あとどれくらい海洋は地球の過剰気温を吸収し続けることができるか？
エール大、Environment360 2015/03/30
温室効果ガスの増加が地球の大気温度を引き上げていない主な理由は海洋が熱を吸収している事に有る。しかし、最新の研究結果によると海洋の吸収力は弱まりつつある。シェリル・カッツ(Cheryl Katz)
何十年にもわたって海洋は温室効果ガスの効果によって熱せられた大気の熱エネルギーの90%以上を吸収し続けてきた。海洋はこの余剰熱を海中深く取り込むことで、人類が過剰に放出したCO2の影響を緩和させてきた。
しかしこの大気中の余剰熱は、波の下に負荷をかけることになっている。最近の研究結果は、これまで科学者が考えていたよりもはやい速度で海洋が熱せられていることがわかってきた。それによると、海洋はこれまで貯めてきた熱を数年の内に大気に放出しはじめ大気の温度を上昇させると考えられている。
1990年よりこのかた、海洋は表面積1�屬△燭�0.5Wの熱の放射を受けており、これは2 x 1023ジュールと言う広島型原爆の5倍のエネルギーが毎秒降り注いでることになる。広大な面積と巨大な容量で熱を吸収し、特に深海の部分でその効果が大きい。
過去数十年間の温室効果ガスの排出量から予想された地球表面温度が、予想をはるかに下回っていたのはこれが原因であると、国立環境研究センターの科学者ケビン・トレンバース(Kevin Trenberth)氏は語る。ハイエタス（裂け目）現象として科学者は説明に追われた。しかし最近の研究はこのハイエタスとして論じられていた現象の背後には、一時的な自然の営みであることがはっきりし、自然は次の段階に移ろうとしていることも解ってきた。
例えば太平洋の貿易風は太平洋十年規則振動と呼ばれる20〜30年サイクルで大気の熱を西太平洋に向かってポンプしているが、その過去20年間に異常なほど強くなってきている。現在は負位相あるいは冷却サイクルと呼ばれている。しかしこれが十年程で正位相に変わると貯められた熱が逆に大気に放出される。
オーストラリア、ニューサウスウエールズ大学のマシュー・イングランド(Matthew England)教授は「それが既にはじまっていると思える兆候が有る」と述べる。深海が有る部分ほど蓄えた熱量は大きく、将来それが放出する熱量も巨大なものとなり大気温度を急速に上げる事が考えられる。＜以下略＞
原文(英文)URL: http://e360.yale.edu/feature/how_long_can_oceans_continue_to_absorb_earths_excess_heat/2860/ |
海洋が吸収していた熱
