ダンテの森    
01 Mar 2016 01:51:20 pm
一千万分の一の世界
一千万分の一の世界
ブログ管理人

 地球温暖化の話をする中で私たちが住む地球が一体どのようなものであるかを想像して見ることが重要であると思えるようになってきて、地球を身近に感じる方法は無いかと思案してみた。と言うのは私たち人間の存在が地球と言う巨大な惑星にくらべてあまりにも小さく、その表面に生存してはいるもののその両者の関係がどうもピンとこないところから、何か地球が際限なく大きく無限に私たちに富を与え続けてくれるような錯覚を起こしてしまうのではないのかと思ったからである。

 私たちはいま全知全能の神ゼウスとなり、一千万倍の巨人になって目の前に地球を見てみる事で地球と言う惑星を観察してみる。地球の直径は12,742kmである。その一千万分の一は直径1.2メートルの地球があると考えてみよう。丁度大人が両手を広げてやっと抱える事ができる位の大きさの球を地球として空想して見るのである。そうすることで地球がどのように営んでいるのかを理解してみたい。地球は太陽から放たれるエネルギーを得ているが、その太陽はと言うと約15kmも離れたところで燦々と輝いている。その大きさは直径140mで30階建てのビルほどの直径である。月は直径35センチのバスケットボールほどの大きさで35メートルほど離れている。その他の天体はずーっと彼方に浮いている。周りは真空の宇宙である。


       地球の全ての水を合わせた量が左上の水色の球である。

 直径1.2mの地球の表面はほとんど凹凸のないのっぺりした球体である。一番高いエベレスト山でも0.88mmで指で触るとヒマラヤ山脈が少し出っ張っているのが感じられる程度であろう。水の惑星と呼ばれている地球は表面の2/3は海で覆われているがそれは表面が濡れていると言う程度で、その厚さの平均は0.3mmで水の膜と言ってよいくらいである。一番深いところのマリアナ海溝でも1mm程度である。この地球上の水分を全部集めて球体にすると、直径12cmのソフトボール位の大きさで重さは1.4kgくらいにしかならない。人類が飲用として使える真水は1%しかなく14ccしかない。更に他の1%は水蒸気となって成層圏と呼ばれる地球の表面の5mmくらいのところで循環している。この5mmの厚みの大気中で水は、太陽から受ける熱により水蒸気となり表面に出て冷やされ氷粒となって雲となりその氷粒がくっついて大きくなり雨や雪となって地表に降ると言う水の循環が行われている。私たちが普段空を見上げて感じる無限の広さも1.2mの地球上ではわずか5mmの中で、干ばつも大雨も台風も竜巻も起きているのである。

地球圏と宇宙の境とされるカーマインラインは地表1cm位でそこから外は宇宙である。人類は宇宙にもいろいろな人工物を打ち上げているが、その中で最も遠く回っているのが静止衛星で3.5m離れたところで地球の自転と同じ速度で地球に対し公転している。そのために地上から見るとあたかも静止しているように見えるので通信用や気象衛星としての用途に使われている。今や普段の生活に欠かせないGPSは、それより低く2mのところを地球の自転速度の丁度倍の速度、つまり一日に2回転している。GPS衛星は数十個が等間隔で網の目のように配置された人口の星座で、地上からこの人口星座を観測することで測定者の詳細な位置を知ることができる。人間が最も地球から離れたところで生活している国際宇宙ステーションは6cmのところを1日16回まわっているが、その大きさはよほど目を凝らさなければ見えない。

 人類は直径1.2mの地球上では0.17μmの身長で、これはインフルエンザウイルスと同じくらいの大きさで、1時間に0.4mmくらいの早さで蠢いている。高速に移動する手段としての自動車は0,4μmくらい(水虫菌ほど)で1時間に6mmほど移動する。高速道路を伝わるとその倍の速さで移動できる。新幹線は40μmほど(スギ花粉ほど)で1時間に30mmは進む。地上を離れて大気圏から亜成層圏を飛ぶ航空機は7μmくらいの大きさで地表から1mm位を一時間に10cm移動する。国際宇宙ステーションは大きさは10μmで、1.2mの地球の表面を90分で一周している。

 日本で一番高い建築物はスカイツリーであるが高さが63μm(髪の毛太さほど)である。富士山は0.377mm(一万円札4枚ほど)の高さである。

 ところで地球の平均気温は15℃であるが、これは全地球の1年間の平均気温で同じ時間でも最低は-40℃の南極から最高は40℃の熱帯まで場所によりばらばらであるが、その熱源は全て太陽光であると言える。この地球の平均気温が1℃上がると言うことはこのわずか5mmの隙間で起きている気象に大きな変化を与える。人間の体温は36.5℃とされるが1℃上がるだけで通常ではいられなくなる。平均気温15℃の地球にとって1℃は人間の2℃以上に相当するだろう。具合が悪くなって当然だ。IPCC(地球温暖化に関する政府間パネル)の第五次報告書WR5によると、このまま何もしないでおくと(BAU)2050年には4℃上がると言う。国連UNEAとして2030年までの気温上昇を2.0℃に抑えることで加盟196カ国が決議をしており、目標としては1.5℃以内に抑えたいとしている。

 地球と言う惑星は、薄い水や大気の膜で覆われておりその中で水が液体→気体→個体と形を変えて循環するという大変複雑でデリケートな気候システムの中で分かっているだけで870万種と言う生命体を育んでいる。その中で、地球の環境に変化を与えているのはただの一種、人類だけである。人類が作り変えてしまった惑星「人類星(Andropoceneノーベル書科学者Paul Crutzenの造語)」と呼ぶ学者もいる。直径1.2mの地球を思い描くことで、決して地球は人類だけの為に存在するのではない事を忘れてはならないことができたなら幸いである。
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