ダンテの森    
27 Jan 2013   01:19:58 pm
米国のグリーン経済元年
周到に準備された第二次オバマ政権の気候変動政策

 2013年1月21日のアメリカのオバマ大統領の就任演説によると、気候変動政策は第二次オバマ政権の次の戦場であると捉えているようである。(大統領演説については1月22日のブログ参照)この大統領演説の1週間前の2013年1月11日にホワイトハウスは国家気候アセスメントの報告書案を発表している。

 これは全文1193ページに上る報告書であるが、この報告書は全米、北は北極海から南は赤道近くの海洋、沿岸、平野、砂漠、湖沼、河川、山岳各地の地方のあらゆる分野の専門家による調査結果をまとめたものである。これまでアメリカ政府は国連IPCCの報告に対し、懐疑的であったが、今回はアメリカ国内のデータのみを用いて、アメリカ人の専門家による調査で有るので、反環境保護のロビーストや学者達の反論も少ないと思われる。選挙運動期間中には環境問題にはあえて封印をして環境保護反対の共和党支持者との対立を避け、当選後直ちに動き始めたところにオバマ大統領の真剣さが伺える。

 この報告書案の調査結果の最初の項目には、1895年から2012年までに全米の平均気温が1.5度F(0.833℃)上昇したが、その80%(0.666℃)は1980年以降に上昇したとしており、気候変動は人類は化石燃料を燃やした結果であるとしており、これまでのアメリカ政府の主張である地球温暖化と化石燃料の使用の関連は更なる科学的な検証が必要であるとするものから、大きく前進している。

報告書案の全文(英文1193ページ、150MBと大きいので注意!)は次のURLでダウンロードできる。
https://idc-insights-community.com/energy/clean-energy/smartbuildingscatalystsforasecondtermwhitehouseagenda

 今回のオバマ大統領の就任演説の目玉と言える環境への取り組みは、決して思いつきで発表されたものでは無いことは明らかである。このような大規模な調査と報告書の作成には数年の歳月と膨大な人員が投入されて可能である。またこの国家気候アセスメントは全米各州の大学や研究機関が参加して行っている。つまりオバマ大統領は自分が再選される事を前提に周到に準備をしてきたことは明白である。オバマ政権の真剣さが感じられる。

 やっと、最大のCO2排出国のアメリカが重い腰を上げグリーン経済への移行へと踏み切った。2013年はアメリカのグリーン経済元年となる事は間違いない。中国は昨年策定された第12次五カ年計画(2012年8月29日のブログ参照)で3年6ヶ月に30兆円の予算でグリーン化を推進すると決めている。安倍政権は環境問題に触れることは無いが、ぼくたちは「ファクター5」を出版する事で日本のグリーン経済元年として行きたい。

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25 Jan 2013   10:52:34 am
間違っている民放連CM
省資源・省エネルギーにネガティブイメージを植え付けるCM

 暖房を切って厚着をしたら頭がさえたとか言って、少し寒さと付き合いませんか、はじめよう節電、みんなの為にと言う民放連の節電CMを見た人、聞いた人はいるだろうか。使わない部屋の電気を消そうと言うのならともかく、冬の寒い時期に暖房を切るようなことを勧めるのは、特に高血圧の老人には危険さえ伴う間違ったキャンペインである。このCMを見たり聞いたりした老人に、もしもの事が有ったら民放連は責任を取る用意はあるのだろうか。

 当ブログで何度も書いているように、建築物を外断熱にして、強制換気にすれば、エネルギーコストは40〜80%削減できる。昨年暮れに訪れたドイツの低エネルギー住宅に暮らす友人宅はいずれの家も、外はマイナス15℃でも、屋内はとても暖かかった。こんなCMは省エネは苦痛を伴うものとの間違ったイメージを刷りこもうとする意図があるのでは無いかとさえ思ってしまう。

 民放連にはできないことであるとは思うが、できるのであれば自販機撲滅キャンペインでもやって見てはどうか、日本から600万台の自販機が無くなれば原発4基分の電力が即座に浮く。

 その他、日本特有の電力の無駄遣いには、多すぎる信号機と自動車道路の照明がある。欧州で車を運転すると気がつくが、まず信号機が少なく、交差点がラウンドアバウトと呼ばれる円形交差点になっていて信号機は無いが、交通の流れも良くUターンも簡単にでき大変便利である。自動車道路は車にはヘッドライトが有るのだから明るく照明する必要は無いので、基本的には危険個所など限定的に照明が有るのみである。

