ダンテの森    
10 Jun 2012   07:55:55 am
リオ+20と日本
リオ+20では原発には触れない日本

 6月20日からブラジル・リオデジャネイロで開かれる「国連持続可能な開発会議」には世界から、各国政府、NGO、企業など10万人規模で集まり開かれる。日本政府は本会議場近くに日本政府パビリオンを建設してPRしている。

日本政府パビリオンについては次のURLを参照:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/6/pdfs/0601_05_01.pdf

 リオ+20に対する日本政府提案(インプット)は防災、食糧安全保障、水資源など9項目が掲げられているが、最大の環境問題であるはずの原発問題については一切触れられていない。外務省のホームページにはリオ+20について詳しくけいさいされているが、そのどこにも「原発」の字は見つけられない。

外務省のリオ+20のホームページ:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/rio_p20/gaiyo.html

 日本パビリオンの展示にも東北の復興と魅力をPRすることには力が入っているが、福島原発や原発避難民の現状などを報告する展示は一切ない。もし、地震さえなければ日本の原発技術を地球温暖化対策の切り札として売り込もうとしていたはずの企業がブースを並べているのが興味深い。

 イベントがはじまると、おそらく世界のグリーンピースなどの団体が、原発再開に踏み切ろうとしている日本政府に対してのアピールやデモを現地で展開することと思われる。日本のメディアはリオ+20をどのように報道をするのであろうか、このブログでは見守って行きたい。

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09 Jun 2012   07:24:05 am
省エネ照明の効能
照明に自然光を取り入れると労働環境が良くなる。

 1998年に出されたファクター4の共著者エイモリ・ロビンス、ハンター・ロビンスは後にポール・ホ―ケンと共著で「自然資本の経済」(2001年日本経済新聞社刊)を出版したが、その中から、自然光照明についての部分を紹介する。

 カリフォルニア州サニーベイルにあるロッキード社のビル157では、照明電力の3/4を節減する為に高度な昼光照明が取り入れられ、従業員にとって魅力のある、働きやすい空間となっている。オーナーはこの設備投資を4年以内に回収できると見積もっていたが、欠勤率が15%低下し、労働生産性が15%向上したおかげで、昼光照明の費用を1年目で償却することができた。さらに、諸経費の低下は熾烈な契約獲得競争で有利に働いた、予想を上回る契約からロッキード社が得た利益はビルの建設費を超えるものであった。

 ネバダ州リノの中央郵便局では、それまで思わしくなかった郵便物仕分け作業のスピードと正確さが、有る時に高まり、アメリカ西部地区で最高の成績を収めるようになった。局長はいろいろと原因を考えた末、省エネルギーの為に導入した照明装置のおかげで、局員が文字を読みやすくなったからだと言う事に気づいた。同時に改装した天井も、それまでの従業員の気を散らし、疲労の原因となっていた雑音を吸収していた。

 ボーイング社は設計部門と製造部門の照明装置をかえたことによって、照明電力を九〇%節減できただけでなく(二年間に投資を回収)、航空機の組立過程で欠陥を発見しやすくなるという効果もあった。そのおかげで仕事をやりなおさなければならない事態に陥るケースは回避され、予定どおり納品できるようになり、顧客満足度が改善されるという貴重な成果へと結びついた。

 以上は、「自然資本の経済」から抜粋した、照明を省エネ設計に変える事で、得られるのは経済的効果だけではなく、欠勤率の低下や仕事の能率アップ、品質向上になった例である。グリーン改築は大きな省エネが目的であるが、得られる副産物も大きい。日本のビルが全部グリーン化すれば、原発の再稼働の必要はまったくない。

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03 Jun 2012   12:18:04 pm
水資源問題
水不足を招いた元凶は灌漑農業


 淡水資源はこのままで行くと後10年で危機的な不足となる。淡水資源不足の最大の元凶は灌漑農業であるとする報告が国連環境開発(UNEP)から2006年に出されている。

 世銀をはじめ先進国が開発途上国に対して行って来た農業援助は全て灌漑農業であった。大規模な灌漑用水池、用水の為の運河建設、田畑を湛水させる灌漑農業を広めてきた事に起因している。灌漑農業は莫大な水資源を使用するが、実際に作物が必要とする水は供給される量の数%でしかない。そして、灌漑農業に使われた水はほとんどが蒸発してしまう為に地下水として還元されるのは30%以下である。今日、都市や工業では水資源のリサイクルは90%まで行われているのに、農業では30%以下のままである。

