国際環境NGOが世界の温暖化対策順位を発、日本は最低ランク。
GermanWatch 2014-12-9発表
ドイツの環境NGOであるジャーマン・ウォッチ(GermanWatch)とクライメート・アクション・ネットワーク(CAN)は、温室効果ガスの排出量の多い世界58カ国を対象とした温暖化対策実績ランキング(Climate Change Performance Index)を公表している。たいりょう排出国の米国と中国が順位を上げ、日本は58ヶ国中53位で昨年より一位下がった。この報告書(英文)は、次のURLからダウンロードできる。
http://germanwatch.org/en/download/10407.pdf
この調査は今回が10回目で、温室効果ガスの排出状況、削減状況、再生可能エネルギーの導入状況、省エネ等のエネルギー効率化、温暖化対策促進の政策の動向の5つについて、点数付けをし、Very Good からVery poorまで5段階評価を行ったもの。
もっとも対策が進んでいる国として評価されたのは、デンマーク(スコア77.76)であったが、まだまだ努力の余地ありとの判断で1〜3位は該当なしとされ、トップの同国は4位で最上位である。以下、5位スウェーデン(71.4)、6位英国(70.79)、7位ポルトガル(67.26)、8位キプロス(66.99)、9位モロッコ(65.73)、10位アイルランド(65.15)と続いた。
日本は53番目(45.07)で、昨年のランキング52位(47.21)から1位下がった。世界のCO2 二大排出国であり昨年と変わらなかった米国44位(52.33)と、1位上がった中国45位(51.77)は共に”Poor”にランクされている。それよりも悪いVery Poorの最低ランクグループは47位から61位までの15ヶ国で、その順位は、47位タイ(50.61)、48位アルゼンチン(49.61)、49位ブラジル(48.51)、50位シンガポール(47.27)、51位トルコ(46.95)、52位マレーシア(46.84)、53位日本(45.07)、54位台湾(45.03)、55位韓国(44.15)、56位ロシア(43.39)、57位イラン(40.99)、58位カナダ(38.81)、59位カザフスタン(37.72)、60位オーストラリア(35.57)、61位サウジアラビア(24.19)であった。
日本は2009年の国連総会で、鳩山首相が2020年の排出を90年比20%減にするという欧州並みの目標を掲げ国際社会から大喝采を浴び、2010年のランキングでは前年の43位から38位に上がっていた。しかしその後、東京電力福島原発事故によって原発依存のエネルギー政策が崩壊、2012年43位、13年47位、14年50位と低下を続けている。
安倍政権と産業界はマスコミを通じてCO2排出量に対する国際世論の高まりをてこに原発再稼働を進めようとしているが、実際には火力発電の発電量は、国内産業の低迷の為にさほど増えていない。今後は、生産人口の減少に伴い国内産業の生産量もGDPも下がると予想される為にエネルギー需要の更なる減少が予想される為に、原発再稼働の必要性は全くない。建築物の低エネルギー化などの本格的な省エネ政策を講じることで、全原発の廃炉のみならず、多くの旧式火力発電所の廃炉も可能となる。全国の電力会社はその規模を大幅に縮小することとなり、送電線にも余裕が生まれ再生可能エネルギーの接続拒否問題なども解消する。
今回の調査結果で上位にランクインしている国々では、エネルギー需要と経済成長のデカップリング(切り離し)に成功している。日本は1970年台のオイルショックの際に、エネルギーからのデカップリングに大成功を収めて世界から環境先進国と認められた上に、重厚長大から軽薄短小への産業構造の変換を成し遂げ一躍世界の経済大国となった。その後バブル崩壊後の空白の20年間を経て、そのころの日本の見る影は無くなってしまった。同報告書ではそれを気遣ってか、最悪のランクに甘んじる日本に対するコメントも無いことが却って気になる。国際世論は余りにも重病を患った日本に対し、気の毒で声も掛けられないと言う状態なのだろう。 |