 交通信号は一基数百万円と大変高価で、信号機メーカーにとっては美味しい仕事であるので、どんどん増設される一方で有る。現在、日本全国に約20万基(東京都内だけで1万5千個所の交差点に信号があり、一か所あたり4基としても6万基)あると言われているので、制御装置も含めて控えめに見ても一基あたりLEDでも300WHの消費電力は有るだろうから、60万kWHとなり原発1/2基分の電力は使っている。これを3割減らせば20万kWHの節約になる。自動車道路照明については資料が無く分からないが、これも他の国と較べると多いことは間違いない。民放連は、これらを減らすキャンペインをやるべきである。それか、「TVのコンセントを抜こう」とやってみてはどうか。

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24 Jan 2013   03:49:49 pm
世界に背を向ける日本
「産業競争力会議」が環境・エネルギー政策を白紙に戻すことを決定

 このところ毎日政治がテーマになってしまっているが、ご勘弁願いたい。

 政府は23日、関係閣僚と民間有識者らで構成する産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)の初会合を開いた。健康、環境・エネルギー、次世代インフラ、農林水産業や観光など地域資源を重点4分野と位置付けている。「金融緩和」「財政運営」に続く三本の矢の一つであるそうだ。環境・エネルギーに関しては、民主党政権が掲げた2020年度までのCO2削減目標、原発廃止などを全てゼロに戻して検討しなおす事を決定した。環境政策やエネルギー政策は地球環境に関わる問題で、政権が変わったからと言ってその都度ゼロに戻して検討をして時間を無駄にしている余裕が無い事を安倍政権は分かっていない。オバマ大統領はその事を考え、グリーン経済への移行は、大統領が変わっても、多数党が変わっても変えることのできないものにしようとしている。

 日ごろ、安倍首相が最も重要としている2国関係と言っているアメリカの大統領が就任演説で述べたグリーン経済への移行と言う大方針転換は、ぼくの予想通り耳に入らなかったようである。

 今日になっても、日本のマスコミはオバマ大統領がグリーン経済への移行を訴えたことには全く触れようとしない。日本の政・官・財・マスコミは一体となって都合の悪い事は国民に知らせないようにする。日本人のほとんどは情報を新聞、テレビなどのマスコミから得ているので、比較的に情報操作は簡単である。マスコミは「我々は事実を報道している」と胸を張るが、報道しない事実がたくさん有る事を黙っている。

 今、スイスではダボス会議で知られる世界経済フォーラムが開かれており、各国の首脳や、経済界、産業界、学術団体、NGOなど代表の有識者が、世界の経済について話し合っている。この中で国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は「弾力性のあるダイナミズム」と言う講演を行った。その中で2013年は瀬戸際(make or Break)の年であるとし、各国の指導者は予算ができたからと言って安心してはならない。これからの経済界は透明性を持たなければならず、それにはソーシャル・メディアを使うべきと提案し、男女差を無くす事が経済を活性化させるとした上で、経済は必ず回復するとした。しかし環境問題は今すぐ真剣に取り組まなければ、私たちの娘達は気候変動の為に、トーストされ、フライにされ、グリルにされると警告している。

 日本からは甘利経済再生相が参加して26日にアベノミクスを世界に説明するとしているが、そこには当然グリーン経済への移行を目指すなどの発言が有ろうはずも無く、2020年までに25%のCO2削減をするとした鳩山宣言については無視することと思われる。
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20 Jan 2013   12:27:27 pm
バイオミミクリ―農法
農学者、福岡正信の「何もしない」を追求した自然農法は次世代の農法

 農業と言うとグリーンなイメージで環境負荷が少ないのでは無いかと思われているがそうでは無い。まず農業分野から排出される地球温暖化ガス(CO2換算)は年間54億トンで総排出量300億トンの18%で建築物、交通に次いで第三位である。現代農業は大量の窒素肥料を使って成り立っているが、窒素肥料1トンを製造するのにはほぼ同量の石油を使う。そして土壌に撒かれた一酸化窒素(N2O)の一部は大気中に放出されるが、このガスの温室効果はCO2の310倍である。また、水田は土壌表面に水を貼ることから土壌中で酸欠状態となり、メタンガス(CH4)が発生する。畜産農家では家畜の糞尿やゲップからも多くのメタンガスが大気中に放出されるが、メタンの温室効果はCO2の25倍である。

