ダンテの森    
07 Jun 2012   05:59:49 am
IPCCとは?
国際レベルの地球温暖化対策に欠かせない資料を提供

 今月20日からブラジル、リオデジャネイロで開かれる国連持続可能な開発会議(リオ+20)が開催される。国連レベルでの環境に関する会議の基本となる資料を用意するのは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」と呼ばれる国際的な専門家集団である。

 IPCCはファクター5の著者であるフォン・ヴァイツゼッカー教授が共同議長を務める国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が1988年に共同で設立した機関で現在全世界に3000人の専門家を有している。

 この機関の目的は気候変化に関する科学的な判断基準の提供である。地球温暖化に関する科学的知見の集約と評価が重要業務である。数年おきに出すIPCC評価報告書はいつも話題となる。

 IPCCは現在の気候変動は人類が産業革命以来続けて来た化石燃料の大量消費が地球温暖化の原因であると科学的に証明をした。

 これまで、IPCCの報告には根拠が無いとしていたアメリカやカナダも最近IPCCに異論を唱えなくなった。しかし、いまだにIPCCは嘘をついているなどとマスコミに登場している反対論者も存在している。

IPCCが提唱する地球温暖化戦略は次の通りである。(重要な順)
1. 省エネ:これが最も効果的で早道であるとしている。
2. 燃料転換:バイオマスや廃棄食糧を発酵させたメタンなどを燃料にする。
3. 排熱利用:排温水、排熱などを回収して熱源として再利用する。
4. 再生可能エネルギー:風力、太陽光、地熱発電など。
5. 原材料の転換:地下資源に変わる原材料の開発。都市鉱山。
6. 製品設計の変革:基本デザインの段階から廃棄しない設計をする。
7. 淡水資源の効率的利用。
8. CO2以外の地球温暖化ガスの排出削減。
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05 Jun 2012   06:34:39 am
先進国の責任
持続可能な開発の進め方

 現在地球上に70億人の人類がいる。この内10億人が先進国(OECD諸国)であり、それに続いて中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア等の超大国を含む開発途上国の30億人が急速な発展をしている。さらに30億人が後発開発途上国と呼ばれる貧困な国々で人間が生きる事が出来る最低のレベルでの生活を強いられている。4億人の人々は1日1ドル以下の生活を強いられている。また、14億人以上の人々は安全な飲み水を得る事ができない。地球上で人類が消費するエネルギーの90%は先進国の10億人によって消費されている。地球上の資産の90%も10億人が住む既開発国に集中している。

 現在のエネルギー問題は先進国が産業革命以来200年にわたって地球の資源が有限である事を考えずに開発・発展を続けた結果である。残りの60億人の人達の責任では無い事は明らかである。先進国はこれまでの悪行のつけをまず払えと先進国以外の国は主張している。

 いま開発途上国ではインフラの整備の為の土木工事、ビル、住宅建設、自動車の増加がものすごい勢いで進んでいる。これらを持続可能性な開発にして行く手助けを行う必要がある。例えばセメントはポートランドセメントでは無くジオポリマーセメントを使う、建築物は高断熱構造、照明は自然光の有効利用とLED等の高効率光源の利用、等いずれもファクター5の中で実証例が示され省エネの為に投下された資本は数年から数十年で回収できる経済性も立証されているものばかりである。これらの持続可能な開発の為に有用な技術を開発途上国が最初から利用できるように先進国は援助をすべきである。

 彼らに先進国の歩んだ道を繰り返させない為に。
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30 May 2012   05:09:25 pm
国連環境計画
環境問題の解決には長期的な展望が肝要

 我々が過去に経験してきた公害問題は企業や政府が地元の自治体、村、町、郡、市、県、州のレベルでの地元の利益を誘導する事で解決がはかられてきた。しかし、グローバル経済が進んだ今日、環境問題は国際間の協力と調整を必要とする。

 現在、公害発生の可能性のある企業が、まだ規制の行き届いていないか、全く無い国を探して移転することをあきらめるようにと作られた政策が各国にはあるが、企業や金融商品はその政策からすら利益を得る事を考える。

 環境問題は、公害問題のようにその被害は地域限定的ではない為に特定の地域に利益をもたらすことでバランスが取れると言う性質のものではない。いくつもの地域や国家にまたがる、人権、科学、インフラストラクチャー、会社法など多くの問題を含んでいる。

 企業と公益の利害が衝突する場合に公益が単に一国のみで保護されていても、企業は、その事業を公益保護が十分にあるいは全く行き届いていない国に移して続ける事ができ、時にはそれを爆発的に増大することもでき、何の意味も持たない。

 冷戦の時代には企業や市場は、西側諸国を共産主義の波から守る防波堤は国家に任せるしか無く、国家が定めるガイドラインやるルールに行儀よく従っていた。しかし1990年にソ連が崩壊してからは企業や市場は国家の存在は障害物でしかなくなり、グローバリゼーションの名のもとに市場支配がはじまり、世界的な規制緩和がはじまり、地球環境にとっては悪夢と言える状況が続いている。

