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19 Jan 2016 03:37:59 pm |
遅れた年頭のご挨拶 |
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遅れた年頭のご挨拶
ブログ管理人
2016年も早や20日間が経ってしまった。ブログ「ダンテの森」の更新を一カ月以上怠ってしまった。特に健康上の問題があった訳ではないし、1月7日に大阪で講演会が有った以外は遠方に出かけていたわけでもない。要するに怠惰である。時々、このダンテの森を訪ねてくれている読者の方には誠に申し訳無い事をしたと反省している。
2016年は一体どんな年になるのだろうか、友人の一人が丙申(ひのえさる)は「激動の年」になると言っていた。確かに5月に伊勢志摩サミット、7月には参議院選挙が有るが、「激動」が起きるような雰囲気ではない。ゲリラによるテロでも起きない限り「激動」は起きないのではないだろうか。このままの政治体制が「平穏」に続くのが決して良いとは思わないが、一般国民としては「平穏」が何よりなのかも知れない。
年末に岸田外務大臣の内輪の会合に出る機会があった。岸田大臣は自民党の保守本流と言われている宏池会の代表であるが、その宏池会の会合であった。岸田大臣はスピーチで、外相就任3年間で50数ヶ国を歴訪し要人と話すと、その最重要課題は地球温暖化対策であると言う。特に先進国の首脳は話の8割〜9割が地球温暖化対策と持続可能な社会への移行であり、テロ対策や安全保障が主要課題では無く、ましてや経済成長などは話題には上らない。ところが国内に戻ってくると地球環境問題は全く話題にはならない、このギャップに大きなストレスを感じると、話していた事が印象に残った。
1月15日には国連大学で「SDGsシンポジウム」が開催された。昨年5月に国連総会で決議された「持続可能な開発の為のゴール(Sustainable Development Goals)」の事で、エスディージーズと読み国際社会では最も新しいキーワードである。海外の要人と付き合いのある人は絶対に知っていなければならない言葉である。ところが日本では全く広がっていない。これは2030年までに達成すべき17の目標と169の小目標が設定され、これらを世界196カ国の国連加盟国全ての国が2016年1月1日から実行して行くと国連決議が行われた。その数値目標の設定や達成方法は各国の裁量に任されており、法的な拘束は無い。ただ、各国が設定した目標は国連に報告され、その達成度合いは検証され報告される。
例えば、SDGsの目標1は「すべての場所における、あらゆる形態の貧困の解消」である。そしてその小項目1.1には「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」とある。これは一見日本には関係ない目標のように見えるが、日本の企業が原料を輸入する時にその輸出元が1日1.25ドル未満の労働者を使っていないかどうかを確認する具体策を打つ必要がある。また、米国に次いで先進国中6位と大変高い相対貧困率(2012年で16.1%)を2030年までにX%に下げますと言う目標を設定しなければならない。日本のこども貧困率も先進国では大変に高いのでその為の目標も設定すべきである。
SDGsは貧困と格差、食糧、健康、教育、ジェンダー、水、資源・エネルギー、生物多様性、ガバナンス(制度の構築)など多岐にわたり具体的な目標が決められている。日本では慶応大学の蟹江教授が率いるPOST2015プロジェクトがSDGsの第一人者で、今回のシンポジウムもこのプロジェクトの主催であった。同プロジェクトでは「処方箋」を発表している。
http://www.post2015.jp/
伊勢志摩サミットは世界が注目するが、そこで議長国である日本がG7の議論をSDGsに集中することができれば日本は世界から見直される大きなチャンスを持っていると思うが、今行われている国会の議論を見る限り日本政府にはSDGsは全く頭に無い。
SDGsの全ての項目が達成されるとその向こうに見えてくるのは、まさに「ファクター5」の提言する持続可能な社会が出現する。処方箋に書かれるべき治療法は「ファクター5」の中にあることを広めて行く事を今年の目標にしようと決めた。
