|
17 Sep 2016 12:12:53 am |
分散型ソリューション |
|
|
分散型ソリューション
世界の貧困は1990年に20億(37%)から2012年には10億人(13%)に減少したと言うが、現在も電気の恩恵に浴していない人は世界には14億人いる。どうやってそれを克服してゆくか、その解答のひとつが分散型ソリューションである。
ブログ管理人
当ブログの愛読者にはもうおなじみの話題で、インドのロイ・ブンカー氏が1968年に開設したベアフットカレッジである。先日、自然エネルギー財団が主催したシンポジウムには財団創立者の孫正義さんをはじめとして、中国、韓国、ロシアの電力会社の最高経営者が集まり、ゴビ砂漠に巨大な太陽光発電所を作り、それを中国―ロシア―日本、中国―韓国―日本の2系統をループにして高圧直流超電導送電技術でつなぐと言うビッグプロジェクトの話題に沸いていたが、このベアフットカレッジの考え方はその対極にある。
産業界の人たちはどうしてもビッグプロジェクトを好む。一番喜ぶのは建設業界で、何兆円と言う金額のプロジェクトには目の色を変える。次に三菱、日立、東芝などの重電メーカーで超電導、超高圧など“超”が付くものには目が無い。国もそういうものには補助金を出したがる。しかし、巨大な太陽光発電所を作ってそれを電力網でつなぎ、そのどこかにエネルギーを貯める為の揚水発電所や巨大蓄電池を建設すると言う発想はこれまでのものから一歩も出ていないと思う。そして孫さん達が目指すのは、石油や地下資源に依存しない(これは地球環境にとって良い事であることには違いないが)安全な、電力を多量に安く提供することにあると言う。多量に安く提供すると言うところが、従来の成長経済思想から一歩も出ていない。孫さんのやってきた通信ビジネスでは、これまで全く無かった付加価値を提供し、初めは高価で一部の人のものであった持ち運びのできる電話を、安く提供する事で世界中の子供たちにまで普及させた。これはある意味で産業革命以来の成長経済の終着点にあたるビジネスであったと思う。この携帯電話を最後に成長経済の時代は終わり、ハーマン・デイリーの提唱する定常経済へ移行してきていることに産業界の人は気づいてもらいたいと思う。
ベアフットカレッジは、巨大な資本が必要な社会インフラとは対照的な分散型ソリューションである。電気も水も来ていない貧困国の貧困な村落に必要なのは電力会社からの送電線ではない。最低限必要な夜の照明と水の汲み上げの為の僅かな電力である。これには長い送電線など無用で、畳程度の太陽光パネルと自動車用バッテリーあるいはバッテリー付蛍光ランプかLEDランプのランタンが有ればよい。一つの村にまずは1セットあれば、子供たちは夜に勉強する事ができるようになる。なぜ夜かと言うと昼間は、羊やヤギなどの家畜の世話が子供たちの主な仕事であるからである。ベアフットカレッジはこのような太陽光利用の分散型ソリューションを貧困な村落に普及してきた。
ベアフットカレッジは当ブログでは2012年1月12日に取り上げて以来、ことあるごとに取り上げている。それは、ベアフットカレッジの考え方が貧困をなくす最良の手段の一つであると思えることと、インフラに頼ることなく世界中の小さな村が自立できることを現代技術は既に提供できるようになったことで、そこに「ファクター5」の著者ヴァイツゼッカーも注目しこの本の中でとりあげている。
ベアフットカレッジで教えるのは太陽光を使った、照明、調理器、井戸水の汲み上げなどである。ソーラーパネルの組み立て、据え付け、充電器と重電制御装置も作る。トランスを手で巻いて作り、ICチップや抵抗器などをプリント板にはんだ付けすることから教える。太陽光調理器は直径2メートル程のパラボラ反射板で太陽光を集めて高熱を作る。パラボラの骨組みの溶接から鏡板の取り付けまで全てを勉強する。対象となる学生は最貧村落で選ばれた祖母たちである。貧困な村落の女性は早婚が多く、30代後半には祖母になる。祖母は、家庭の中では少し責任が少なくなっておりベアフットカレッジでの半年間の勉強をする時間を作ることができる。ほとんどの学生は字は読めなく英語も話せないので教室ではサインランゲージと画像で学習が行われる。アフリカ、アラブ、中南米、アジアの最貧国から集まったおばあちゃん達は、生まれて初めて自分の村を出てインドに渡り、知らない国の人たちと一緒に半年間勉強して行くうちに、大きく変わって行く。まず太陽光発電装置、充電装置、充電式ランタンや太陽光調理器などを作れる技術を習得する。そして、自分が村に帰ってこの技術を村に生かせることで、自分の孫たちが夜勉強できるようになり、木くずを燃やすことなく調理ができ、井戸水を汲み上げるポンプを太陽光電力で汲み上げることができることを知る。
