「積極的平和主義」とは全く関係ない安保法関連法案
ブログ管理人
安倍晋三首相は、憲法九条を改正するのは壁が高いと見極め、憲法に手を触れる事無く自衛隊の海外派兵を行える手っ取り早い方法として、集団的自衛権関連法11法を改正して運用できるようしようとしている。この集団的自衛権関連法はいつの間にか平和安全法案と名前が変わった。安倍首相には世耕弘成内閣官房副長官と言う人が常に背後霊のように寄り添っている。委員会や国会答弁のように事前に質問内容が分かっており、回答も官僚が用意できる場合はいないが、ニュースなどで気を付けて見ていると安倍首相が単独で言葉を発しなければならない場合には必ずいる。
この人は、コミュニケーションの専門家らしく首相のスピーチライターの一人と言われている。恐らくこの者たちが、このような言葉のすり替えを行って、安倍本人が国民を欺いていると感じる事がないようにしているのだと思う。その証拠に、安倍本人はこの法案が日本国民の為になると信じているように思える。敵を欺くにはまず味方からと言う訳で、まず安倍首相を騙すことからはじめたのであろう。その最たるものが「積極的平和主義」と言う言葉である。安倍氏本人はその意味を深く考えることなく、これは良い言葉だと思って使って居るのだろうが、「積極的平和主義」は平和学のヨハン・ガルトゥング博士が提唱した言葉で、平和学において、単に戦争のない状態が平和と考える「消極的平和」に対して、貧困・抑圧・差別などの構造的暴力がない状態を平和と考えるものが「積極的平和」(原語ではPositive Peace)と定義されているものである。
安倍首相が考えているような、国益を守る為に世界でも有数の強大な軍事力となってしまった自衛隊を地球の裏側まで送っての為に軍事力を行使することを指す言葉では無い。そもそも安倍首相が2013年9月25日に、アメリカのシンクタンク、ハドソン研究所で行ったスピーチで使った英語はProactive Contributor to Peaceであり、これは訳すと「率先して平和に貢献する存在」となるが、Proactiveは軍事用語では「先制攻撃」であり、英語がネイティブの人が聞くと紛争解決の為に先制攻撃で貢献するイメージが強い。それを「積極的平和」と訳して首相本人と日本国民を騙しているとしか思えない。
本物の「積極的平和」を提唱するヨハン・ガルトゥング博士は1983年に「矛盾克服の限界」[“On the possible decline and fall of Japan. The limits of transcendence of contradictions, in East Asia”1983]と言う論文のなかで、日本の没落を予測している。そこでのポイントは、日本は賢明にも矛盾を乗り越えようとするものの、そのことがいっそう多くの矛盾を生み出すことになるというものだった。すなわち、日本と世界の多くの国々との間に亀裂が生じ、同時に日本国内の矛盾も顕在化すると予測している。日本が米国との二国間関係を重視するあまり、東アジアの国々を敵に回すことになると今日の状況をみごとに言い当てている。
また2013年に行った講演では、日本のタカ派――何人かは安倍政権のもとにいる――にとっては、現在の危機は彼ら自身の国の「正常化」のまたとない機会である。すなわち、彼らは、日本から戦争権を奪い去った憲法第9条を破棄し、1910-1931-1945の日本の蛮行を認めることによる南北朝鮮および中国との和解を洗い流そうとするであろう。過去の蛮行を認めることとは正反対の方向で、彼らは日本の若者に自身の国に誇りを抱かせようとするであろうと、述べ今日の安倍政権が行っていることを予測していた。ここでガルトゥング博士がタカ派と呼んでいるのは、例の日本会議のことであろう。
安倍政権が95日間の会期延長を行ったのは、衆議院可決後例え参議院で可決されなくても60日後には衆議院に自動的にもどされ衆議院で再可決すれば成立する60日ルールで何としても今国会で成立させようとしているためである。しかし、流れは変わりつつある。憲法学者が安保関連法を違憲であるとしたことをきっかけに、「安保関連法案に反対する学者の会」が8000人以上の学者の署名を集め、「安保関連法案に反対する千人委員会」が165万人の署名をあつめている。また、国会周辺では連日デモや集会が行われているし、全国でもデモが行われている。安倍政権の支持率は下がり続けており、新聞の世論調査の結果も産経新聞を除いては過半数が反対としている。国民世論の盛り上がりで何としても廃案にしなければならない。 |