本年も宜しくお願い致します。
敬白 ブログ管理人 |
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28 Nov 2015 09:47:40 pm |
英国のシリア空爆 |
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難民がテロを生むのでは無く、テロや戦争が難民を生んでいる。
ブログ管理人
英国のデイビッド・キャメロン首相が英国議会で、シリア空爆に参加を議会審議するように求めた。1週間前に起きたパリのテロを受けてオランド大統領が非常事態宣言を出し、シリア空爆を強化したことや、ロシアの空爆の激化を見てシリアにおける紛争に終わりが近づいた事を見て取り、中東における英国のプレゼンスと利権を取り戻す為には空爆に参加しておく必要が有るとの判断だろう。
キャメロン首相の提案理由によると、1番目にテロの脅威を取り除く唯一の手段が空爆であるとしている。これはどう考えてもおかしい。今回のパリでのテロの犯人は、全てフランスやベルギー生まれのアラブ系の若者である。彼らのほとんどは普通の若者であったと、若者たちを知る人たちは口ぐちに語っている。もちろん彼等を勧誘し手筈を整えたISのリクルーターは存在したとは思うし、ISの援助なしに自爆ベストや自爆ベルト、またカラシニコフや大量の銃弾や手投げ弾の用意はできなかったであろう。しかし、実行犯はごく普通のアラブ系のフランス人やベルギー人の若者であったことはまちがいないと思う。
オランド大統領はパリでのテロを国内問題では無く、即座にISの犯行に結び付け、「これは戦争だ!」と叫んだ。911の時にジョージ・W・ブッシュが「これは戦争だ!」と叫んだ事を思いだす。ブッシュはアルカイダの犯行としその背後にはイラクが居ると決めつけて直ちにイラク攻撃に出たが、今回のオランド大統領の行動は、その図式に余りにも似ている。
現在欧州には1500万人のアラブ系の人たちが住んでいる。その殆どは貧困層に属している。社会保障が比較的整っている欧州でも、新自由主義化の傾向が強くなるにつれ富を持つものはより豊かになり、持たざる者は貧しさを増す経済格差が大きくなってきている。その中で社会層の底辺に多いアラブ系の人たちが格差を感じる事は増してきていると思う。それに加えて欧州各国の地元民の貧困層を背景にした右翼の台頭である。彼らはムスリムを敵視し、各地でモスクの襲撃や、反イスラムデモを繰り広げたりしている。その為に反動的になるアラブ系の若者が出てくることも容易に理解できる。
その内フランスには約500万人のムスリムが居る。彼らは第二次大戦後フランスの経済発展が目覚ましかった頃に、単純労働者として中東から移住してきた「出稼ぎ労働者」の2世や3世である。フランスでは出生するとフランス人となり2重国籍は許されていないので、彼らの祖国はフランスとなる。ムスリムの家庭で育ち、ムスリムである彼らはキリスト教徒が多いフランスの中では少数派として差別を受ける。タカ派のサルコジ政権時代には、女性にスカーフの着用を禁じたりしてそれが顕著になった。
空爆は最も愚かな方法である。空爆はいわば無差別攻撃だからだ。高射砲が届かない数千メートルもの上空から攻撃目標を500kgも1トンもある爆弾を投下するのであるから、目標とする敵が居ると思われる建物であり目標物の周辺に居住する子どもや女性を含む非戦闘員が大勢死ぬ。敵とする目標の戦闘員がどれだけ損害を受けたのかは判明の由もない。しかし、必ずと言ってよいほど非戦闘員の女性や老人、それにいたいけな子供たちが死んだり重傷を負ったりしている。欧米の空爆やドローンによる攻撃は、それにより家族を失くした若者を過激派にする原因を作っているだけである。そもそも航空機による無差別爆撃は禁じられるべきであると私は考えるものである。その最たるものが広島・長崎であったが、これを戦争犯罪と断じなかった事が、いつの間にか空爆は通常の戦術の一つのように語られるようになってしまっている。これは米国での、銃所有を基本的な権利と考える、アメリカ人特有の権利意識の延長線上にあるものではないだろうか。米国内であれだけ銃の乱射事件が続いても、いまだに米国社会はかたくなに銃の保有を個人の権利と考えている。
