駅員や運転手が対応する日本と乗客が相互に助け合う欧州。
ブログ管理人
ぼくは都心に出るのには東急田園都市線を使っている。最近この電車に乗って気になるのは、電車が駅に到着すると駅の構内放送で「お客様のご案内があります」とあり、それを確認する車掌の「お客様ご案内確認しました」と言う車内放送が有り、しばらくすると駅員が「お客様のご案内が終了しました」それに答えて車掌が「お客様のご案内終了を確認しました」となって発車のアナウンスになる。
もうお気づきと思うが、これは車椅子利用者を乗せるために駅員がその都度プラットフォームと車両の間に渡す金属板をセットしたり、畳んだりしているのを車掌と連絡を取り合っているやり取りである。これが最近だんだんと多くなってきたように思うのは気のせいだろうか。都内の駅はバリアフリーが進みエレベータが完備した。その為車椅子利用者は、電車を利用しやすくなったと言う事だろう。それはもちろんとても歓迎すべき事である。しかし、電車に車椅子利用者の乗降が有る都度駅員が渡し板を持ってセットするのでは、今後車椅子利用者が増大する高齢化社会に有っては対応が難しくなるのではないだろうか。
バスの車椅子での利用はもっと大変で、まずノンステップバスである事が前提となり、車椅子利用者は運転手にそれを告げ一般客の乗降が終わった後に、運転手が降りてきて、乗降口のスロープを引き出して車椅子の乗車を手伝い、車椅子を所定の場所に固定したのち運転手は運転席に戻って発車する。降車時にはこの反対が行われる。これも、今後どんどん車椅子利用者が増えてきたら運転手の負担が大きくなりサービスにも限度が有ろうと言う議論が起こることになるだろう。
バリアフリーの進んだ欧州では車椅子での公共交通機関の利用はごく当たり前のことである。しかし、その対応は全く日本とは異なる。バスでも電車でも車いすの人が来ると乗客が進んで2〜3人降りてきて、よいしょと持ち上げて乗せる。たいていは、屈強な男性である。降りる時も同じである。これがごく普通の事として行われている。車いす用のスロープや渡し板など全くない。特に、長距離列車の乗降口は狭く段差も大きいので大変であるが、何人かが集まって来てあっという間に片づけてしまう。日本では、車椅子の乗客のお世話を駅員やバスの運転手がやるのを他の乗客はただ見ているだけであるが、乗客同士が相互に助け合う事が当たり前になっている社会をバリアフリー社会と呼ぶのでは無いだろうか。
車椅子利用者も公共交通機関を使う場合には、重量の重い電動車椅子には乗らずに軽量な車椅子を使っているようで、援助してもらう側のエチケットも心得ているようである。
若いころにドイツの市電に乗っていて、うとうととしてしまい自分の前に老婦人が立っている事に気がつかなかった。その老婦人にステッキで靴をつつかれて「お立ちなさい」と言われて飛び上がったことを思い出す。欧州では老人に席を譲るのは当たり前の事で、ドイツの車両では日本のようにプライオリティーシートの指定など無く、どこでも老人や障害のある人が優先である。日本では、プライオリティーシートに若い人が座って老人が来ても知らんぷりと言う場面に良く出会うが、老人が「お立ちなさい」と言うのも聞いたことが無い。
将来は、介護用のロボットなどが発達して問題は解決するのかも知れないが、援助を必要としている人が目の前に居れば、それを助けるのが当たり前と言う社会の方が心地よいのではないだろうか。企業やシステムに解決策を求めるのと、社会として相互扶助の考え方を中心とするのか、どちらの社会がより持続可能性があるのか考えて見たい。 |