 環境問題の解決には、強力なリーダーシップのもとに100年単位での長期にわたる国際的な協調が不可欠である。現在環境問題は国連環境開発(UNEP、ユネップ)が一手に引き受けているが、UNEPは国連の下部組織であり、その権限には限りがある。


国連環境計画の広報ページ
http://www.ourplanet.jp/
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29 May 2012   05:59:12 am
市場にできないこと
100年単位で考える想像力は市場には無い

 この20年間、世界は不況に喘いでいる。政治家を含むリーダー達、企業家、経済学者達はなんとか新しい需要を喚起しようとやっきである。彼らにとって最も緊急な課題は、銀行、証券、保険会社を救済する事に有るように見える。2番目は民間の活力と信頼と信用の回復であり、3番目は国家が抱える巨大な債務を帳消しにするには、1980年代に行ったような大リストラを国家規模で徹底的に行うと言うケインズ理論による負債の組み換えをすると言う枠組みから一歩も出ていない。

 国民にとって大切なことは法の上の正義が守られることを前提に、インフラ、教育、健康的な生活が送れる環境が整備されることであると言う考えにはアダム・スミスも反対はしないと思う。

 市場というものは、利害が一致する権益内での技術革新や目標設定と実行そして資源の配分については積極的に器用にやってのけることができるが、全体観に立っての社会全体の枠組みを構築すると言う事は苦手なようである。

 ファクター5を達成する最も優れた方法として、50年100年単位の長期間にわたり省エネ効率の向上の実績に応じたエネルギー価格の適正な高値誘導が、最も効果的で、最も効率的で且つ最も社会的であるとしている。しかし、このような政策を長期間に渡り実現するには長期にわたる強い政府が必要となる。長期にわたるエネルギー価格の適正な高値誘導によってはじめて、生産者、商社、消費者の消費連鎖において資源とエネルギーの価格は常に高くなり続けるものであるとの認識が作られ、社会全体が省資源、省エネルギーこそが最も効率が良く有効な持続可能な開発の方法であると言う事を身を持って知ることができる。そこに新たな智恵が生まれ、新たな社会の流れが生まれてくる。社会の最小単位である個人や家族において毎日の生活のなかで常に行われている決定の基準として、どうすれば資源やエネルギーを使わないようにするかと考えるようになることが、持続可能社会を作ってゆくものと考える。

 持続可能な開発、持続可能性社会は100年単位の長期にわたるテーマで、人類が地球環境の一部に戻る為に必要なプロセスであると考えられる。冷戦終了後、世界を支配してきた市場は、消費者に対し、有る時は夢を与え、有る時は恐怖を与えながら、いかに短期間で成果を得られるかを追求してきた。彼らには四半期の結果がもっとも重要で、長期とは最長でも5年間でしかない。持続可能な開発は今後永遠に続けなければならないぼくたちの生活そのものなのだ。

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27 May 2012   11:07:43 am
CO2排出権取引
問題山積みの制度

 EUは京都議定書の発効と同時に、強力にCO2の排出権取引を進めて来た。GHG(地球温暖化ガス)の20%はCO2以外のガスであるが、これらを取引する市場は無く、CO2に換算して取引が行われている。NOxとフロン系のガスについては2012以降に排出権取引の導入が検討されることになっている。EU-ETS(欧州排出権取引スキーム)はすでにCO2以外のガスも含みGHGの40%をカバーしている。

 EU-ETSの要求項目の一つに設備の新設については毎年の報告が義務付けられており、もし購入量以上のGHGの排出が認められた場合には、直ちに不足分の排出権の購入が求められる。余った場合は当然売ることができる。

 欧州ではこれらの取引はECXと呼ばれる排出権取引市場で取引されている。

 排出権取引きには数々の問題も指摘されている。農業における単一種栽培、原子力発電、深海海底油田にCO2を注入する方法での採掘などがCO2排出権市場に参入してくることである。これらは一見CO2の削減に寄与するように見えるが、総合的にみて地球環境をより破壊するものであるからである。

 その他の問題としては、1989年に実行されたモントリオール議定書が、フロンのようなオゾン層破壊化学物質の使用縮小と代替フロンへの移行に注目しすぎたあまりに起きた問題がある。HCFC-22が代替フロンとして承認された時に、開発途上国が競ってこの代替フロンの製造を始めた。HCFC-22(これも近いうちに禁止物質になる予定で有るが現在は製造可能である)を製造する時にHFC-23と言う悪質な副産物ができることである。この物資はCO2の11,700倍の温室効果を持っている。このHFC-23を無害化処理をすると排出権が発生する。HFC-23の無害化処理に掛る費用は、それを行う事で得られる排出権に較べると僅かなもので、大きな利益が出る。HCFC-22を製造販売して得る利益よりも副製品のHFC-23の無害化をする方が儲かることがわかり、開発途上国が競ってHCFC-22の製造を始めたのである。その結果、欧州のCO2相場は下がった。

 その他、メキシコの緑化計画で発生した排出権を市場は高値で購入したが、後日これは森林を破壊して巨大な養豚場を作る計画であった事が判明すると言うような事も起きており、CO2排出権取引には制度上、まだまだ解決しなければならない問題が残っている。

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