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14 Dec 2012 03:11:02 pm |
ドイツ人の環境意識 |
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日常生活でいやでも高まる環境負荷に対する意識
ドイツで友人と話していると、ぼくが環境問題に興味を持っていると意識をしての事なのかも知れないが、エネルギー消費の話題が普通に出てくる。例えば車で走っている時に、この車の燃費はこれくらいで、今前を走っている車の燃費はこれくらいだと詳しい。20年位前には車の話と言うと、0-400m加速が何秒だとか、最高時速が260km/hだとか話していた事を思い出すが、現在のドライバーの興味はもっぱら燃費で、その次に環境負荷である。この車は150g/kmとか、あの車は120g/kmを切っているとかを話題にする。これは1km走ると何グラムのCO2を排出して環境に負荷を与えているかの値で、新車の広告やカタログには大きく表示されている。まだ日本では、車の環境負荷値を人が話すのを聞いたことがない。
ぼくの友人のキシッヒ氏(Mr. Kissich)は僕と同年代で定年退職者である。息子が結婚したときに増築して今は空いている160平米の住居を貸家として貸すのだと言う。その時に必要となるのが、エネルギー証明書(写真)である。この書類は専門の業者に頼んで作ってもらわなければならす、その費用は50ユーロ(5000円)である。頼まれた業者はその家やマンションの過去3年間のエネルギーコスト(電気・ガス・温水)をエネルギー供給事業者からしらべ、登記された建築物の面積で割って1平米あたりの年間エネルギーを算出して、この家、部屋はこれだけのエネルギー消費をしましたと証明するものである。
これは、2008年7月に施行された法律によるもので、家や部屋の賃貸借契約に必要な書類である。テナントや借主は事前に自分が借りようとしている家がどのくらいエネルギーを消費するかがわかるようになっている。不動産屋の資料にも提示が義務付けられている。
ここに示したエネルギー証明書の例では一番上のスケールの一番左が0でゼロエミッションで、一番右は最悪の400kWh/平米以上となっており、95.4kWh/平米のところに矢印があるのが、この例の家の消費エネルギーである。
このようにドイツでは日常の生活にいやでも環境負荷に対する意識を持たざるを得ないような教育的情報提供が行われている。
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13 Dec 2012 06:33:51 pm |
個人で建てた省エネハウス |
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まだ、パッシブハウスができていない1992年に建てた低エネルギー住宅
2012年12月12日の早朝にフランクフルトに到着し、電車でバイエルン州の北に位置する学園都市エアランゲン(Erlangen)に来た。10年ぶりである。ショッピングモールにスターバックスと世界中どこに行っても見れるものがここにもできていた。
友人の紹介でMr. Rathの家に向かった。彼は1992年にまだパッシブハウスの概念が定着する前に低エネルギー住宅を建てた。当時、低エネルギーハウスの論文が出されたのを読んで、建築家と話したがまだ建築例が無いとのことだったが、自分で書籍や論文を読み漁り、図面を自分で書いて建築家に見せて当時の建築基準に合わせてもらう為に修正をしながら1年掛けて設計をしたという。
窓は全て3枚ガラスにして、断熱処理されたサッシを使用している。使った材木はすべて製材所に特別注文して薬品処理をしていないものにこだわった。壁土も一切の薬品が混入していないものを選んだというこだわりようである。外断熱の構造で、熱交換率(U値)は0.14であると言う。家のリビングルームの中央にある石製オーブンには銅パイプがめぐらされてそこで暖められた温水で全戸を暖房しており、熱源はこのオーブンだけである。このオーブンでは薪をくべるが、その手間が楽しいと言う。
機密性が高いので強制換気システムが付いている。外気を一旦地下1.5メートルに敷設された直径6cmの金属管5本を通してフィルターと熱交換器を通して温めた後に室内に導入している。外が-10度の時でも地下を通ってきた空気は+5度になっており、それを熱交換器で室温にしてから取り込むので外気が室温を下げることはない。この家全体で、通常住宅よりエネルギーコスとが60%は少なく住んでいるという。もともと、制御機器の技師であるMr. Rathはプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)を駆使して高度に自動化しており、現在の最先端の省エネハウスに負けない。個人で低エネルギーハウスを建てるひとがいるほどドイツは省エネルギーには関心がある。
写真は、20年前の建設中の南側サンルームのところである。3重ガラスのサンルームの左側の建築中の壁は16cmの空間があり、断熱材が充填されている。
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12 Dec 2012 07:31:57 pm |
今日からドイツです |
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ドリームライナー、ボーイング787
ぼくは今この原稿を羽田発フランフルト行きのボーイング787の中で書いている。787はドリームライナーと呼ばれ、現存する商業航空機では最も燃費が良く従来の同クラスの777に較べて30%の省エネになっている。
従来の航空機との一番大きな差は機体のほとんどが従来はアルミ合金の板を何十万個のおびただしい数のリベットで張り合わせて作ってあったものを、新素材に変えたことである。日本の東レが開発した商品名「トレカ」と言う炭素複合繊維を燒結させたもので、金属よりも軽量の上に強度がある。この新素材のおかげで、機体の強度、柔軟性、気密度が格段に良くなったために、機内は静粛で酸素濃度、気圧共に高くより地上の条件に近いので、旅行者は良く休むことができるので、ドリームライナーの名前がついている。窓も大きい。ちなみに機内の照明は100%LEDである。
