過去の反省をせずして、新規分野に参入するなど愚の骨頂である。
ブログ管理人
原発も売れない、新幹線は中国に負ける。それではこんどは軍備でと思っていたら大間違いだ。米国、ロシア、イスラエル、ドイツなどこれまで実戦で鍛え抜かれた「血を吸った兵器」でしのぎを削る国際軍備市場に新規参入して勝ち目が有ると考える方がどうかしている。
1970年代の2度のオイルショックとニクソンショックと言う大幅な円相場の切り上げを克服する為に日本の産業は、産業構造の一大転換を図り成功した。そして、世界を魅了する数々の製品を作った。SONYのウォークマンなどは世界中のこどもたちの憧れになった。カラーTV、ビデオ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、CDなどである。しかし現今の日本産業の停滞、特に1990年以降日本の産業は世界の市場を魅了するような製品やビジネスモデルをハイブリッド車以外に提供する事ができなかった。その原因を洗い出して反省する事が先決だ。民生がだめなら軍備で、と言うのはいかにも甘すぎる。
なぜ日本の産業は良い製品を生み出せなくなったのかを考えると、原因は二つ考えられる。一つは役所の行政指導で、二つ目MBAによる企業経営で有ると思う。行政指導は経産省の企業経営への干渉である。創造力に欠けるエリート役人が机上で考えた産業政策が日本の産業をダメにしたと思う。役所の指導してきた結果が、例えば携帯電話のガラパゴス化である。役所は海外の新しい技術は、非関税障壁で国内に入れないようにして、その間に国内製品を出そうとする。日本はそこそこの規模の市場が有るので、企業は世界の荒波の中で戦う前に国内市場に特化した製品開発に走り、世界に通用しない製品を作って満足してしまう。役所が掲げる方向に向いて行われる研究開発には行政から補助金が出るので、研究者や開発者はどうしても補助金欲しさにそちらの方向に向いてしまう。これが、創造的な研究開発を阻害していると思われる。
経産省が作った外郭の巨大組織、新エネルギー・産業技術総合開発機構、通称NEDOがあるが、これこそ霞が関村の実行部隊でありとあらゆる産業分野の研究所や企業の開発部門に大学に補助金をちらつかせて、まるでがん細胞のように入り込んでいる。このNEDOこそが、日本産業の弱体化の原因であると私は思っている。NEDOから補助金を貰う為にはNEDOが推進しているものに沿った研究開発である必要がある。そしてその規模や予算額もある程度の枠が決められている。丁度じょうろで水をやるように広く薄く補助金をばらまく。研究者や開発者は、どうしても補助金の魅力には勝てず、と言うか上司も補助金が取れるものを求める為に、補助金が得やすい研究・開発テーマになってしまい独創的なものは出て来なくなる。かくして、70年代に各社から次々と出されて世界市場を魅了するような製品は出てこなくなった。
二つ目の原因は、MBA(経営学修士)による企業経営である。ハーバードビジネススクール流の経営方法は、4半期ごとの決算で株価を上げる事を命題にした株主重視の企業経営である。株価に株の総発行数を掛けた時価総額が上下することに一喜一憂する経営で、そこでは長期的な企業ビジョンは無くとにかく4半期ごとの結果重視で、長期間かけなければ結果の出ない研究開発などは重視されない企業風土ができてしまう。元GMのCEOであったボブ・ルッツ(Bob Lutz)氏が2013年に書いたCar Guys vs. Bean Counters(クルマ屋対経理マン)には、自動車会社の経営者はクルマ好きなクルマ屋(Car Guy)であるべきで、豆を一戸ずつ数える(Bean Counter)ような経理マン=経営学修士(MBA)では企業はダメになると訴えている。最近話題になっているドイツのフォルクス・ワーゲンも結局のところクルマ屋が経営をしていなかったと言うことが原因で有ったと思われる。本当のクルマ好きであれば、ごまかしソフトで検査だけは通過しようなどの考えに及ぶ訳がない。エアバッグメーカーのタカダでも同じようなことが起きていたのだろう。株価だけを追求する4半期決算をやめて、決算は1年ごと、中期計画、長期計画で持続可能性を追求している企業が評価される産業の体質に戻して行く必要がある。
本来、日本経団連などの経済団体と経済産業省は90年以降なぜ日本の産業が急速に国際競争力を失ったのかを精査し反省するところからはじめるべきところである。それを、中国・韓国との価格競争に負けた等と嘘の言い訳をして責任の所在をはっきりさせる事もせず、民生がだめなら今度は利益率の良い軍需産業だなどと言っているのは、絶対に間違っている。軍需産業市場は米国、ロシア、イスラエルなどの実戦経験豊富な兵器を作っている企業がしのぎを削る熾烈な競争が行われている市場で有る。まだ「血を吸った」ことのある兵器を作った事もない日本の産業の参入をおいそれと許すような甘い市場ではないことを知るべきである。 |