ドイツのエネルギー転換は種々の問題を乗り越えて着々と進んでいる。
ブログ管理人
エネルギー関係のシンポジウムや学会に出て良く聞くことに、ドイツはFITを導入した事で消費者負担が増えて消費者が音を上げており、企業は国外に脱出をしているとか、ドイツは原発をやめても電力が足りなくなれば隣のフランスから買えば良い、ドイツのエネルギー転換は国民の不評が大きくいずれ行き詰るなどのネガティブなコメントである。
ドイツのエネルギーヴェンデは、地球環境負荷の低減がその目的でありこれは国民の総意と言って良く、ドイツでは1998年から電力は自由化されており消費者は価格だけでは無く、化石燃料からの電力か再生可能エネルギーからの電力かも選べる。現在の所は当然グリーン電力の方が高いが、その方が環境に良いと言う理由で多くの国民がグリーン電力を買っている。国民は、もちろん電力料金が高いと言って嘆いてはいるが、それでも自分の子孫に環境を残す為に必要と割り切っている。また、電力価格を理由にドイツを脱出した企業は、実際には無い。
この図は、日本のエネルギー庁の資料からとったもので、欧州の代表的な国の電力の貿易収支を表したものである。風力や太陽光は確かにいつも一定に発電するものではない。しかし、その設置場所をできるだけ分散させる事で、天候の変化の発生する時間が異なる為に、うまく計画して電力のやりとりをすることで、平均化できる。火力発電所は細かく出力制御が短時間に可能であるので、調整用の電力源として有効に機能する。また、風力発電も北海のファームで無風でもスペインでは風が有ると言うように、欧州全土が同じ天気や風力でとなることは無いので、天気予報を元に電力の供給計画を立てることで対応している。日本のマスコミが好んで言う、ドイツはフランスの原発から電力を買ってしのいでいると言うのは根も葉もない嘘で、ドイツとフランス間の電力貿易収支はドイツの輸入2.7GWに対し輸出は3.2GWでドイツの輸出超過(2010年)で、フランスはドイツの電力で寒い冬を乗り切っている、と言うのが事実である。
現在は天気予報の精度が上がり、かなりの確度でどの太陽光発電所や風力発電所が何時にはどの位の発電量を出すかの予想ができる。それによって電力市場では電力価格が決まる。この情報を使ったデマンド・サイド・マネジメントと言う電力会社との契約方法で利益を上げる企業もある。ドイツの平炉メーカーは、電力が不足する事が予想される時には操業を中止する事で、電力会社からプレミアムを受け取り、電力が安い時にのみ操業する事で、製品原価を抑えることができ価格競争力が増え増益もできている。
ドイツのエネルギー政策がいずれ行き詰る、と言う予想も当たらない。日本の経産省とエネ庁は、日本のエネルギー消費は2030年には2013年とほぼ同じであると予測し、その中で石炭火力と原発を「ベースロード電源」と名付けて0%と予測しており、その内原発は22〜24%なるとしているが、2030年にほぼ311直前のレベルの原発を動かそうとすると、かなりの数の原発を建て替えあるいは新設する必要がある。原発による発電原価は日本では、今でも一番安価であるとされておりkWあたり8円台としているが、ドイツの試算では環境保全コストが高い為に、原発は最も高いと言う結論がでている。
新規発電施設での1kWhあたりのコストは、発電原価に外部費用や過去の補助金額を計上すると、陸上風力が5.7〜8.7ユーロセント（約7.3〜11.0円）、太陽光が10.4〜17.1ユーロセント（約13.2?21.8円）、水力が4.7〜19.3ユーロセント（約6.0〜24.6円）、天然ガスが10.6〜12.9ユーロセント（約13.5〜16.4円）、石炭火力が12.6〜16.7ユーロセント（約16.0〜21.2円）、原子力が18.5〜49.8ユーロセント（約23.5〜63.4円）となるという。石炭火力や原子力は、CO2排出による環境への悪影響や放射性廃棄物のリスク等、社会に与える負担を考慮した場合、自然エネルギーと比較して割高な電力源であるとドイツでは考えられている。
参考文献：FOS (Forum Okologisch-Soziale Marktwirtschaft) 2015.01: ?Was Strom wirklich kostet“
http://www.foes.de/pdf/2015-01-Was-Strom-wirklich-kostet-kurz.pdf |
ドイツのエネルギー転換
