再生可能エネルギー(太陽光パネル)よりも低エネルギー化改築を
ブログ管理人
ある地方銀行がその支店に太陽光パネルを設置して自社で使用する電力を自給し、電力会社から購入する電力を少なくすることで地球温暖化ガスの排出量を削減して環境悪化の緩和に貢献するとしている。
同じ事業費を掛けて、支店の建物を外断熱と断熱窓枠と多層ガラス窓にして断熱構造にして、熱交換器を使った強制換気にすれば冷暖房に使用する電力量が最低でも70%は削減される。これを低エネルギー化改築と言い、欧州における今後の建築ビジネスの主流になるものと言われている。太陽光パネルの設置による発電と低エネルギー化改築による省エネの費用対効果を比較した資料は無い為に、ブログ管理人の今後の調査課題となるものであるが、これまでの知見から言って低エネルギー化改築の方が効果は相当大きいものと思われる。
太陽光パネルの方は、消費する電力を低減することはせずに新たに太陽電池から得られる太陽エネルギーからの電力を、これまで電力会社が化石燃料を燃やして発電していた電力に代えて使う。つまりエネルギーの消費量は減らさない。
一方、低エネルギー化改築は消費電力そのものを減らすものである。今、冷暖房エネルギー削減の対策を行うことを述べたが、省エネできるものはこの他照明、給湯、その他の電気製品が有りこれらを順次進める事で、欧州の国々が2020年には新築建築基準に導入しようとしているエネルギーゼロ建築に近付いてくる。ドイツの低エネルギー建築基準であるパッシブハウスでは一般的に言って従来建築の1/10のエネルギー消費となる。
日本は今「経済成長をもう一度」と政府先頭にやっきとなっている。どういうわけか知らぬが経済成長と省エネは、どうも折り合いが悪いようで経済成長と省エネの同時進行はできないと考えている人が多く、太陽光パネルを新たに増設してエネルギー源を増やすと言うのは、経済的にプラスに見えるため受け入れられやすいらしい。そして低エネルギー改築の方は、ビルの断熱効果が大きくなりこれまで4台有ったエアコンを1台に減らすことは経済の「マイナス」に見えてしまうようである。
現代の世の中では、増大するのは良い事で、縮小するのはどうも悪い事らしい。1970年代に「大きい事は良い事だ」と歌うコマーシャルが流行った時代に何としても戻りたいと思っているのが、安倍政権であり、時代を戻すために一生懸命努力をしている。「ジャパン・イズ・バック」と言う第二次安倍政権発足時に国際社会に向けて出したアピールは、日本経済を1970年代の勢いに戻すと言うことで経済成長一辺倒である。しかし、先進諸国では徐々にではあるが、経済成長一辺倒から脱皮しようとする兆しが見えてきている。
欧州では、不動産には賃貸、販売に関わらず必ずその不動産がどれだけのエネルギー消費をするのかを、公的機関が証明した「エネルギーパス」が必要である。これなしには取引はできない。これを見れば契約しようとしている建物や部屋が、どの位のエネルギー効率であるのかが一目で分かる。年間の電気代、ガス代、水道代も分かる。これは「マイナス」に見えるものを「プラス」に置き換える仕掛けと言えるかも知れない。日本では、このエネルギーパスを普及させようとする民間団体である一般社団法人日本エネルギーパス協会が頑張っている。
日本エネルギーパス協会のURL: http://www.energy-pass.jp/
当ブログでは何度か書いたが、コマツの新粟津工場が昨年5月に完成したが同工場は徹底した省エネ設計を行った為に、従来の工場の1/10のエネルギーしか消費しない。全国の会社はこの工場に習うべきである。
建築物(建築物とは住宅、集合住宅、オフィスビル、工場、店舗、公共建築など全ての建築物を含む)が消費するエネルギーは日本の全エネルギーの40%である。これをすべて低エネルギー化する事で1/10のエネルギー消費量を達成する事ができれば、それだけで日本のエネルギー消費は36%少なくなる。311前の原発が54基全て稼働していた時の原発が受け持っていた割合は25%であるので、建築物の低エネルギー化を達成するだけで、原発を全て直ちに廃炉にしても、CO2は10%削減ができる。実は、これこそ日本の電力業界が最も恐れる事態なのである。世界でトップレベルの電力料金と地域割独占体制で暴利を貪ることを欲しいままにしてきた彼らにとっての理想のシステムの崩壊を意味するからである。 |