ソニーがソニーのアイデンティティーとも言えるAV部門を切り離した。
ブログ管理人
我々団塊の世代が少年であったころ、ソニーは少年たちにとって夢のような商品を世に送り出していた、考えるだけでわくわくするような会社であった。近所の商店街の電気屋さんで、二つのリールが回るテープレコーダーにはSONYとローマ字が金色に光っていた。夢の製品の第一号はトランジスタラジオである。ブログ管理人は、自分で組み立てた鉱石ラジオを長いアンテナに繋いで夜な夜なイヤホンでヒットパレードを聞いていたが、近所の大人がソニーのトランジスタラジオで、スピーカーからアンテナもなしで野球中継を聞いているのを見て驚いたものであった。
その後もソニーは、ウオークマンと言う革命的な製品を発明した。カセットテープを聞くプレーヤーである。この製品は、数多くの新開発のテクノロジーが詰め込まれていた、それはアンチローリング・メカニズムと言う揺れても回転が変わらないテープ送りメカであり、高性能のヘッドフォンであり、高導電性の為に純度の高い銅を使ったヘッドフォンケーブルであり、狭いパッケージに収納する為のフレキシブルなプリント基板など、それは持ち運びながらカセットテープを再生する為の装置をシステマティックに開発した製品であった。この「ソニーウオークマン」は短期間に世界市場を席巻しSONYのブランドを定着させた。
次にソニーが世に出したのはCD、コンパクトディスクである。これは、ソニーが世界標準を作った。それまで音を機械振動に変えてビニール盤に刻みこんでいたものを、音を一旦ディジタル信号に置き換えて、プラスチック盤に穴の有無連続で記録し、その穴の有無をレーザー光で読み取り音に復原すると言うディジタルシステムである。このシステムで一番の問題は、プラスチックの穴の有無の連続を読み込むレーザー読み取りの段階で必ず起きる誤読である。アナログレコードでは、傷は「プチッ」と言ういわゆるスクラッチ音として出るだけであるが、ディジタル情報は1ビット欠けると全く異なったものとなり、音を再現できなくなる。その為にディジタル・レコーディングには多少のビットが欠けても、元の情報が再現できるような符号化/復号化の技術が必要となる。これは、高度な数学を使った暗号技術でこれをソニーの土井利忠博士が発明したのである。CDが音楽界にもたらしたものは計り知りえない。ちなみに土井博士はその後、ワークステーションや犬型ロボット「アイボ」も作りだした。
話変わって、最近日本で売れている電気製品と言うと、掃除ロボット、トルネード型掃除機、超小型ハイレゾビデオカメラ、ノンフライ型調理器、カセット式コーヒーメーカー、フロントローダー型洗濯機などであるが、どれも海外で開発されたものである。残念ながら日本で開発されたものは、これらには含まれていない。以前ならば日本勢が世界市場を席巻していたはずである、スマホや携帯、タブレット端末、PCも世界では忘れ去られた格好である。液晶TVにいたっては、全ての日本メーカーは既に撤退してしまった。
そう、日本のメーカーはモノづくりをやめてしまったのである。東証一部に上場している企業にとっては、モノづくりよりも株価の動向の方が重要となってしまった。昨日、ソニーがAV部門を切り離すと発表するとソニーの株は更に上がった。市場経済では企業の価値は、その企業が良い製品を出しているかどうかではなく「時価総額」で決まる。時価総額=株価×総発行株数であるので、株価さえ上がれば、それで良いのである。4半期(3ヵ月)決算で問われる企業の経営陣にとっては、長期間にわたり費用のかかる新製品開発より、すぐに結果の出る企業買収や、資産の運用の方が重要となっており、ソニーを含め殆どの日本の企業で実際の経営権を握るのは、MBA(経営管理修士)などを持った経理畑出身者がほとんどで、昔のようにモノづくりが好きな技術者ではない。
アメリカやドイツでは、これまで中国など海外に出していた製造を国内に戻し、より消費者のニーズを細かく反映した製品を国内で生産することで付加価値を付けた製品を売り出す事で、国内生産のメリットを出そうとする動きが始まっている。
安倍政権が日銀を指導してジャブジャブ紙幣を発行し、長期金利を下げて円安誘導しても日本製品が一向に売れないのは、売れるものが無いからであることを知るべきである。もし、安倍政権が原発や軍備なら売れると思っているのであれば、死の商人になる事を日本国民が望んでいるのかどうかを確かめてからにするべきである。 |