 その上、世界の淡水の70%は農業が消費しており、淡水の汲み上げ、輸送、灌漑にも多量のエネルギーが消費されており、農業は大変地球環境負荷の大きな産業である。

さらに、生産された農作物のほぼ半数は消費される事無く廃棄されており、巨額の無駄を生じている。食料品の廃棄の為の焼却や埋め立てにも多量のエネルギーが消費されているが、これは農業分野の環境負荷としては算入されていない。

 愛媛県出身の農学者、福岡 正信(ふくおか まさのぶ、1913年2月2日 - 2008年8月16日)、自然農法の創始者の存在を知った。福岡が開発した米麦連続不耕起直播は、稲を刈る前にクローバーの種を蒔き、裸麦の種の粘土団子を蒔き、稲を刈ったら稲わらを振りまく。麦を刈る前に稲籾の粘土団子を蒔き、麦を刈ったら麦わらを振りまくという栽培技術である。これは、できるだけ「何もしない」と言う事を追求した農法で、異なる植物の持つ特徴を生かして土壌を疲弊させないので、アジアやアフリカなど国家予算をつけてこの農法を学ぶ国もあるが日本では全くのマイナーである。1988年にアジアのノーベル賞と言われるマグサイサイ賞を授与されている。(因みに今度「ファクター5」を出版してくれる明石書店の石井社長は2008年にマグサイサイ賞を授賞されている。)

 日本の農業では、多くの窒素肥料、農薬、農機具を使うがそれらは全て農協(JA)が一手に販売をしている。出来た作物もJAが買い取るシステムになっており、農家はJA無しにはやって行けない。自然農法のような農法が広まると一番困るのはJAであろうからJAが推進するはずは無い。自然農法ではGDPの増加には結びつかないので、農水省も力が入るはずがない。

 福岡正信さんの御存命中には脚光を浴びることが無かったが、ぼくたちが目指す持続可能社会には欠かせない正にバイオミミクリ―の考え方だと思う。後継者の方々のご活躍を応援したい。
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19 Jan 2013   01:47:01 pm
エネルギー産業の目算
40年後のエネルギー消費は現在の2倍との見積もり

 世界の石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルは世界44ヶ国に資産を持ち、年間42兆円の売り上げのエネルギー産業の大元締めである。この企業は、エネルギー消費は今後も伸びを続け40年後の2052年には現在の2倍になると見積もって、石油に変わるエネルギー源として、天然ガスとシェールガス・オイルの開発に投資をして行くと発表している。

 現在世界で年間300億トンのCO2が排出されており、このまま続くと2050年には地球の平均気温は2.0℃上昇し、気候の狂暴化はますます進み、海面は5〜10m上昇すると言う事がIPCCの報告で明らかであるが、石油資本は構わず化石燃料を掘り出して燃やし、今の倍に増やすと言う。狂気の沙汰としか言いようが無い。エネルギーの使用量を減らして行く気はさらさら無いようだ。

 現に昨年一年間の気候の狂暴化で夏の暑さ、冬の寒さ、多雨地域での洪水、乾燥地域での旱魃、台風やハリケーンの大型化、竜巻等過去の記録を塗り替えるものが目白押しであった。現在もオーストラリアのシドニーで44℃と過去最高を記録中である。これから来る北半球の夏にも又、記録が新たになると思われる。

 世界のCO2の発生源の40%は建築物から出されているが、そのエネルギーは暖冷房、照明、換気、水に使われている。これを外断熱による高断熱、高気密構造にし、換気システムを改造する事で、80%の効率アップが可能なビルのグリーン化の技術が既に存在する。これをもし、世界の全ての建築物で行う事ができれば32%、年間96億トンのCO2の排出を止める事ができる。これにより損害を被るのは、エネルギー産業だけである。

 昨年、2012年7月からやっと日本でも取り入れられたFIT(再生可能エネルギー固定買い取り制度)で決められたkwH当り42円と言う価格を、自民党は見直して下げようとしている。再生可能エネルギーにやっと日本でも弾みが着いて来た矢先であるのに、もう方向を変えようとする働きが有るようだ。
安倍首相は海外で自国の事を臆面も無く「環境先進国」と呼んで憚らないないが、一体何を持ってそんな事が言えるのか不思議である。
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