いつイスラム過激派が攻めてくるか、いつ空から爆弾が降ってくるか分らない、そんな所には住む事はできないと、住みなれた故郷を捨てて決死の覚悟で危険なボートに乗り、何日も野宿をしながら徒歩で国外を目指す難民の様子を私たちはメディアを通じて目にしており、心を痛めている人も多いはずである。ドイツのメルケル首相は「困っている人を助けると言う事が間違っていると言うのであれば、それはもう私のドイツではない」と言ってシリアからの難民を受け入れようとしているが、それとて出身党のCDU/CSUから反対意見が出され風前の灯である。しかしここで私たちが知るべきは、難民がテロを生むのでは無く、テロや戦争が難民を生んでいるのだと言う事実である。 |
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16 Nov 2015 05:00:28 pm |
731部隊の記録 |
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「フェス・731の記憶」に参加して
ブログ管理人
11月14日に東京都大田区民ホールアプリコで開かれた731部隊展実行委員会主催の「フェス・731の記憶」に参加して来た。私の友人(故人)の子息の奈須重雄さんはNPO法人 731部隊細菌戦資料センターの理事として長年731部隊の研究をしている。その方から久しぶりにメールでこのイベントの案内を戴き参加した。
13:00〜夕食の為の休憩を挟んで20:20までと言う長丁場に耐えきらず、最後の演劇は見ずに失礼した。
最初の映画「前事不忘 後事之師 〜731部隊元少年隊員(飯塚良雄さん)の証言」59分は、飯塚さんが自ら語る戦争加害者体験が生々しかった。14歳で志願して731部隊の少年隊員としてハルビンの731部隊に配属され次第に自らの人間性を失ってゆき人体実験などを手助けする自分になって行った様をカメラの前で淡々と語る。戦後21歳の飯塚さんは、遼寧省の撫順戦犯管理署に戦犯として収容され3年余り寛容的な扱いを受ける事で、逆に悩み呻吟して徐々に人間性を取り戻し自ら罪を告白する。同収容所には約三千人が戦犯として収容されたが、約七割の人が不起訴となり日本に送還されている。終戦直後の中国では貴重であったはずの白米を毎回の食事に出すなど恵まれた食事、清潔な宿舎、草花を育てたりする自由も与られ、強制的な思想教育も無い寛容に満ちた雰囲気の中で、戦争により狂わされた兵隊達の人間性を取り戻すと言うこの収容所自体が、有る意味で中国の実験施設であったのかも知れないと思った。
次に「731部隊遺跡を世界遺産に向けて」と題する侵華日軍731部隊罪証陳列館館長の金成民教授は、本年8月にリニューワルして毎日1万人の来訪者が絶えないと言う731部隊の施設跡地の保全と最近の発掘の模様をスライドで見せ、世界遺産登録への協力を呼びかけた。ドイツ国内にはユダヤ人を収容しガス室で殺していたKZが保存され、ドイツの子どもたちが第二次大戦の歴史を学ぶ教材となっている。また、隣国ポーランドには有名なアウシュビッツには大勢のドイツからの若者が訪れているが、日本には広島・長崎のような被害者としての展示は有っても加害者としての展示は乏しく、日本の若者には日本が加害者であったと言う意識は殆ど無い。ましてや、安倍首相は今年8月の70年記念談話で「孫や子に加害者としての責任を感じさせるような事が有ってはならない」とまで言っており、70年前の戦争責任は消え去ろうとしている。731部隊は細菌の研究をしていた純然たる医学研究所で、細菌兵器の研究などしていないと言うのが日本政府の言い分であるが、実際に人体実験をしたり、細菌爆弾を作って実験までしている証拠が出て来ている。金教授達の運動が成功して世界遺産への登録が行われる事を応援したい。
