狩猟の缶詰
ブログ管理人(BBC.COMより)
カンドハンティングと言う言葉を聞いたことがあるだろうか。去る9月6日にBBCを見ていて初めて知った言葉である。Canned Huntingと書き直訳すると「缶詰された狩猟」であり、サハラ砂漠より南のアフリカ、サブサハラ特に南アフリカで行われている。
ライオンのハンティングの歴史は古く紀元前600年頃の古代エジプト時代から戦士の勇気の証としてライオン狩りは行われていた記録が残っている。ローマ時代には、コロッセオにライオンと戦士を戦わせる出し物さえもあった。地元のマサイ族の戦士が一人前になる儀式にはライオン狩りがある。ライオンの行動には習慣性が無いために、行動を予測するのが簡単ではない。専門のガイドを雇って何日も車でサバンナを走りライオンの影をさがす。ライオンは一発目の弾丸で仕留めそこなうとハンターの命は危ないので、ハンターには銃の腕が良い事が条件である。都会人にとって過酷な自然の中を何日もライオンを追い続け、そっと風下から射程距離まで近寄り高まる興奮を抑えて一発で仕留めなければならない。それがハンティングの醍醐味だと言う。仕留めたライオンはたいてい頭部がはく製にされ、ハンターの家に飾られ訪問客は主人から武勇伝を聞かされることになる。
「缶詰された狩猟」はちょっと違う。ガイドに従って車を走らせると間もなくたてがみの立派な雄ライオンが車のすぐそばに登場する。ガイドが口笛を吹くと立ち止まってこちらを見ている。そこでガイドは「今だ撃て!」と合図する。「バーン」脆くも崩れ落ちるライオンにハンターは更にとどめの一発を撃ち、車から降りて記念写真を撮る。この間数時間である。
ここのライオンはフェンスで囲まれたサファリパークで飼育されており、今日まで人から餌を与えられて育ってきているので人を恐れることを知らず、口笛を聞くと「あ、ゴハンだ」と立ち止まり人間によって来て、まさか殺されるなどと思っていない。サバンナに有って食物連鎖の頂点にいるライオンは繁殖力が強く、一回に5〜6頭の子供を産む。子供たちは人間から餌をもらってすくすくとフェンスの内側で育って行き、成獣になるとハンティングの対象となる。たてがみが生えた雄ライオンは6000ポンド(81万円)で一番高い。年に推定2万頭の飼育されたライオンが殺されていると言う。自然保護団体や環境保護団体はCanned Huntingの禁止を求めているが現在実現の兆しは無い。
このサファリパークの経営者は、自分たちがやっている事業は野生のライオンが減少するのを防いでおり環境に貢献しているのだとし、これは新しいビジネスモデルであると言い、止める事など考えられない、そんなことをしたらここの従業員は仕事を失い、自治体は収入が途絶えてしまうと主張する。サブサハラ全体で推定年間数百億円のビジネスになっていると言う。
ここにやってくる客の90パーセントは米国人だと言う。自分の銃でライオンを仕留めるのが一生の夢だった人たちで、このビジネスは彼らの夢を安全にお手軽に叶えているのだと言う。しかし子供のころから食べ物を貰い人間を疑うことを忘れてしまったライオンを打ち殺させるビジネスなど有って良いのだろうか。生命の尊厳などどこにも感じる事ができない。このように生命をまるでモノのように考えてそれを新しいビジネスモデルだと言う。経済成長神話に取り憑かれているこの人たちの目を覚まさなければならない。
次のURLでBBCの動画(英語)が見ることができます。
http://www.bbc.com/news/world-africa-37312245
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