そして半年後太陽光技術者となったおばあちゃん達は自信たっぷりで村に帰って行く。これまで国際援助団体は同様の機材を届ける事をしてきたが、設置後数年で使われなくなるのが普通であった。僅かな故障でもサービスマンを呼ぶことができなければどんな素晴らしい機器も動かなくなってしまう。しかし、おばあちゃんエンジニアはそれを自力で修理することができる。それではなぜおばあちゃんでなければならないのか、理由は男は技術を得るともっと金を稼ぐことができる町に出て行ってしまうからである。おばあちゃんは違う、村で孫たちの為に頑張るのである。
次のURLでロイ・ブンカー氏がTEDで行ったプレゼンテーション(英語)を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=6qqqVwM6bMM
ベアフットカレッジのURL(英語): https://www.barefootcollege.org/ |
|
| |
カテゴリー : ブログ管理人 |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
15 Sep 2016 08:49:40 pm |
原発と石炭の日本 |
|
|
原発と石炭の日本
国際社会が原発と石炭火力から自然エネルギーへとシフトしようとしている中、ひとり日本だけは原発と石炭火力を推進している。それも国内だけでなく発展途上国にもそれを押し付けようとしている。海外の電力会社は既に縮小策を取り始めているのに日本の電力業界はいまだに成長戦略から離れようとしない。政治とべったり癒着した日本の最も汚い既得権益の姿が現れている。
ブログ管理人
昨年末に行われたパリサミットで安倍首相は2025年にCO2を80%削減すると発表した。因みにこの数値目標は民主党政権が発表したものである。安倍首相の頭に描いたものは原発であったのだろう。なぜかと言うと太陽光や風力などの再生可能エネルギーは2025年に22~26%と言っているので、残り58%~54%は原発でと暗に言っていると思えるからである。しかし、現在の電力業界と経産省とその下部組織の資源エネルギー庁はこのパリ協定すら無視した方向の石炭火力発電所に向けて驀進中である。
火力発電所には石炭、石油、LNGとあるが、同じ電力を生むのに石炭はLNGの2倍のCO2を出す。だから現在40%の効率を日本の持てる技術を結集して究極の技術革新をしても2030年に45%を達成してもLNGには遠く及ばない。世界の各国では石炭火力離れが既に起こっている。図はG7各国の石炭依存度の比較であるが、線より上は現状を表しておりグレーはキャンセルされた計画でG7合計で63GWである。下の緑と薄緑は現在稼働中の石炭火力を閉鎖か閉鎖を決定したものでその合計は2020年には124GWになる。右端で日本はひとり30GWの稼働を続けかつ建て替えが計画されている。
日本では実際石炭火力発電所建設ブームである。現在47基が計画中である。経産省は日本の石炭火力発電技術は世界トップであるので世界の開発途上国に技術援助としてどんどん建設しようと働きかけている。エネルギー超大国である米国と中国が石炭火力から離れようとしている事から石炭の需要見通しが減り石炭価格が安いことが日本の電力業界が食指を動かす理由であり、貧困な開発途上国にとっても魅力なのだ。
日本の役所と電力業界は原発と石炭火力は途切れの無い電力を供給する事ができるベース電源であるとしているが、実際には原発はしょっちゅう止まっている。安全性確保が要請されているために少しのトラブルでも念のために止めるのが原発の運転方法である。その為に原発の傍には必ず石炭火力発電所がペアのように建設されている。石炭、石油、LNGを燃やす火力発電所は電力調整が細かく可能でペアを組んでいる原発に合わせて調整をしている。原発は発電コストが安い(核廃棄物の処理と廃炉費用は国費なので)とされている為そのバックアップも燃料代が安い石炭でなければならないと言うのが電力会社の理由である。
