのかと言うことである。この数年の研究結果はその両者に有利なものとなっている。冒頭のロージアー達の調査結果が、この議論に決着をつけることが望まれている。
<以下略> |