日本は2013年度に過去最大の温室効果ガスを排出
ブログ管理人
去る12月5日環境省は2013年度の温室効果ガス排出量速報値を発表した。それを受けてマスコミ各社は一斉に、2013年度の温室効果ガスの排出量が1990年、2005年、前年に比べていずれも大きく増加したとし、その原因は原発が稼働していないためであり、日本は苦境に立たされているとしている。これを読んだ読者の多くは、やはり原発の再稼働しかないとの思いを持ったことであろう。まず、環境省の発表を注意深く見ることにしたい。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=25510&hou_id=19016
●2013 年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、13 億 9,500 万トン(二酸化炭素(CO2)換算)。
●前年度の総排出量(13 億 7,300 万トン)と比べて、1.6%(2,200 万トン)の増加。
●2005 年度の総排出量(13 億 7,700 万トン)と比べて、1.3%(1,800 万トン)の増加。
●1990 年度の総排出量(12 億 6,100 万トン)と比べて、10.6%(1 億 3,400万トン)の増加。
1990年度は京都議定書で基準としている年度、2005年度は、安倍第二次政権が2020年における地球温暖化ガス排出削減目標−3.8%の基準としている年度である。2009年の国連総会で鳩山首相は1990年を基準にして2020年には−25%を達成すると演説して、世界から大喝采を受けたが、第二次安倍政権がこの国際約束を反故とし、新たな目標として出したものである。
原発が担っていた約20%が火力発電所に代わった事をマスコミは理由としているが、実際に発電所などのエネルギー転換部門では、前年度に比べ20万トン(0.2%)の増加のみである。 国民や産業の省エネと、生産の低迷の為に電力の消費は殆ど増えていないのが原因と考えられる。電事連をはじめとする産業界は、ベース電源(この言葉も彼らの造語であるが)である原発が動かなければ産業の新興は無いとしているが、これだけの円安になっても車以外に外国に売れるものが無い日本の産業の現状ではこれ以上電力需要が増えるとも考えられない。長期的には生産人口の減少の為に、生産(GDP)は下がる一方であるので、その面からも電力需要の伸びは考えられない。だから今後も原発分の20%が増加する様子は無く、直ちに原発を再稼働する理由はどこにもない。マスコミの誘導に惑わされて、やはり原発は必要かなどと思うのは間違いである。
増加分2200万トンの内最も多いのは産業部門(鉄鋼、化学等)であり1240万トンの増加である。公共工事の増加に伴い鉄鋼とセメントの増産によるものである。セメントは1トンのセメントを生産する時に石灰岩を焼結させる工程で同量のCO2が大気中に放出される。また、代替フロンであるHFCs(ハイドロフルオロカーボン類)が300万トン増えている。これは、冷暖房用の冷媒熱媒として使われている代替フロンと呼ばれるもので、昔のフロンはオゾン層破壊を擦る為に使用が禁止された為に開発された物質であるが、この物質の温室効果はCO2の3200倍(IPCC4次報告)として計算されている。
このHFCsは使用後は100%の回収が義務付けられているが、実際に回収されているのは30%ほどであり、その他は大気中に放出されて222年間滞留する悪質の地球温暖化物質である。これは、冷蔵庫やクーラー、自動車用クーラーなどが廃棄処分される際に不法に投棄されている場合が多い為である。無色無臭で人体に対しては無害の為に、安易に大気中に放出が行われ、しかもそれを取り締まる方法は無く、回収業者の良心に任されている。
住宅やビルなどの建築物を外側断熱、断熱窓枠・ドア枠、多層窓ガラスにして、熱交換器を使った強制換気システムにする低エネルギー化する事で、冷暖房機の熱量は1/10に激減する為にこのような冷媒の生産量そのものを減らす事が可能になる。また、建築物を外側断熱すると躯体のコンクリートの熱膨張が少なくなり建築物の寿命が数100年と長くなるのでコンクリートの製造量も激減し、セメント製造時に発生するCO2も激減する。
太陽光発電や、風力発電よりも建築の低エネルギー化をまず一番に進めるべきであると当ブログが提唱するのは、低エネルギー化により消費エネルギーが減る事もさることながら、それに関連して多くの温暖化ガスの発生を低減することにつながるためである。 |