2016年6月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)と言う電力業界の団体が、これまでエネ庁が行っていた電力業界全体の取りまとめをやることになり、2016年度電力供給計画なるものを発表している。まず需要予測であるが、今後10年間は年率0.5%で増加し続けるとしている。人口減少、生産人口の減少による経済活動の減少も省エネによる電力消費の減少も考慮されていない。電力業界が今後も成長し続けることが前提のようである。石炭火力は2016年4178万kWが2025年5060kWと21%アップとなっており、CO2を半分しか出さないLNGは逆に2016年4581kWから2015年3206kWに減らすつもりらしい。
石炭火力発電所にはこれまで地域住民とのアセスメントが法律で義務付けられており、通常計画発表から完成まで約10年かかっていたが、安倍政権はこれを「明確化」して新しい法律では3年に短縮した。風力発電所の建設には500kWの風車の建設にもアセスメントが必要であるが石炭火力発電所は112500kW以下であれば全くアセスメントは必要ではない。
日本の環境政策は、パリサミットなど金持ちクラブの会合向けと、貧困な国向けと180度異なった事を平気で行う。電力業界と言う巨大な資金源の呪縛から逃れることができないのが日本政府である。このままでは石火をめぐる国際社会のジャパン・バッシングが始まってもおかしくない。 |
|
| |
カテゴリー : ブログ管理人 |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
14 Sep 2016 10:53:09 pm |
マイクロプラスチック |
|
|
漂うマイクロプラスチック
ブログ管理人
皆さんもマイクロプラスチックは聞いたことがあると思う。微小なプラスチックの事でこれが海洋に大量に漂っている。その研究はまだ始まったばかりで実態は掴めていない。マイクロプラスチックの定義も決まっておらず、5mm以下、1mm以下など研究者によりさまざまである。現在どのくらいの量のマイクロプラスチックが海洋には有り、年間どのくらいの量が流出しているかなどは全く分かっていない。一年間で2億3千万トン(2009年)のプラスチック製品が作られたことは分かっているがそのうちどのくらいがマイクロプラスチックとなって海洋に流出したのかと言う資料はないが、一説によると約1割が海洋に流れ出しているしている。
なぜマイクロプラスチックが海に有るのか、その生成に至る過程には主に次の4つがあげられている。
① 製品として製造されたもの。これは、わざわざプラスチックを細かく粉砕してマイクロプラスチックにすることで商品としたもので、洗顔料で角質を除去することを売り物にしている洗顔料、美白効果を謳う洗顔料や化粧品、歯磨き、タイルや食器を白くする効果の強い洗剤などに研磨剤として使われている。従来は貝殻やくるみの殻を粉砕して作っており、これらは生分解性が有るために例え海に流れ出してもいずれはカルシウムや炭素に分解されていた。
② 製品を作る前段階の原料とする為のマイクロプラスチックで、ペレットとかナードルと呼ばれるプラスチックの前製品である。プラスチック製品は型に溶けたプラスチックを流し込んで成形する方法と、型にプラスチック粉末を入れ圧縮加熱して成形する方法があるが、後者の原材料がマイクロプラスチックでありこれらの残材料や機械を清掃した際に流されて海洋まで流れ着いたものである。
③ プラスチック製品が海に流された後、浮遊物同志が接触して破壊が起き細かくなったものや、強い太陽光を受けて光化学反応の為に細かい断片になったものである。
④ 化学繊維の端が摩擦で切れたり、洗濯中に繊維の切れ端が流れ出したもの。
マイクロプラスチックは下水に流されて下種処理場に送られるが、下水処理場のフィルターの目よりも細かいマイクロプラスチックはフィルターにはかからずそのまま海洋に流される。
死んだ海洋生物の消化器官には必ずと言ってよいほどマイクロプラスチックがある。魚の餌となる海底に生息するゴカイの消化管中にもマイクロプラスチックが有る事が分かっているが、それが食物連鎖によりどこまで運ばれているかなどの研究はない。魚介類の摂取によりヒトの体内にマイクロプラスチックがどのくらい入っているかの研究もまだない。
もう一つ怖いのはマイクロプラスチックはイタイイタイ病の原因となったPCBや発がん物質ダイオキシンなどの残留性有機汚染物質(POPs)とよくなじみこれらの物質を表面に吸着させて集める性質があることだ。POPsをたくさん表面に着けたマイクロプラスチックが海洋生物の体内に入り海洋生物に被害を与えたり、海洋生物を食べる人類に影響がでることも考えられるが、その研究もまだこれからである。
