ダンテの森    
15 Apr 2013   11:27:56 am
環境保護者だった鉄の女
故マーガレット・サッチャーの環境リーダーシップ
GreenBiz.com 2013-04-10 Michael Mothersの記事より、

 20世紀の偉大な政治家の一人、故マーガレット・サッチャーが逝去した。追悼の報道は数々あったが、彼女が環境問題にリーダーシップを取っていた事はあまり知られていない。それを取り上げた記事があったので、概要を紹介する。

 彼女を好きか嫌いかには関わらず、彼女が環境問題を世界に対し、「直ちに環境負荷を緩和する対策を世界が協力して行う必要がある」と警告をした初めての世界的な政治家であった事は事実である。

 1990年、湾岸戦争の真っただ中、彼女は第2回世界環境会議で世界の環境問題に取り組むリーダー達にスピーチを行っている。「国際社会が暴君に対して力で制圧する戦争を例にとり、気候変動の脅威に対し、国際社会が協力して対策をしなければならない。」と訴えている。このスピーチは大変示唆に富んで居り、彼女が感情的だが論理的で、先見性とバランスが有り、ストーリーが有り、しかし断定的なものであった。

 彼女は「狡猾な目に見えない気候変動の脅威」と言う言葉で、「地球温暖化の危険はまだ差し迫ったものではない、しかし、私たちの未来の世代にそのつけを回さない為に今から変革を起こし、犠牲をなる覚悟も厭わない態度を取るには十分な兆候がある。」と言っている。

 1990年にIPCCが出した初めての報告書を読んで、彼女のこの深い理解は政治的なものではなく、彼女の科学者としての直感から来たものであると思える。彼女はオックスフォードで化学の学位を取った後、長年研究者としての経験がある。

 今から四半世紀前、彼女はすでに人類の進歩がバランスを欠いたものであったと看破していた。「産業革命以来、2世紀にわたり、私たちは、科学の発展、経済の拡大、人口の増加がどれだけ進もうと、その進みが滞る事は無いと信じていた。しかし、今それは正しく無いと言うことが解った。」

 さらに、「自然に対する義務」があること、持続可能な開発のみが永遠に続く進歩である。」とし、「2005年までにCO2の排出量を1990年のレベルにできるように挑戦しなければならない。」と具体的に数字を上げて述べている。そして、「科学者が生み出した脅威は、科学者が取り除く事ができる。」とし、「エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの開発、代替燃料の開発、森林の回復を力強く推進しよう。」と述べている。また、火災保険に例えて「今、対策のを講じる事は、将来状況が悪くなってから行うより安価である。」とも言っている。

 彼女が自由市場経済の信奉者で推進者であった事が、更に環境負荷の大きな社会を作ってしまった事は皮肉である。しかし、1992年の京都議定書が纏まった影には彼女の強大なリーダーシップが影響をしていた事は歴史的事実であったと考えられる。

深い科学的理解力に根ざした環境問題の認識を持ち、政界、財界、学界への影響力と、経済と環境のバランスの上に立ったリーダーシップを発揮できるような指導者が今こそ必要である。故サッチャー夫人のご冥福をお祈りします。

原文(英文)URL:
http://www.greenbiz.com/blog/2013/04/10/margaret-thatcher-climate-leadership

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14 Apr 2013   06:12:57 am
世界平均より熱い日本
2013年4月12日に環境省が発表したプレスリリースをそのまま掲載。

気候変動の観測・予測・影響評価に関する統合レポート「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」の公表について(お知らせ)

文部科学省、気象庁、環境省は、日本を対象とした気候変動の観測・予測・影響評価に関する知見を取りまとめたレポート「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」を作成し、レポートの概要をまとめたパンフレットと合わせて公表しました。
<1.は割愛>
2.レポートのポイント
 気候変動の観測結果と将来予測、気候変動による影響、気候変動に対する適応策から構成される。それぞれのポイントは以下のとおり。

(1) 観測結果(第2章第1節)
 日本の平均気温は長期的に上昇しており、猛暑日や熱帯夜の日数も増加している。また、大雨の日数や強い雨の頻度は増加傾向にある。

(2) 将来予測(第2章第2節)
 日本の平均気温はさらに上昇するとともに、その上昇幅は世界平均を上回ると予測される。また、強い雨の頻度の増加が予測される一方で、無降水日数もほとんどの地域で増加すると予測されている。