 航空機を使っての農薬散布に代表される大変に大雑把な農薬の大量散布や高圧スプリンクラーによる撒水、化学肥料の大量使用などによる環境負荷は大変大きい。農業分野のエネルギー使用や、GHG(地球温暖化ガス)排出は18%と大きい。現在のシステムを全く変えることをしなくても、適時適量を細かく計画的に行うだけで30%の節約が可能であるとしている。また、僅かな投資で実現可能な点滴灌漑にシステムを変えれば70%の水資源と95%の農薬、肥料の節約が可能になるとしている。

 また、無制限に水をやるだけのではなく、適正な時期には農作物を水不足状態にする事で逆に収量と品質が向上する方法も開発済みであるとしている。地球の淡水の70%を消費している農業の水効率の改善が唯一の水資源問題の解決法であるとしている。

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01 Jun 2012   05:56:40 am
1kWhのエネルギー
エネルギーに対する常識がどうしても過小評価をしてしまう


 ぼくたちがエネルギーをどんなに安いものだと思っているかを認識させる為に、ファクター5の著者のフォン・ヴァイツゼッカー教授は一般人相手の講演のときに良く話す例がある。

 教授「私は環境学を学ぶ学生に時々問いを出します。ここに10リッターの水が入ったバケツが有るとする。それを海抜0メートルから世界最高峰のエベレスト山、8848メートルの頂上に持ち上げるのに必要なエネルギーは何kWh(キロワット時)かと言うものです。すると学生は携帯電話を電卓にして暫く叩いて見て、だいたい100kWh〜1000kWh位の数字を言います。」

 これは純然たる物理学の問題ではあるのだが、ぼくたちのエネルギーに対する価値(価格)がいかに低いかを表す結果となる。当然、学生の中には物理や数学が得意な学生も居るはずだが、おおよそ答えはこの範囲に入るのだそうだ。正解は0.25kWhである。最近日本でもFIT(Feed In Tariff)電力強制買い取り制度の実施がはじまるが、その買い取り金額は1kWhが41円であるので、海抜0メートルから10kgの荷物を8848メートル持ち上げるのに10円の電気ですむことになる。これがぼくたちの常識とはかけ離れた感覚を与えてしまい、計算結果はきっと桁数を間違えたに違いないと0を3個ほど付けてしまうようである。

 ちなみに1リッターのガソリンの熱量は約36000kJ(キロジュール)で、これは約10kWhの電力に当る。つまり1リッターのガソリンの持つエネルギーは400リッター(ドラム缶2本分)の水をエベレストの頂上まで持ち上げるエネルギーを持っている事になり、全部電気に換えることができれば410円で売れることになる。それくらいエネルギーは低い評価しか受けていないと言うことになる。
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24 May 2012   06:06:55 am
デカップリング
資源消費の増加が生活を豊かにしてきたと言う嘘

 当ブログの元になっている「ファクター5」の著者であるフォン・ヴァイツゼッカー教授が共同議長を務めている国連環境計画の国際資源パネル(IRP, International Resource Panel)は世界各国における資源の持続可能性を追求しつつ、経済発展と生活の向上を続ける事を研究・開発する専門家集団であるが、このIRPが現在進めているのが「デカップリング」Decoupling(分離すると言う意味)である。

 これは資源を何倍にも活用する事は資源使用量の減少となるが、それは経済発展を全く損なうものではなく、資源使用量と経済発展はそれぞれ別に考えるべきであるとするものである。

 従来、環境問題→省資源→GDPの低下→生活の快適性の低下と考えられがちであったものを是正するのがその目的である。

 20世紀中に、建築資材は34倍、鉄鉱石の採掘は27倍、化石燃料は12倍、バイオマスは3.6倍の使用量になった。これは全てそれだけの環境負荷を伴った。産業革命以来、資源消費が増える事が人間の生活を豊かにしてきたと信じさせられてきたが、本当はそうではなく、生活の豊かさはこれからも向上して行くべきで、それにいささかのブレーキを掛ける事無く、資源使用量を減らして行くのがデカップリングと言う考え方である。
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