原発大国と思われているフランスは着々と脱原発の準備を進めている。
ブログ管理人
今年の暮れに開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)と京都議定書第11回締約国会合(CMP11)は、本年11月30日からフランスの首都パリで開かれる事になっているが、これはフランス政府が自ら開催国の名乗りを上げたもので、フランス政府はこれを機にEU内では少し環境政策面で後れを取っているイメージを一気に転換したいとの意気込みを感じる。
COP21と京都議定書締約国会合(CMP11)が同時に開催されるので、このイベントに日本にも中心的役割をと期待している当のフランスに比べ、日本の反応は甚だ鈍い。日本は2009年に国連総会で鳩山首相が2020年までにCO2排出量25%の削減を発表して万雷の拍手を浴びたが、2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故の為に原発の運転をすべて停止した為に棚上げとなり、それから4年が経っても日本政府が新たな目標の設定を一向にしないことから、本年3月31日までに全ての国が、2030年までの地球温暖化ガス排出削減目標を発表することになった。
これまで、渋っていた米国は2005年を基準にして2025年に26〜28%の削減目標を出した。ロシアはEUに歩調を合わせて1990年を基準に2030年に25〜30%の削減目標を出した。しかし日本政府は3月31日になっても目標値の発表はせず、4月になって安倍首相は、2013年度基準で2030年に26%と発表したが、2013年は過去最高の排出量を出した年でありそれを基準にするところが後ろ向きである。この目標をEU等が基準にしており、以前は日本も基準にしていた1990年にすると、2030年にはわずか3.8%の削減となり殆ど世界に貢献する気はない。EU各国はパリサミットに向けて更に目標値を上乗せし、2050年までに60%削減をと調整中である。
よく日本ではフランスには原発があるのでエネルギー問題が少ないなどと言う声を聞く。確かにフランスは1950年代に早々と原発を中心に据えたエネルギー政策を立て現在は、75%が原発からの電力となっている。しかし、2012年にオルランド政権は2025年に原発の割合を50%に削減する事を決定している。そして、2012年11月〜2013年7月まで全国で討論会を開催しエネルギー政策を国民レベルで議論している。その結果、省エネにより2050年には2012年基準で50%の電力消費量にすること、2030年までに再生可能エネルギー比率を40%にするとし、2025年に原発比率を50%としてその後も漸減するということになった。総エネルギー量が現在の50%になった上での原発比率50%と言うことで現在の25%にまで原発の発電量は減る。これらは今年度中に国会で決議される。
フランスが本気で地球温暖化対策に取り組んでいるのを裏付けるように、ニュースが矢継ぎ早に入ってきているので簡単に紹介して置く。
■5月23日 仏大手保険アクサが保有資産から石炭火力向け投融資をすべて排除するとのことで、その金額は5億�吠�である。国際的金融機関では、第一号の宣言となる。CO2を最も排出する石炭火力には持続可能性が無いとの判断と思われる。日本では現在全国で47基の石炭火力発電所建設計画が進められている。
■5月23日 フランスは上場企業に気候変動リスク開示を義務化した。エネルギー転換法改正案が国民議会（下院）で可決された。金融機関にはストレステストが義務付けられる。同案は、上場企業に、気候変動で生じる金融リスクや、気候変動が自社の製品・サービスに及ぼす影響の重さ等の情報開示を義務付ける内容になっている。
■5月22日 フランス議会は21日、大手スーパーマーケットに対し売れ残った食品の廃棄処分を事実上禁止する法案を全会一致で可決した。一法案をめぐって仏議会が一致団結することは大変にまれなことである。
?この新法の下では、大手スーパーは食品廃棄防止対策を義務付けられ、売れ残った食品のうちまだ食べられるものについては慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や農業用の堆肥に転用しなければならない。また、大規模スーパーは全店が食品寄付を行っている慈善団体と契約を結ばなければならない。一方、慈善団体側に必ずスーパーから出される食品を受け取らなければならない義務は無い。
フランス人1人当たりの1年間の食品廃棄量は20〜30キロで、そのコストは最大で年額200億ユーロ（2兆7000億円）にも上る。仏政府は2025年までに食品廃棄量の半減を目指している。
日本では一人当たり年間140キロが廃棄され11兆円にあたり、その処分に2兆円が使われている。世界一の食糧無駄捨て国であると農水省もみとめているが、GDPの低下を恐れるあまり法律で規制しょうとする気配は無い。
持続可能な社会へと一歩一歩着実に進めている国際社会の中にあって、ひとり日本はアベノミクスと標榜する旧来型の成長経済神話をひたすら信じて歩みを進め、経済のガラパゴスになろうとしている。 |
フランス政府の本気度