(3) 影響(第3章)
 前回の統合レポートを公表した後の研究調査の進歩により、気候変動の影響の可能性のある様々な事象が明らかになるとともに、水資源・水災害や自然生態系等において、より具体的な将来の影響評価についてまとめることが可能となった。具体的には以下のような影響が将来的に生じることが懸念される。

[1]水資源・水災害:渇水リスクの増加、河川や湖における水質悪化の可能性、洪水・深層崩壊の危険性の増大、高波・高潮リスクの増加 [2]自然生態系:ニホンジカ等の野生生物の生息域の拡大とそれに伴う食害・生態系への悪影響の拡大、サンゴ礁の消滅の危険性 [3]農林水産業:水稲の品質低下、畜産・水産業への影響 [4]健康:感染症媒介蚊の生息域の拡大、熱中症の増加 (4) 適応(第4章)
 気候変動による人間社会等への影響をできるだけ小さくする「適応」について、日本における現状と課題、今後の取組について解説した。

※ 気候変動とその影響の予測には不確実性が伴うことに留意する必要があります。
 詳細につきましては、レポート本文及び概要パンフレットをご参照ください。

パンフレットpdf(3MB) URL:
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=21903&hou_id=16548

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13 Apr 2013   12:18:13 pm
シェールガスのリスク
欧州の投資家はシェールガス採掘のフラッキングリスクを重視
GreenBiz.com 2013-04-12 Richard Liroffの記事より、

 欧州の大手金融機関が加わっている環境基本枠組みイニシアティブは投資対象のエネルギー企業に対しフラッキングリスクに関するガイドラインを発表した。

 フラッキングはシェールガスを採掘する技術で、ガスが溜まっているシェール層に水平に穴を掘り、水と化学物質の混合液を高圧で注入して天然ガスを地上に送りだす方法を言い、水圧破砕法とも呼ばれており、化学物質の地下水脈汚染、取り出された汚染水処理の問題が有る。

 クレディ・アグリコール(Credit Agricole S.A.)やスタンダード・チャータードバンク(Standard Chartered Bank)を含む加盟の金融機関は投資対象のエネルギー企業に対し、フラッキングが与える環境負荷や地域住民対策のリスクをどのようにマネージメントしているかを知る為にKPI(Key Performance Indicator)の開示を求めるのが目的である。

 ガイドラインは16の責任範囲と4の企業関連の項目から構成されており、フラッキングリスクに対する企業のマネージメント能力についての、さらに12の実際運用上の具体的なキ―データを求めている。

 ガイドラインによると、投資の決定にあたり、金融機関は投資のリスクと環境保護の企業イメージロスのリスクの最小化を図ることと、地域住民との対立を回避する事を目的にして居る。

 投資対象企業から報告されるKPIとなる数値データ以上にリスク評価を可能とするものは無いとしている。

 以上が、GreenBiz.comの記事の概略であるが、いかに欧州の金融機関がフラッキングに対する懸念を持っているかを表すものと言える。先日のオバマ大統領の2014年予算教書全3700語の中に、エネルギーは11回出て来たが、シェールガスには一言も触れていないところから、米政府も懐疑的である事を表している。夢のエネルギーとかシェールガス革命などと言っているのは安倍政権とそこにぶら下がっているマスメディアだけである。日本のマスメディアの見識の無さには改めて驚かされる。

原文(英語)URL:
http://www.greenbiz.com/blog/2013/04/12/european-banks-want-data-frackers?page=0%2C0

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10 Apr 2013   01:50:15 pm
米国の犯した間違い
イラク戦争に掛った費用を環境対策に使っていいたならば
SustainableBusiness.com 2013/4/9 から