現在石油化学メーカーは生分解性のポリマーを開発中でこれをマイクロプラスチックに置き換える事により従来のマイクロプラスチックの持っていた欠点を補えるとしているが、年間数千万トンと言う大量の生分解性ポリマーが海洋に流出することで海洋の生態系や環境にどのような変化が起きるかは全く予想もされておらず、このような石油化学製品による代替は安易には行うべきではないと思う。
すでに一部の化粧品メーカーや洗剤メーカーでは初めているところもあるが、研磨剤としては以前には使われていた、貝殻やクルミ殻を粉砕して作るものに戻すべきである。若干コスト高となったとしても消費者にきちんとその理由を説明して環境を保護する為に必要な事であることを納得してもらうのも消費財メーカーの社会的責任であろう。コマーシャルは消費者が必要としていないものに消費意欲を持たせるだけでは無く、持続可能な社会を作るためには消費者に正しい情報を提供して理解を得ると言うことに使命感を持ってあたってもらいたいものである。 |
|
| |
カテゴリー : ブログ管理人 |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
13 Sep 2016 01:24:58 pm |
自然エネシンポ2016 |
|
|
自然エネルギー財団シンポジウム
ブログ管理人
去る9月9日(金)に東京国際フォーラムにおいて開かれた公開シンポジウム「世界中の電力網に自然エネルギーをつなぐ――「脱炭素の時代」へ急転換する世界のビジネス――」に参加してきた。
このシンポはソフトバンク会長の孫正義さんが私費を投じて設立した「自然エネルギー財団」の設立5周年を記念して開かれたものである。開場8:45と言う事で余裕をもって8:30に会場に着いたらなんと既に長蛇の列ができていた。列には知った顔がちらほら有りなんとなく安心した。
会場はフォーラムBの7階で席数はざっと2000位であったろうと思う。後部には報道カメラ用のひな壇が設営されており既にTVカメラの砲列ができていた。大スポンサーである孫さんがやるイベントとなるとTV局各社は無視できず各社来ていた。他の環境関係のイベントには見慣れない景色である。会場正面には3面の巨大スクリーンが用意され、日英中露韓の同時通訳付き、場内専用のWifiも用意される周到さである。黒上下のユニフォームの若いスタッフの数も多く行き届いたサービスを提供している。開始の前には満席状態となった。さすがに孫正義さんの集客力はすごいと圧倒された。
9:30のオープニングは同財団理事長のトーマス・コーベリエルの挨拶続いて「ファクター4」の共著者でロッキーマウンテン研究所創立者のエイモリー・B・ロビンス博士の基調講演に始まり、全3部構成で終了は18:00と言う長丁場である。
トーマス・コーベリエル理事長はオープニングの挨拶で、自然エネルギーを使う事で持続可能な社会を作って行けることを世の中に知らせなければならないとし①自然エネルギーコストが下がっていること。②CO2増加率が鈍化していること。この2つを喜ぶべき事とGood News!であると話した。②はともかく、①のエネルギーコストが下がる点はエネルギー価格とエネルギー消費が完全に反比例の関係にあることは衆知の事実であることから、エネルギー価格は政策として長期的に上げて行かなければ持続可能な社会へのライフスタイルの転換はできないので決して喜ばしいことでは無いと言ってほしかったところである。自らが欧州の電力事業者の役員をしているコーベリエル氏は、現在欧米の電力会社は、自然エネルギーが予想を上回る電力供給ができるとわかり、旧来型の発電所など数千億~数兆ドル単位の資産償却を強いられているとし、電力業界関係では失業者も出し経営陣は窮地に立たされている。しかし、日本の電力業界は自然エネルギーを接続する為には技術的困難があるとの理由で接続を拒むなど、欧米の電力会社では考えられないことが起きていると日本の既存権益の強さを嘆いた。
続いてエイモリー・ロビンス博士の基調講演があった。図1を示し、まず彼が1976年にGDPあたりの消費エネルギーは1/4にできると提唱した時には米国政府も産業もそれを認めていなかった(図の一番上の緑色の線)。ロビンス博士は30年後の2026年には0.25(ファクター4)になる(図の青緑の線)と予想したが、2011年に出された科学者の予測では2050年にはアメリカにおけるGDPあたりのエネルギー需要は1975年に比べて0.2(ファクター5)以下になるとしている。しかしこれは個別のアプローチではなくシステマティックなアプローチが必要であると述べた。