その次の「731部隊解明の地平と謎」を熱く語ったジャーナリストの近藤昭二さんの話は、敗戦が色濃くなった時に731部隊は大規模な証拠隠滅作戦を実行して全ての証拠を無きものとしたが、米軍は日本国内に保管されていた資料の多くを米国に持ち帰った。その後、これらの資料は決してソ連に渡さないと言う密約の上で、多くの731部隊の上級幹部は米軍に対し証言をし、研究成果を米国に渡すことで戦犯を免れた。その後、数十万ページの資料が米国から日本の当時の防衛庁に返還されている。近藤さんは何度も政府に開示を求めたが、はじめの内はそんな資料は無いの一点張りであったのを、米国議会図書館の公開資料の中から、日本に返還された731部隊関係の資料の送り状の控えを発見して、それを根拠に防衛省に開示請求をしたが、こんどは見つからないと言っていると言う。開示請求は今後も続けるとのことであったので、今後が楽しみだ。
フォアイエで展示されていたパネル展示はその内容の濃さと証拠性に圧倒された。最初にHIVで有名になったミドリ十字と言う血液製剤メーカーには数多くの731部隊出身の幹部が居たことである。下級研究員や研究所の労働者は、中国で捕虜となり先に述べた飯塚さんのように遼寧省の収容所に収容されていたが、彼ら幹部は戦況が悪くなる前に日本に帰国して、米軍との闇取引で免責され堂々と社会に復帰していたのである。それどころか、上級幹部の中には731部隊の研究成果を元に戦後10年以上も経った後に博士論文を書き、それが認められて博士となっている。東大や京大の医学部長まで務めた元731部隊員までおり、多数の大学教員、国立研究所員、大企業の研究所員がいた事をパネル展示には示されていた。貴重な話と資料を見る事ができ、これらを主催された方々に感謝の言葉を贈らせていただきたい。
ドイツは連合国によって行われたニュールンベルグ裁判とは別に、ドイツ検察が独自に戦犯を洗い出し裁判を受けさせている。つい最近も93歳になったアウシュビッツの収容所のSS隊員が、過去を隠してドイツ国内で生活していたのをドイツ検察が見つけ出し訴追して、禁固刑に処している。それに比べ、日本ではただの一人も日本の検察は戦争犯罪人の訴追は行っていない。安倍の祖父に当たる岸伸介などはA級戦犯であったが、米国と日本政府の対ソ戦略上の措置としての密約により戦犯は解除され後に日本の首相になった。安倍の大伯父に当たる佐藤栄作は造船疑獄と言われた汚職で一旦検察に訴追されたが、当時の法務大臣の指揮権発動と言うウルトラCで訴追を免れている。このように日本の高級官僚は絶対に罪には問われないと言う前例が、安倍のように憲法違反も平気で行える土壌を作っている。これは、日本人の「のど元過ぎれば熱さを忘れる」「人の噂も75日」「過去は見ずに流す」と言う悪いことは忘れると言う国民性と関係があると思う。「忘年会」のシーズンが近づいているが、今年起きたことは決して忘れない「不忘会」としてゆきたいと思う。
NPO法人 731部隊・細菌戦資料センターのURL:
http://www.anti731saikinsen.net/ |
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01 Nov 2015 05:56:10 pm |
産官はまず反省せよ |
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過去の反省をせずして、新規分野に参入するなど愚の骨頂である。
ブログ管理人
原発も売れない、新幹線は中国に負ける。それではこんどは軍備でと思っていたら大間違いだ。米国、ロシア、イスラエル、ドイツなどこれまで実戦で鍛え抜かれた「血を吸った兵器」でしのぎを削る国際軍備市場に新規参入して勝ち目が有ると考える方がどうかしている。
1970年代の2度のオイルショックとニクソンショックと言う大幅な円相場の切り上げを克服する為に日本の産業は、産業構造の一大転換を図り成功した。そして、世界を魅了する数々の製品を作った。SONYのウォークマンなどは世界中のこどもたちの憧れになった。カラーTV、ビデオ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、CDなどである。しかし現今の日本産業の停滞、特に1990年以降日本の産業は世界の市場を魅了するような製品やビジネスモデルをハイブリッド車以外に提供する事ができなかった。その原因を洗い出して反省する事が先決だ。民生がだめなら軍備で、と言うのはいかにも甘すぎる。