 もし、米国がイラク戦争を始めずにそれに掛った軍事費を再生可能エネルギーに充てていたとすると、現時点で米国は40〜60%の電力を環境負荷無しで得ていた。

 イラク戦争の戦争資金は連邦政府の負債となっている為に、将来の米国々民はイラク戦争の対価を支払うことになる。
ブラウン大のワトソン研究所の試算によると、アフガニスタン戦争と、人的損害を計算から省き純然とイラク戦争に掛った費用は2013年現在で、1.7兆ドル(約170兆円)であり、これに退役軍人への支払いを加えると2.2兆ドル(220兆円)に膨らむ。
現在の連邦政府の予算には、2053年までこの負債の償還計画は無く、金利を加えると2053年時点での借金は3.9兆ドルになっている計算である。

 仮にこの資金を再生可能エネルギーに充てるとどうなるかと言うのが今回の試算である。フランスの専門家バーナード・シャボー(Bernard Chabot)は風力60%と太陽光パネル40%がベストミックスであるとの研究結果を出しており、ドイツとオーストラリアがそれを実証している。

 これを前提にして、イラク戦争で使われた2.2兆ドルをにとうししたとすると、現時点で21%の電力が再生可能エネルギーで賄われていた事になる。金利負担まで加えて3.9兆ドルで試算すると40%になり、水力発電10%を加えると50%が再生可能エネルギーとなる。なお、この試算は発電量の試算の際に最も悪い条件で行っているので、現実にはこれより大きな発電量が期待できるので、実際は60%を上回るものと思われる。

 ここでは再生可能エネルギーしか考えておらず、ファクター5が提唱する資源効率を5倍に使う戦略は入っていないことから、これを加えると、米国は、ゼロエミッションを超えてマイナスエミッション国になる事ができていた。環境負荷が最も大きなものは「戦争」である。

原文URL:http://www.sustainablebusiness.com/index.cfm/go/news.display/id/24754

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05 Apr 2013   10:28:42 am
南極のオゾン層を守れ
思うように進んでいないフロン規制――気候ネットワークが意見具申

 近年の気候の狂暴化はジェット気流の蛇行に起因していることが分かっていたが、ジェット気流がなぜ蛇行するのかが謎であったところ、米ペン大の研究で南極のオゾンホールとの関連が有るとの報告が出されたことは、小ブログ2013年2月16日で書いた。南極のオゾンホールの有力な原因物質であるフロンの大気への放出が止まない現状を見かねて、認定NPO法人「気候ネットワーク」が意見具申を行った。フロンを大気に放出することは法律で禁じられてはいるものの、取り締まりは行われておらず、野放図になっている現状を打破したいとするものであるので、環境省は真剣に検討すべきである。以下は、賛同の意味を込めて「気候ネットワーク」からの転載である。

「フロン回収破壊法」の改正に関する提案〜フロンの「排出ゼロ」に向けた実効ある改正を〜
気候ネットワーク 2013年4月4日

 今年3月、中央環境審議会及び産業構造審議会の小委員会合同会議において「今後のフロン類等対策の方向性について(意見具申)」(以下、「具申」という)がまとめられました。「フロン回収破壊法」が制定されて12年になりますが、この間、冷媒フロンの回収率は3割程度と低迷したまま上がらず、それに加えて使用時漏洩が想定より大きいこと、今後HFC排出量は急増が見込まれることなどが明らかになっています。今国会では、この具申に基づき「フロン回収破壊法」の改正案が上程されることとされていますが、今後の排出を減らすために必要な法改正について、以下に10の論点としてまとめました。

論点(抜粋)

1.【法の目的】排出ゼロにする「目指すべき姿」を法の目的に位置づけること
2.【目的・名称の変更】「フロン回収破壊法」から「フロン類排出削減法」へ
3.【対象機器・用途の拡大】スプレー、断熱材、クリーニング・洗浄なども対象に
4.【用途規制】フロンの使用を禁止する用途規制の導入を
5.【国の責務】キャップ&フェーズアウトを法律の下で
6.【フロンメーカーの責務】総量削減とフロン生産量・出荷量等の報告義務
7.【機器メーカーの責務】HFC32(GWP=675)ではなく、自然冷媒への誘導策を
8.【機器ユーザーの責務】フロン管理強化策・定期点検義務化
9.【機器メーカーおよび設備事業者の責務】機器登録と充填量の把握・報告
10.【経済的手法】経済的手法(フロン税)の導入の時期を示すこと

原文URL: http://www.kikonet.org/iken/kokunai/2013-04-04.html

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