また、エンパイアステートビルが低エネルギー化改築を行った結果(図2)一次エネルギー消費が38%削減でき改築費用の4倍のコスト削減ができた。これに見ならう形で全米の巨大オフィスビルが競って低エネルギー化改築を進めており、最大で85%のエネルギー削減が可能となっており最新の低エネルギービルよりも良好なエネルギー効率を達成していると、低エネルギー化レトロフィットがいかに有効な手立てであるかを説明した。これは日本が最も遅れている分野である。エジソンが電球を発明した当時、エジソンは一定の光の量に対して課金をしていた。しかし、電球メーカーが乱立し同じ電力でより明るいランプを発明した為に、エジソンの会社の売り上げは増えなくなった為に、課金方法を光の量から電力量に変更して現在に至っている。照明を考えた場合ユーザーは電流を買っているのでは無く光の量であるルックスに対し代価を払っているのである。またエアコンを考えればユーザーは電力ではなく室内の快適な温度を買っているのである。だから現在の電力会社はまた昔のエジソンの時代に課金方法を戻して新しいビジネスモデルを考える時に来ているのかもしれない。スイスの銀行UBSは電力業界のことを恐竜と呼んだのは示唆に富んでいる。そして成熟した国々では人口は今後減少方向になるし、産業活動も減りそれに従ってエネルギー消費も減ってゆくことも考慮に入れなければならないとした。
この後、孫正義さんが中国のゴビ砂漠に広大なソーラーファーム用の用地の100年間の借地契約ができたことを報告し、そこで起こす太陽光電力を中国―韓国経由と中国―ロシア経由で日本の幹線に接続する構想を話した。続いて、中国国家電網公司前会長のリュウ・ゼンヤさん、韓国電力公社社長のチョ・ファンイクさん、ロシアエネルギー供給システム配電会社社長のオレグ・ブルタギンさん、ブルームバーグNEF会長のマイケル・リーブリックさんが登壇し、それぞれ自然エネルギーがグリッドに接続されることのメリットを講演した。孫さんの顔の広さと実行力を見せつけられた感を受けた。彼らの共通した論点は、できるだけ数多くの自然エネルギーをグリッドに接続することで供給の平均化ができ、需要供給のバランスがとりやすくなり結果としてエネルギーがより安く多く安定的に供給できると言うものであった。彼らの考える前提には今後もエネルギー需要が増え続けると言うものであり、エイモリー・ロビンスが基調講演で提唱した今後エネルギー需要は1/5に下がると言うことは全く無視された議論であった。昼休み後にエイモリー・ロビンスと名刺交換して、他の人たちからは省エネが抜けおちていましたねと言うと、「そうだね。この人たちはもっと電力を売ろうと言う人たちだからしようが無いね」と笑っていた。
パートIIでは「エネルギー転換で実現する100年続くビジネス」では東大名誉教授の黒川清さんが、日本の縦割り型社会、官僚社会、最近の日本人の内向き姿勢などに対する毒舌が面白かった。ドイツから来たドルテ・フーケ博士からはドイツのエネルギーヴェンデの話を期待したが、エネルギーヴェンデ自体が省エネルギーに根差したものであるので、ホストである孫さんに気を使ってか本音は聞くことができず残念であった。
パートIIIでは冒頭にデビッド・スズキが自然保護運動家の視線で熱く語ったが、シンポジウム全体から受けるものとは異質のものであった。
全体としてはビッグビジネスが好きな孫さんとそのお友達の集まりであるので、景気よく大きな構想を実現する事で停滞している経済を活性化させたいとの意思を感じた。その基本には今後ともエネルギー需要は増え続ける事が有り、それでは本当に必要な「足るを知る」と言うライフスタイルに変えて行こうすることにはならず、持続可能では無いとの印象を強く持った。この時参加した2000人もの人たちが知るべき正しいメッセージもところどころには散りばめられていたが、全体の雰囲気がイケイケムードで1980年代に戻ったような感じを受け止めて帰った人が多いのではないかと心配する。
全シンポジウムの模様は自然エネルギー財団のホームページからUSTREAMで動画を見ることができる。
http://www.renewable-ei.org/activities/events_20160909.php |
|
| |
カテゴリー : ブログ管理人 |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
11 Sep 2016 08:17:38 pm |
ブログ再開宣言 |
|
|
ブログ再開宣言