しかし、この新素材を製造するには高圧と高熱が必要でエネルギー集約型の材料であることは、アルミ合金とあまり変わらない。この繊維よりも強い繊維をクモは常温で作ることができることは、バイオミミクリーのところで述べた。人類もクモの手法を学ぶことができれば製法にもエネルギーをかけなくても航空機がつくれるようになる。それに都市廃棄物から作った航空燃料で飛べるようになればやっとグリーンで持続可能な飛行機の旅が楽しめることになる。
ぼくもこれまでは空港からレンタカーを駆って目的地をまわったものであるが、ファクターファイブを語る立場となったので、心を入れ替えてドイツ国内の移動は電車で行うことにした。その分友人たちには駅への送迎の手間をかけることになる。
今日は、知り合いが低エネルギー住宅に改築をしたと言うので明日のブログでその報告ができると思う。
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03 Dec 2012 06:03:46 am |
持続可能性都市 |
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都市が握る地球の将来
現在地球人口のほぼ半分は都市部で生活している。そして都市部が地球温暖化ガスの70%を排出している。都市部が占めるのは地球上の陸地面積の僅か2%である。そして、都市への人口の集中化は今後も続き、2050年には90億の人口の70%の63億人が都市生活者となる。この早さは、毎月一個のロンドンが生まれているような早さである。これが、持続可能な社会への重要なキ―である。
70%の人口集中があるからこそ資源効率を高める方法も見出せる可能性があるからである。
ある調査によると、2050年までに都市開発の為に費やされる公共投資の総額は2.8トリリオンドル(約20京円)になるとの試算がある。これからの都市にとって持続可能性ほど重要な機能は無いと言える。持続可能性によって都市が評価され投資も行われる。当然、持続可能性向上の為の投資も増える。
ドイツの総合電機大手シーメンスは持続可能性都市を総合的に開発するビジネスユニット「インフラと都市」をこの企業の総力を上げて立ち上げた。この市場を年間30兆円市場と見て、市場リーダーになろうとしている。ロンドンに、2012年7月に「インフラと都市」の総合技術を展示するThe Cristalと呼ぶ常設展示場を作ったことは過去にこのブログでも取り上げた。
シーメンスは東日本大震災で全壊した東北の都市を持続可能都市として蘇らせる計画を携えて日本政府に働きかけたが、取りあって貰えなかったとの情報がある。
日本国内には持続可能性都市を総合的に扱えるような企業が無いので、国内産業保護政策としての無視であったと思われる。東北に世界の模範になるような持続可能性都市ができれば、それこそ、大きな希望が見えるのではなかろうか、日本の企業も一緒に参画すればノウハウも共有でき、巨大市場にも打って出るチャンスとなると思うものである。
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02 Dec 2012 12:11:31 pm |
持続可能な農業 |
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何億年も自然が営んできた生き残りの戦略を学ぶ
何処までも続く緑の牧草地や麦畑、梅雨時の整然と田植えをされた青々とした水田風景を見ると、豊かな大地の恵みに感謝と言う気持ちが湧く気がする。しかし、自然から学ぶ学問「バイオミミクリ―」の研究者たち、バイオミミックス達から見ると、何とも不自然で、グロテスクで危なっかしい光景に映るらしい。
本来原野には何百種もの植物が混在して生きている。それらは殆ど多年生で、光合成を行って種子を作っている。マメ科やイネ科の種子には炭水化物やタンパク質など動物が必要としているものが集められている。これらの植物は決してデタラメに生えているわけでは無く、厳しいルールに従っている。そこには何億年もの間に経験した、何十年サイクル、何百年サイクルの気候の大きな変化にも耐える事のできる戦略が用意してあると言う。
これらの多年生の植物のあるものは地上すれすれに、あるものはその上数センチに、さらにその上、中には数メートルの高さに達するものもある。これらはそれぞれの高さで太陽光を受けて光合成を行う。地中も又同じである。根の浅い植物から何十メートルもの深い根が層をなしている。これらの根の活動のお陰で、多種のバクテリアや昆虫が土壌をコロイド状にして空気を何メートルも地下まで運び、水は何キロもの地下まで浸透する事ができ、大量の水を保存する事ができる。このような自然原野は少々の長期的な気象変化にもびくともしない力を備えている。何年も降雨が無いと深い地中まで根を貼る植物が元気になり、水分を地表近くまで運び全てが枯れることは無い。大量の雨が降っても全ての種子が流される事は無い。それは長い歴史の中で学習して作った戦略なのだ。
人類は数万年前に農耕を始めた。大草原を耕す事で、多年生の根を絶やして人間の生活に都合の良い一年生の穀類を植えて来た。細かく耕された表面の土は、雨が降ると流される。その下の層は固く踏み固められているので水を浸透させず、地下にまで雨水が届く事は無い。何万年の内に農耕地はやせ衰えた。産業革命で化学肥料を合成することを知った人類は、この痩せた土地に窒素酸化物を大量に混ぜて穀物と牧草だけを育てた。現在の農業は、穀物や、牧草から人類が得ているカロリー以上の化石燃料を使ってやっと成り立っている。つまり現在の農業は持続可能性はない。
原野の持つ、生物多様性から学んで多年生の食用となる植物を混作栽培することが90億人の食糧問題を解決できる、唯一の持続可能性が有る農業であると気づき、やっと研究が始まっている。
同質のものを大量に耕作してきた人類は、同質の人間も大量に作って来たことが持続可能ではない社会を作ってきたのでは無かったのかと、ふと思った。
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