ダンテの森    
23 Dec 2011   06:05:32 am
マスダール
世界の持続可能実験都市−マスダール(Masdar)アラブ首長国連邦

 アブダビから17kmの位置にあるマスダールは2006年にオープンした持続可能実験都市で営利企業である。6平方キロの広さの街に住居、公共施設、企業、学校、研究所、商業施設、都市インフラを全て最新のクリーンテクノロジーで建設し、再生可能エネルギーに依りエネルギー供給を受けるゼロエミッション都市である。

 ここではあらゆる分野のクリーンテクノロジー、省エネ、再生可能エネルギーが展示され、使われ、販売され、研究され、テストされており、年中無休で世界中からの訪問者を8:30〜22:00まで歓迎している。興味のある方は是非訪問してレポートしてもらいたい。ホームページはhttp://www.masdarcity.ae/ です。

 最終的には人工4万人の都市になり、職住接近の都市で学校も大学まで備えている。MIT(マサチューセッツ工科大学)と協力してできた研究所はマスダールの中心的存在で、ここの研究員がマスダール最初の居住者であった。

 このプロジェクトの共同経営には、ドイツのシーメンス(同市の主な機器を設置)が中東本社とビルテクノロジー本部のR&Dセンターを設置する。アメリカのGEは同社初めてのエコマジネーション・センターを設置する。ドイツのシュナイダ―はR&Dセンター、ドイツのBASF、スイス村協会、韓国技術協会、世界再生可能エネルギー協会(IRENA)も拠点を設置する。

 世界にはこのような大規模プロジェクトが数多くある。昨日紹介した藤沢SSTは日本初である。日本が原子力立国を目指していた20年間の間に世界の流れからすっかり取り残された感はぬぐえない。
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22 Dec 2011   06:03:05 am
建築(10)
藤沢サスティナブル・スマート・タウン(SST)

 当ブログの10月10日で2002年から入居が始まった英国ロンドン近郊の持続可能型社会実験コミュニティーBedZEDを紹介したが、その日本版とも言える藤沢SSTと言うプロジェクトが有るので紹介する。

 藤沢に有ったパナソニックの冷蔵庫工場跡地の19haにゼロエミッションを目指すエコタウンを作ろうと言うものである。パナソニック創業100年事業として他の企業8社と藤沢市の共同事業で2013年入居開始2018年完成時には1000世帯3000人のエコ・コミュニティーができる。

 コミュニティー内の住宅、商業施設、共同施設には始めからソラ―パネル、蓄電池、が備えられ電力系統はスマートグリッドで繋がれており、生活用水のリサイクルや雨水利用も取り入れており、コミュニティー全体でGHG(地球温暖化ガス)排出量は70%低減、生活用水の使用量も30%の低減を達成している。

 さらに住民のエコライフを促進するためにEV(電気自動車)や電動アシスト自転車のシェアリングやチャージステーションやエコライフの為の住民サービスが用意されている。

 事業総額600億円で「街まるごと」のプロジェクトである。英国のBedZEDの場合は50%は分譲、25%は賃貸、25%は公共住宅となっているが藤沢SSTは100%分譲となるのだろうか、そうなると年金生活者のぼくには高嶺の花か。また建てられる住宅はパッシブハウスになっているのだろうか、ご存知の方は教えてください。

パナソニックのホームページにはビデオもあり詳しく説明してある。
http://panasonic.co.jp/fujisawasst/

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15 Dec 2011   05:55:25 am
カナダのオイルサンド
GHGの排出を増やす悪質化石燃料

 カナダ政府が12月13日に「京都議定書」から脱退した理由はオイルサンドにある。

 カナダ、アルバータ州のマサバスカ川の流域にオイルサンドの露天掘りサイトがある。黒くネバネバした原油と砂の混ざり合ったちょうどアスファルトのような物体が森林の下に層をなして埋まっている。それがオイルサンドだ。

 以前は採掘コストが高いと誰も興味を示さなかったが、原油価格が高騰し2020年までには1バレル(160リットル)140ドルにもなると予測されるようになると俄かに商品価値が出てきた。