なぜ日本の産業は良い製品を生み出せなくなったのかを考えると、原因は二つ考えられる。一つは役所の行政指導で、二つ目MBAによる企業経営で有ると思う。行政指導は経産省の企業経営への干渉である。創造力に欠けるエリート役人が机上で考えた産業政策が日本の産業をダメにしたと思う。役所の指導してきた結果が、例えば携帯電話のガラパゴス化である。役所は海外の新しい技術は、非関税障壁で国内に入れないようにして、その間に国内製品を出そうとする。日本はそこそこの規模の市場が有るので、企業は世界の荒波の中で戦う前に国内市場に特化した製品開発に走り、世界に通用しない製品を作って満足してしまう。役所が掲げる方向に向いて行われる研究開発には行政から補助金が出るので、研究者や開発者はどうしても補助金欲しさにそちらの方向に向いてしまう。これが、創造的な研究開発を阻害していると思われる。
経産省が作った外郭の巨大組織、新エネルギー・産業技術総合開発機構、通称NEDOがあるが、これこそ霞が関村の実行部隊でありとあらゆる産業分野の研究所や企業の開発部門に大学に補助金をちらつかせて、まるでがん細胞のように入り込んでいる。このNEDOこそが、日本産業の弱体化の原因であると私は思っている。NEDOから補助金を貰う為にはNEDOが推進しているものに沿った研究開発である必要がある。そしてその規模や予算額もある程度の枠が決められている。丁度じょうろで水をやるように広く薄く補助金をばらまく。研究者や開発者は、どうしても補助金の魅力には勝てず、と言うか上司も補助金が取れるものを求める為に、補助金が得やすい研究・開発テーマになってしまい独創的なものは出て来なくなる。かくして、70年代に各社から次々と出されて世界市場を魅了するような製品は出てこなくなった。
二つ目の原因は、MBA(経営学修士)による企業経営である。ハーバードビジネススクール流の経営方法は、4半期ごとの決算で株価を上げる事を命題にした株主重視の企業経営である。株価に株の総発行数を掛けた時価総額が上下することに一喜一憂する経営で、そこでは長期的な企業ビジョンは無くとにかく4半期ごとの結果重視で、長期間かけなければ結果の出ない研究開発などは重視されない企業風土ができてしまう。元GMのCEOであったボブ・ルッツ(Bob Lutz)氏が2013年に書いたCar Guys vs. Bean Counters(クルマ屋対経理マン)には、自動車会社の経営者はクルマ好きなクルマ屋(Car Guy)であるべきで、豆を一戸ずつ数える(Bean Counter)ような経理マン=経営学修士(MBA)では企業はダメになると訴えている。最近話題になっているドイツのフォルクス・ワーゲンも結局のところクルマ屋が経営をしていなかったと言うことが原因で有ったと思われる。本当のクルマ好きであれば、ごまかしソフトで検査だけは通過しようなどの考えに及ぶ訳がない。エアバッグメーカーのタカダでも同じようなことが起きていたのだろう。株価だけを追求する4半期決算をやめて、決算は1年ごと、中期計画、長期計画で持続可能性を追求している企業が評価される産業の体質に戻して行く必要がある。
本来、日本経団連などの経済団体と経済産業省は90年以降なぜ日本の産業が急速に国際競争力を失ったのかを精査し反省するところからはじめるべきところである。それを、中国・韓国との価格競争に負けた等と嘘の言い訳をして責任の所在をはっきりさせる事もせず、民生がだめなら今度は利益率の良い軍需産業だなどと言っているのは、絶対に間違っている。軍需産業市場は米国、ロシア、イスラエルなどの実戦経験豊富な兵器を作っている企業がしのぎを削る熾烈な競争が行われている市場で有る。まだ「血を吸った」ことのある兵器を作った事もない日本の産業の参入をおいそれと許すような甘い市場ではないことを知るべきである。 |
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Posted By : dantesforest |
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27 Aug 2015 06:42:20 pm |
潤滑油のリサイクル |
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欧米ではリサイクルが当たり前、日本では燃やすのが当たり前
