ダンテの森    
16 Nov 2015 05:00:28 pm
731部隊の記録
「フェス・731の記憶」に参加して
ブログ管理人

 11月14日に東京都大田区民ホールアプリコで開かれた731部隊展実行委員会主催の「フェス・731の記憶」に参加して来た。私の友人(故人)の子息の奈須重雄さんはNPO法人 731部隊細菌戦資料センターの理事として長年731部隊の研究をしている。その方から久しぶりにメールでこのイベントの案内を戴き参加した。
 13:00〜夕食の為の休憩を挟んで20:20までと言う長丁場に耐えきらず、最後の演劇は見ずに失礼した。

 最初の映画「前事不忘 後事之師 〜731部隊元少年隊員(飯塚良雄さん)の証言」59分は、飯塚さんが自ら語る戦争加害者体験が生々しかった。14歳で志願して731部隊の少年隊員としてハルビンの731部隊に配属され次第に自らの人間性を失ってゆき人体実験などを手助けする自分になって行った様をカメラの前で淡々と語る。戦後21歳の飯塚さんは、遼寧省の撫順戦犯管理署に戦犯として収容され3年余り寛容的な扱いを受ける事で、逆に悩み呻吟して徐々に人間性を取り戻し自ら罪を告白する。同収容所には約三千人が戦犯として収容されたが、約七割の人が不起訴となり日本に送還されている。終戦直後の中国では貴重であったはずの白米を毎回の食事に出すなど恵まれた食事、清潔な宿舎、草花を育てたりする自由も与られ、強制的な思想教育も無い寛容に満ちた雰囲気の中で、戦争により狂わされた兵隊達の人間性を取り戻すと言うこの収容所自体が、有る意味で中国の実験施設であったのかも知れないと思った。

 次に「731部隊遺跡を世界遺産に向けて」と題する侵華日軍731部隊罪証陳列館館長の金成民教授は、本年8月にリニューワルして毎日1万人の来訪者が絶えないと言う731部隊の施設跡地の保全と最近の発掘の模様をスライドで見せ、世界遺産登録への協力を呼びかけた。ドイツ国内にはユダヤ人を収容しガス室で殺していたKZが保存され、ドイツの子どもたちが第二次大戦の歴史を学ぶ教材となっている。また、隣国ポーランドには有名なアウシュビッツには大勢のドイツからの若者が訪れているが、日本には広島・長崎のような被害者としての展示は有っても加害者としての展示は乏しく、日本の若者には日本が加害者であったと言う意識は殆ど無い。ましてや、安倍首相は今年8月の70年記念談話で「孫や子に加害者としての責任を感じさせるような事が有ってはならない」とまで言っており、70年前の戦争責任は消え去ろうとしている。731部隊は細菌の研究をしていた純然たる医学研究所で、細菌兵器の研究などしていないと言うのが日本政府の言い分であるが、実際に人体実験をしたり、細菌爆弾を作って実験までしている証拠が出て来ている。金教授達の運動が成功して世界遺産への登録が行われる事を応援したい。

 その次の「731部隊解明の地平と謎」を熱く語ったジャーナリストの近藤昭二さんの話は、敗戦が色濃くなった時に731部隊は大規模な証拠隠滅作戦を実行して全ての証拠を無きものとしたが、米軍は日本国内に保管されていた資料の多くを米国に持ち帰った。その後、これらの資料は決してソ連に渡さないと言う密約の上で、多くの731部隊の上級幹部は米軍に対し証言をし、研究成果を米国に渡すことで戦犯を免れた。その後、数十万ページの資料が米国から日本の当時の防衛庁に返還されている。近藤さんは何度も政府に開示を求めたが、はじめの内はそんな資料は無いの一点張りであったのを、米国議会図書館の公開資料の中から、日本に返還された731部隊関係の資料の送り状の控えを発見して、それを根拠に防衛省に開示請求をしたが、こんどは見つからないと言っていると言う。開示請求は今後も続けるとのことであったので、今後が楽しみだ。

 フォアイエで展示されていたパネル展示はその内容の濃さと証拠性に圧倒された。最初にHIVで有名になったミドリ十字と言う血液製剤メーカーには数多くの731部隊出身の幹部が居たことである。下級研究員や研究所の労働者は、中国で捕虜となり先に述べた飯塚さんのように遼寧省の収容所に収容されていたが、彼ら幹部は戦況が悪くなる前に日本に帰国して、米軍との闇取引で免責され堂々と社会に復帰していたのである。それどころか、上級幹部の中には731部隊の研究成果を元に戦後10年以上も経った後に博士論文を書き、それが認められて博士となっている。東大や京大の医学部長まで務めた元731部隊員までおり、多数の大学教員、国立研究所員、大企業の研究所員がいた事をパネル展示には示されていた。貴重な話と資料を見る事ができ、これらを主催された方々に感謝の言葉を贈らせていただきたい。

 ドイツは連合国によって行われたニュールンベルグ裁判とは別に、ドイツ検察が独自に戦犯を洗い出し裁判を受けさせている。つい最近も93歳になったアウシュビッツの収容所のSS隊員が、過去を隠してドイツ国内で生活していたのをドイツ検察が見つけ出し訴追して、禁固刑に処している。それに比べ、日本ではただの一人も日本の検察は戦争犯罪人の訴追は行っていない。安倍の祖父に当たる岸伸介などはA級戦犯であったが、米国と日本政府の対ソ戦略上の措置としての密約により戦犯は解除され後に日本の首相になった。安倍の大伯父に当たる佐藤栄作は造船疑獄と言われた汚職で一旦検察に訴追されたが、当時の法務大臣の指揮権発動と言うウルトラCで訴追を免れている。このように日本の高級官僚は絶対に罪には問われないと言う前例が、安倍のように憲法違反も平気で行える土壌を作っている。これは、日本人の「のど元過ぎれば熱さを忘れる」「人の噂も75日」「過去は見ずに流す」と言う悪いことは忘れると言う国民性と関係があると思う。「忘年会」のシーズンが近づいているが、今年起きたことは決して忘れない「不忘会」としてゆきたいと思う。

NPO法人 731部隊・細菌戦資料センターのURL:
http://www.anti731saikinsen.net/
カテゴリー : ブログ管理人 | Posted By : dantesforest |
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