 現在、日量75万バレルを生産、パイプラインで州都エドモントンや遠く米国の石油精製施設に送られている。オイルサンドから1バレルのビチューメンと呼ばれる中間製品を得るためにはまず森林を伐採し表土を2トン取り除きその下にあるオイルサンド2トンを掘り出してそれに3〜4バレルの80℃の熱湯をかけて油を砂からはがす。つまり160リットルの中間製品を得る為に4トンの土と砂を移動させ、数百リットルの熱湯を必要とする。つまり30倍のエコリュックサックを背負っている。これらに30ドルの費用が掛っており、これはアラビアで原油採掘に掛る費用の10倍の費用である。そしてCO2の排出は3倍以上である。しかしエコノミスト達は加えたエネルギーの5倍のエネルギーを取り出せるので採算が成り立つと言う。

 カナダ政府はオイルサンド開発に2008年だけで1兆8000億円をかけ、過去10年間で4兆5000億を投資した。その甲斐あってこのオイルサンドを原油に置き換えるとカナダは今や世界第二の原油産出国となった。

 この既得権益を手放す事はできないのでカナダ政府は京都議定書からの離脱を選んだ。

 原油が値上がりすると再生可能エネルギーの開発が進むべきであるが、少しでもコストの安いサンドオイル、石炭液化、メタンハイドレート等の地下資源に目が向いてしまうのは何故だろうか?



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14 Dec 2011   06:40:01 pm
カナダが京都から脱退
カナダ政府は12月13日京都議定書から正式に脱退した。

 現存する唯一の国際的な地球温暖化排出ガス規制の枠組みである「京都議定書」からカナダが撤退した。

 南アフリカのダーバンで前日まで開かれていた国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)に出席していたカナダの環境相ピーター・ケント氏が帰国して間もなく上下両院で脱退の法案が可決された。

 ケント氏によるとこの脱退によりカナダ政府は140億ドル(約1兆800億円)の国連に対する追徴金から逃れる事ができる。またケント氏は、カナダにとって「京都」は過去のものであるとし、これは正式な手続きを経た国家としての当然の権利であるとしている。また、「京都」に留まっているのはEUだけであるともコメントしている。

 カナダは2005年に調印した際に2008〜2012年の間に1990年当時のGHG(地球温暖化ガス)排出量から-6%を達成すると約束している。しかし、その後増加するエネルギー消費を補う為にオイルサンドの採掘を始めた。2003年には国民一人当たりの年間GHG排出量は17.5トンであったが2008年には22トンに25%増加している。2011年現在は1990年当時から較べて30%増加しており約定の-6%に較べ36ポイントも増加しており追徴金の対象となっていた。

 カナダと言うと自然が一杯の環境大国のようなイメージを持っていた人は、ぼくを含めて多いと思うが、今回の一件でカナダに対する見方がすっかり変わってしまった人も多いのでは無いだろうか。


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12 Dec 2011   06:04:45 am
環境保護の為の経済
持続可能社会推進の道具としての市場経済

 1970年代に先進国は公害問題を法的規制を取り入れる事で乗り越える事ができた。しかし、エネルギー消費を抑制する様な考え方はそこには全く盛り込まれていない。

 資源の有効利用やエネルギー効率アップを促進する法律は作られてはいるが間接的で、殆ど自主規制を重んじたものになっている為必ずしも効果を上げているとは言えない。

 この1970年代から企業は社会貢献を企業のCSR(Corporate Social Responsibility)と呼んで企業の活動目標の一部に取り入れるようになってきた。これは消費者の厳しい目を少しでも緩和させようとする動機から出てきたものであるが、これを持続可能社会形成の為に利用できればその動機は重要では無くなる。高邁な動機から始められても成果が出なかったものは数限り無く有る。

 CSRは企業の悪名を挽回するには最適の方法であるし、エネルギー効率を上げる事は社会貢献ができ、しかも企業利益の増大にも通じるので企業にとっては良い事ずくめであるところから1992年にWBCSD (World Business Council for Sustainable Development) 持続可能な開発のための世界経済人会議が設立された。

 そのゴールの一つが1999年に発表された「自然資本主義(Natural Capitalism)」であるが、それから10年経った今日、我々は今なお同じ事を叫び続けている。

 GDP至上主義は少しずつ陰りを見せて来てはいるが、先進国の中にはいまだに更なる消費の拡大をしようと別の化石燃料を探索しようとしている国もある。企業によるCSRでは今必要な変化量には程遠い。

Natural Capitalism の和訳本がamazon.co.jp等で購入できます。
自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命
原書名:NATURAL CAPITALISM; Creating The Next Industrial Revolution (Hawken,Paul;Lovins,Amory B.;Lovins,L.Hunter)

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