今日は911である。2001年9月11日ニューヨークのWTCが2機のジェット旅客機を乗っ取った過激派アルカイダにより激突炎上し3000人以上の尊い命が失われると言う空前のテロが行われた。テロ事件は今も続いている。貧困と格差社会がテロの温床となっていると言われて久しいが、それは改善されるどころか悪化の一途である。地球環境の問題も似ており、最近の気候の凶暴化は地球のテロと言えなくはない。
ブログ管理人が当ブログを開設したのは2011年8月15日である。当時の私は定年退職を1年後に迎え、以前から考えていた地球温暖化の緩和に役立つ運動を残りの人生のライフワークとしようとしていた矢先に、ドイツの環境学者で現ローマクラブ共同会長のエルンスト・ウルリッヒ・フォン・ヴァイツゼッカー教授との出会いが有り、さらに311の東日本大震災に続く東電福島第一原発事故があった。この2つの出来事が現在の私の進む方向を決定的なものにした。ドイツ語版「ファクター5」(2010年刊行)を読むうちにこの内容をブログで書いても良いかとヴァイツゼッカー教授に許可を求めた事からメールによる親交が深まり、来日の際には必ず会って話をすると言うお付き合いとなった。そして、2012年5月に突然、W教授からファクター5の日本語版の翻訳と出版を委託するとの署名入りの書面が届いた。それまで本の翻訳などした経験は無くましてや、出版など全くの初めての経験であった。サラリーマン時代の先輩が近隣に居住しており、その人がドイツ語の翻訳をしていた事を思い出し相談に行った。そこで、何人かの名前が上がりチームを作って分業でやれば何とかなると言う結論になり、W教授には2012年9月に定年退職した後と言う条件で承諾の返事をした。
翻訳をするのは私を入れて5名となり「ファクター5プロジェクト(F5P)」と名乗り、仕事の無い週末毎に九段下のドイツ商工会議所の会議室に集まって打ち合わせを行って、翻訳部分の分担などを話し合った。私は代表として出版社を見つけると言う事になった。かの有名はW教授の名前を出せばどこの出版社も大喜びで扱ってくれると思いきや、さに非ず大手の出版社は環境と言うだけで門前払いであった。前著「ファクター4」を出版した省エネルギーセンターは、時の民主党政権の目玉であった仕訳にかかり環境省予算がカットされ出版どころでは無いとけんもほろろで、政権交代のとんだとばっちりであった。監修をお願いした当時名古屋大学教授(現中部大学教授でローマクラブ会員)の林良嗣博士のご紹介で明石書店に決定するまでに、ほぼ一年を費やした。今、思い起こすと2012年と言うとリーマンショックがまだ後を引いており、政権交代、311と続き、続く出版不況で出版社としては売れるあての無い環境問題の本など出すところが無くって当然であったのだろう。
2011年8月15日から始まったブログ「ダンテの森」は2014年3月25日に「ファクター5」が刊行されるまでほぼ毎日更新され約1000回書かれている。本が出来上がるまでの緊張が解けて時間は前より有るはずなのにブログを書かなくなってしまった。
2015年中には10数回の「ファクター5」のレクチャーをさせてもらう事ができた。今年に入ってからはまだ数回しかレクチャーの依頼が来ていない。一年以上前にレクチャーを聞いて下さった地球環境問題に取り組んでおられる企業家の方に、先日再度お会いする機会があった。その方は私のレクチャーの後とにかく読んでみようと、1週間のカナダへの海外出張の往復の飛行機とホテルでの時間を使って読んでいただいたとお事であった。まずこの本は腰を据えて読む気にならないと読めない本であると言われ、読んだすぐあとに思ったことは実現はまず難しいいなと思われたそうである。しかし、この本の内容は1年間頭の中で整理されてくると全体像が見えて来て「やはりこの方法しかないな」と言う結論になったと言われた。それを聞いて私は涙が出るほど嬉しかった。しかし、その方が言われるにはこの本ではせっかくの素晴らしいい提案が世の中に広がって行かない、もっと簡単に読み切れる言わば「入門書」のようなものが必要だ。それを一日も早く書くべきだと言われ、その為の資金援助まで申し出て下さっている。その話を聞いてから既に3ヶ月が経とうとしているが、まだ「入門書」の構想すらまとまっていない。
2012年当時の緊張感を取り戻す為にはまずブログを書くことから始めようと決意して今このブログを書いている。明日から挑戦の日々の再開である。
<ブログ管理人=吉村皓一> |
|
| |
カテゴリー : ブログ管理人 |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
ページ: Prev 1 2 3 4 ...61 62 63 Next |