原発と石炭の日本
国際社会が原発と石炭火力から自然エネルギーへとシフトしようとしている中、ひとり日本だけは原発と石炭火力を推進している。それも国内だけでなく発展途上国にもそれを押し付けようとしている。海外の電力会社は既に縮小策を取り始めているのに日本の電力業界はいまだに成長戦略から離れようとしない。政治とべったり癒着した日本の最も汚い既得権益の姿が現れている。
ブログ管理人
昨年末に行われたパリサミットで安倍首相は2025年にCO2を80%削減すると発表した。因みにこの数値目標は民主党政権が発表したものである。安倍首相の頭に描いたものは原発であったのだろう。なぜかと言うと太陽光や風力などの再生可能エネルギーは2025年に22〜26%と言っているので、残り58%〜54%は原発でと暗に言っていると思えるからである。しかし、現在の電力業界と経産省とその下部組織の資源エネルギー庁はこのパリ協定すら無視した方向の石炭火力発電所に向けて驀進中である。
火力発電所には石炭、石油、LNGとあるが、同じ電力を生むのに石炭はLNGの2倍のCO2を出す。だから現在40%の効率を日本の持てる技術を結集して究極の技術革新をしても2030年に45%を達成してもLNGには遠く及ばない。世界の各国では石炭火力離れが既に起こっている。図はG7各国の石炭依存度の比較であるが、線より上は現状を表しておりグレーはキャンセルされた計画でG7合計で63GWである。下の緑と薄緑は現在稼働中の石炭火力を閉鎖か閉鎖を決定したものでその合計は2020年には124GWになる。右端で日本はひとり30GWの稼働を続けかつ建て替えが計画されている。
日本では実際石炭火力発電所建設ブームである。現在47基が計画中である。経産省は日本の石炭火力発電技術は世界トップであるので世界の開発途上国に技術援助としてどんどん建設しようと働きかけている。エネルギー超大国である米国と中国が石炭火力から離れようとしている事から石炭の需要見通しが減り石炭価格が安いことが日本の電力業界が食指を動かす理由であり、貧困な開発途上国にとっても魅力なのだ。
日本の役所と電力業界は原発と石炭火力は途切れの無い電力を供給する事ができるベース電源であるとしているが、実際には原発はしょっちゅう止まっている。安全性確保が要請されているために少しのトラブルでも念のために止めるのが原発の運転方法である。その為に原発の傍には必ず石炭火力発電所がペアのように建設されている。石炭、石油、LNGを燃やす火力発電所は電力調整が細かく可能でペアを組んでいる原発に合わせて調整をしている。原発は発電コストが安い(核廃棄物の処理と廃炉費用は国費なので)とされている為そのバックアップも燃料代が安い石炭でなければならないと言うのが電力会社の理由である。
2016年6月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)と言う電力業界の団体が、これまでエネ庁が行っていた電力業界全体の取りまとめをやることになり、2016年度電力供給計画なるものを発表している。まず需要予測であるが、今後10年間は年率0.5%で増加し続けるとしている。人口減少、生産人口の減少による経済活動の減少も省エネによる電力消費の減少も考慮されていない。電力業界が今後も成長し続けることが前提のようである。石炭火力は2016年4178万kWが2025年5060kWと21%アップとなっており、CO2を半分しか出さないLNGは逆に2016年4581kWから2015年3206kWに減らすつもりらしい。
石炭火力発電所にはこれまで地域住民とのアセスメントが法律で義務付けられており、通常計画発表から完成まで約10年かかっていたが、安倍政権はこれを「明確化」して新しい法律では3年に短縮した。風力発電所の建設には500kWの風車の建設にもアセスメントが必要であるが石炭火力発電所は112500kW以下であれば全くアセスメントは必要ではない。
日本の環境政策は、パリサミットなど金持ちクラブの会合向けと、貧困な国向けと180度異なった事を平気で行う。電力業界と言う巨大な資金源の呪縛から逃れることができないのが日本政府である。このままでは石火をめぐる国際社会のジャパン・バッシングが始まってもおかしくない。 |