最近、廃油のリサイクルに取り組んでおられる方にお会いする機会があった。
氏は、大手の石油会社の中央研究所で重責を務められた後、現在はある石油関係の会社の重役をされている。1970年代、彼が大手の石油会社の研究所に在籍していたころ、潤滑油の再生の研究に取り組んでいた。自動車には数リッターの潤滑油が使われており、これは一定距離を走ると交換される。工場にある機械にも数々の潤滑油が使われており、やはり古くなると交換される。回収された廃油は、そのまま廃油引き取り業者によって集められ、工場ボイラーや風呂屋で燃やされている。
潤滑油と言うのは石油製品を原材料に機械の摩耗を防ぐための数々の添加剤、粘度や温度特性を良くするための添加剤などで合成され製造時に多大なエネルギーが投入された化学物質である。性能が劣化したからと言って燃やしてしまうのは最も芸が無い。それが日本では唯一のリサイクルであったが、欧州ではすでにその当時本物のリサイクルが行われていた。本物のリサイクルと言うのは、使い古され不純物を含み性能が劣化した潤滑油から不純物を取り除き、性能劣化の原因物質を取り除き、新品の潤滑油に近い状態にして再度潤滑油として使うことである。
氏は当時の通産省(現経産省)に潤滑油再生プロジェクトを提案した。1980年に入ると廃油を燃やすとダイオキシンが発生する事が問題となり、潤滑油を再生できれば焼却炉やボイラーで燃やす事が無くなると言う理由からプロジェクトは進められた。しかし、石油業界は潤滑油添加物にダイオキシン発生の原因物質を使わない研究をすすめた結果潤滑油を燃やしてもダイオキシンは発生しなくなった。すると、石油業界は売り上げの増加を重要視して潤滑油のリサイクルの研究は止めるようにと、通産省に圧力をかけこの研究は有名無実にされてしまったとのことである。
その間、欧州はもとより米国でも潤滑油のリサイクルの開発は進み、現在では欧米ではほぼ100%の潤滑油はリサイクルされて再生潤滑油として流通している。資源の少ない日本で、石油製品である潤滑油をリサイクルする道を選ばなかった日本の石油業界と通産省の売り上げ重視の考え方は納得しがたいものがある。因みに日本で新車を購入すると5000kmごとのオイル交換が進められる。ドイツ車の場合は基本的にメンテナンス時に補充をするだけで、油の粘度が無くなると交換を勧められるが、筆者が乗っていたドイツ車の場合、新車からのはじめてのオイル交換は3万kmを走った後であった。その後もだいたい3万kmごとにオイル交換をした。どうもこれは、日本の石油業界の力が働いているように思える。
現在はどうかと言うと、全国オイルリサイクル協同組合のホームページを見ると、回収された古オイルは殆どは重油の代替えとしてボイラー用燃料となっており、リユースされるのは僅かであると書かれている。(図参照)欧米では必ず行われている真空蒸留の工程が無く、そもそもリユースを主体には考えられていないことがこの図からも分かる。燃料として燃やすのは最終手段で有るべきである。
全国オイルリサイクル協同組合のURL: http://www.oilrecycle.or.jp/work/
話は戻って、氏は現在の新しい会社で、変圧器用絶縁油のリサイクルをビジネスモデル化しようと考えている。変圧器には必ず冷却用の絶縁油が入っている。欧州ではリサイクルが普通だと言うが、やはり日本では劣化すると回収されて燃やされている。氏はそれを可搬式のリサイクルプラントを作って、変電所や発電所に運んでゆきその現場でリサイクルを行うサービスとしてのビジネスモデルを構想している。これとて、絶縁油を販売する会社にとっては売り上げが下がる嬉しくない技術である。
このように、海外ではすでに普通の様に行われているリサイクルそしてリユースが、日本では行われていなく、それが役所の指導のもとで政策的に行われていることが問題である。経産省は資源保護よりGDPの方が重要と見える。氏のような、限られた資源は大切に使うべきとの考えの研究者の研究が実る事を祈ってやまない。 |
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Posted By : dantesforest |
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