ダンテの森    
21 Apr 2012   05:54:08 am
都市排水の再利用
都市近郊農業を都市排水で灌漑する

 2005年の国連食糧農業機関(FAO)の報告によると7億人が都市及び都市近郊の農家から農作物の供給を受けている。
そして都市の1000世帯が出す排水の合計はちょうど1戸の農家が必要とする灌漑用水の量に匹敵する。現在殆どの都市排水は利用される事無く河川に放流されている。

 FAOの推定によると、既に50カ国の2千万ヘクタールの農地が直接あるいは間接的に都市排水で灌漑されている。これは世界の耕作地域の10%に上る。表はアジアの国々の都市排水の量を示しており単位は100万立方メートルである。これらは工業用水としての再利用か地下水へ戻すことが考えられる。

 都市にとって都市排水と雨水が周辺の農地の灌漑用水として使われることは、農作物の安定供給にも寄与し大変望ましい。都市近郊農業の発展は輸送距離の短縮や冷蔵保存の為のエネルギーの節約になる。

 イスラエルでは都市排水を一次処理して農業灌漑用水として使っている。ヨルダンもこれと同じ考えである。

 米国カリフォルニアでは25億立方メートルの都市排水を処理して中水道としてゴルフ場の散布用とトイレの洗浄様に使用している。次の段階としては2次処理後の水を飼料用作物の灌漑に、3次処理後の水は野菜・果物ように使うことである。

 これらを達成する事でこの分野では容易にファクター5が実行できる事が分かる。
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19 Apr 2012   06:02:01 am
製鉄の省エネ
水素還元製鉄はホープ

 製鉄はGHG(地球温暖化ガス)排出量の7%の責任があり、セメントと並び単一産業としては大口のCO2排出源である。

 1995年の資料によるとドイツの製鉄が最も効率が良く18GJ/t、1トンの鉄を作るのに必要な熱量を18ギガ(10の9乗)ジュール使っている。最悪はインドの37GJ/tで、世界平均は28GJ/tである。ちなみに日本は22GJ/tである。

 製鉄業界では熱源を現状では90%は石炭であるのをリサイクル燃料に置き換える研究が行われている。

 オーストラリアの研究所によると30%をプラスティック廃材に置き換える事が可能であるとしている。米国鉄鋼研究所(AISI)によると車の古タイヤ、ゴム廃材、廃油などが、有毒物質を大気中に放出しない方法が確立されればと言う条件で代替燃料として使用が可能であるとしている。

 最先端技術としてはCO2排出量がほぼゼロになる水素還元製鉄が研究中である。通常、石炭から出る一酸化炭素を鉄鋼石に反応させて鉄鉱石中の酸素を取り去り還元を行うのがあの100mもの高さの高炉で行われている製鉄であるが、この時大量のCO2が発生している。しかしこれを水素で行うと出てくるのは水(H2O)だけでCO2は全く出ない。また、水素分子は炭素分子に較べて小さいので鉄鉱石の奥深く入り還元を行う事ができるので反応時間が1/5に短縮でき省エネになる。

 次のURLで水素還元製鉄の詳しい説明とアニメーションを見る事ができる。

http://www.jisf.or.jp/course50/tecnology01/

これ以外に、昔に戻って木炭で製鉄を行う方法が有る。木炭による製鉄は60%のGHG排出量削減が可能であるが、この為にむやみに森林が伐採されると別の環境負荷が増えてしまう事になる。

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18 Apr 2012   05:59:08 am
中国の農業近代化
現状のままの中国農業こそが持続可能社会にマッチ

 中国では農業分野に於いて理想的な資源の効率利用が行われているが、残念な事にそれは経済の発展に伴い崩れようとしている。

 まず、この国の高い食糧自給率は食糧の長距離輸送による輸送の為の燃料消費を抑える事でフードマイレージに貢献している。

 高密度の野菜生産は比較的に狭い耕地面積で無駄なエネルギー消費を行う事無く多くの人の胃袋を満たしている。中国の農業は労働力集約産業であり、農民の報酬は驚くほど低く抑えられている。中国では100ヘクタールに300人が就労している。米国では2人で、世界平均は27人である。

