エネルギー白書から読めるのは原発維持への固い決意だけ
ブログ管理人
経産省と資源エネルギー庁が2030年のエネルギー需給見通しを発表している。2013年度のエネルギー需給実績は2010年との比較で、電力が-7.7%、石油が-5.4%と大きく減少し、都市ガスが-1.2%、石炭が-1.0%と減少しエネルギー全体で5%減少している。
日本全体のエネルギー消費は資源エネルギー庁の2014年11月発表の速報を見ると1990年に13,889(単位はPJ)であったものが、2002年に16,006とピークを迎えその後景気の後退に伴って2009年まで順調に減少し、2010年に一度上がったもののその後も減少し続けて2013年には14,227になっている。全くエネルギー政策に手を加える事無く自然に任せるだけでも、生産活動の低下はエネルギー消費を減らしていることが分かる。興味深いのは、欧州では30%になろうとしている再生可能エネルギーが、日本では0.3%で張り付いていることである。政策的に再生可能エネルギーの増加に制限が掛けられているとしか思えず、これが自由経済の国かと目を疑ってしまう。
経産省が発表した2030年へ向けてのエネルギー見通しと言う資料が有る。これには、世界のエネルギー動向のみが書かれておりその力点は、人口増加は続き2030年には世界人口は80億人となること、東アジアでの発展が著しくエネルギー源としての原子力発電所の設置に力点が置かれている。これは、日本の原子力発電所を東アジア諸国に売りたいと言うモチベーションが感じられる。その為には国内の原発を再稼働させる事が、経産省の狙いである。
経産省のエネルギー見通しURL:http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g41004b02j.pdf
次に資源エネルギー庁の出しているエネルギー白書から、国内の見通し(2030年のエネルギー需給展望)を読んだ。
最初に人口減少について述べ2006年の127百万に対し、2030年には117百万と約8%の人口減となり、高齢化率は2000年の17%から2030年には30%になると予測している。つまり、生産人口は単純計算でも8+13=21%ポイント少なくなる。その分経済活動は低下すると考えられる。
しかしエネルギー消費量は2000年の原油換算の一次エネルギー量で413(百万キロリットル、単位以下同じ)であるのが、省エネが最も進んだと予測するケースで377としこれは30年間で8.7%の削減にしかならない。その上、そんなに省エネは進まないと予測したレファレンスケースと言う予測値が作られそれは2030年で425と2000年に比べ3%増加している。人口が1割減り、生産人口が3割減っても日本はエネルギー消費は増え続けるとの予測を資源エネルギー庁は立てている。
電力エネルギーの推移になると、2030年には原子力の割合が38%と最大となり、再生可能エネルギーなどは2000年と変わらない1%のままで、政府・資源エネルギー庁は再生可能エネルギーを、絶対に日本には根付かせてはならないとの鬼気迫るまでの決意が感じられる。欧州では30%になろうとしている再生可能エネルギーは、日本では2000年以降0.3%から変化していないし、2030年の予測でも1%でしかない。本文の中で「再生可能エネルギーは10%になる可能性がある」と記述されているが、グラフには反映されておらず政府は固い決意で再生可能エネルギーがはびこらないような政策を取る用意があるのだと見て取れる。ここにも電力業界と政界と官庁の強い結託が表れている。
資源エネルギー庁:エネルギー白書(2014年11月)
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2005html/1-1-1.html
当ブログでは口が酸っぱくなるほど書いているが、日本には余りにも電力を無駄に使うものが多すぎる。世界には無いが日本には600万台も有る野立の飲料水の自動販売機は、原発2基分の電力を消費している。便座ヒーターは1億台でやはり原発1.5基分を消費している。欧州では全館暖房の為にトイレが寒いと言うことはないので、便座ヒーターは無い。日本の道路照明が多い事は、宇宙ステーションから見た夜景を欧州と比べると分かる。
省エネと言っても、何も暖房を止めて家の中で厚着をして我慢しろと言うのではない。日本の家屋に二重サッシなどで断熱性能を上げて、熱交換式の換気扇を使って強制換気するように改築するだけで、暖冷房の為のエネルギー消費は即座に60〜80%カットでき、その上全館暖冷房となり、便座ヒーターも必要なくなる。建築物は全エネルギーの40%を消費しているので、これを日本中に普及させることで、24〜32%のエネルギー消費を削減でき、原発の再稼働はおろか原油の輸入量も大幅に下げる事ができる。但し、電力会社は規模の大幅縮小を余儀なくされることになる。世界的に見て電力は小規模な分散型の供給システムか、自給型に推移して行き巨大な電力会社は消えゆく運命に有る。日本の電力会社だけが例外となる事はないだろう。 |