 当然、農業の機械化は遅れており1000ヘクタールにトラクターが6台である。アメリカでは27台、世界平均は18台である。

 中国の農業で非常に高いものは肥料の使用量で1ヘクタール当り279kgで、世界平均の2.5倍である。しかし、この大半は農作物そのものが堆肥となって使われており、エネルギーを大量消費する化学肥料使用を最低限に抑えている。化学肥料は1902年にドイツのフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって発明され、高圧と高温を必要とするアンモニアの製造法は発明当時「水と石炭からパンを作る」と持てはやされ現在も広く使われているが、1トンの肥料を作るのに30GJ(ギガジュール)を必要とする。因みに鉄1トンを作るのには20GJのエネルギーを必要とする。

 しかし、中国政府は都市部と農村部の格差の是正を図るために農村部への機械化の推進を行い、農業へのエネルギー注入を行おうとしている。点滴灌漑などを使った省エネ農業を目指して貰いたい。
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16 Apr 2012   06:01:10 am
水資源の再利用
ライン河の水は10回リサイクルされている

 水資源に関しては旧来から存在する水利権と水質汚染対策の規制がうまく絡み合って大変幸運な状況が形成された。

 水資源利用の優先順位は工業先進国において、1960〜1970年代の河川、湖沼、海洋、地下水の水質汚染問題への解答として、国境を越えての規制が導入されて行った。2000年10月にEUで採択されたEU水枠組み指令で、EU地域の水質を持続可能に利用でき生態学的に健全な状況にする事を目的にしている。これ以外に1983年採択のEC飲料用水指令がある。

 最新の標準値は現在の水道水に含有される可能性のある48の微生物と有機物質について細かく数値で規定されている。これらは定期的に検査され報告されている。人口密集地域にあってはより厳しい標準が適用され水道水の供給配管システム内に検査地点を定めて検査が行われている。

 水道水の供給企業は水道水の元となる河川、湖沼、貯水池、地下水に対する数々の水質規制がより厳しく掛けられるように議会に対してのロビー活動を展開している。その目的は彼らがより清浄な水を原料として入手できるようにする為である。

 これが効をなして都市排水、工業排水に対する規制は大変厳しいものとなった。そのお陰でEUの水質は著しく改善された。例えばスイスに源流を発しドイツ、フランスの人口密集地域と重工業地域を流れ、オランダから北海に注ぐライン河の水質は浄化が進んだ。ライン河から取水されて再び放流される水の水質は河に放流ご直ちに取水しても上水道として利用が可能な程である。このお陰でライン河の水は10回以上再利用されており、ファクター10を達成している。
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15 Apr 2012   06:43:30 am
環境マネージメント
省資源技術は過去には更なる資源消費を招いた

 21世紀の最大の課題は経済発展における環境マネージメントである。

 人類がこれまで経済発展と言うと必ず資源消費の増加が伴っていた。資源とは木材であり、石炭、石油、水、その他の鉱物資源のことである。森林の減少や油田開発による自然破壊が起きてもそれが経済発展にブレーキをかける程の障害にならない限り問題にはされる事がなかった。気候変動でさえ、この状況を変える事は無かった。

 ニコラス・スターンは「我々が次の10年間にできることは、今我々が直面している環境問題は20世紀の世界大戦や経済危機で失ったものより更に大きなものを失うであろう。そしてこの失おうとしているものは、取り返す事が非常に困難であるか、全く不可能である。故に我々は緊急に決定をしなければならない。」と言っている。

 しかし、これは簡単な問題ではない。何故なら経済界は経済は発展を続けなければならないものとしており、その為にはもっと資源の消費が必要であると考えているからである。

 ファクター5の第一部では省資源は我々の生活の快適度を損なう事無く達成できる事を数々の実例を上げて説明している。しかし過去の経験によると、省資源技術が成功した分野では、更に消費が増える結果となっている。これを省資源のリバウンド効果と呼んでいるが、この問題を克服せずに環境問題の解決はない。

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