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04 Jul 2012 12:31:20 pm |
自然から学ぶ |
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特に西欧社会にとっては新しい価値基準「自然」
バイオミミクリ―と言う言葉はアメリカのサイエンス・ライター、ジャニン・ベニュスが提唱する「自然から学ぶデザイン」の事である。
最もその有名なものは日本の新幹線技術に取り入れられている例である。時速300kmで走行する時に発生する騒音やトンネル突入時に発生する衝撃波の問題をフクロウとカワセミから学んだと言うものである。
新幹線は市街地に作られた専用軌道上を高速で通過するためにその発生騒音は75dB以下であると決められている。これは家庭用掃除機が発する騒音と同じである。新幹線走行での最も耳障りな音はパンダグラフ(天井に付いている電気を集める為の弓状の装置)の風きり音である事が分かった。JRの研究者はフクロウが地上の飛翔動物の中で最も静かである事に着目してフクロウの羽を真似てパンダグラフの風きり音を小さくした。又、カワセミが空気中から水中の獲物を狙う為にダイブをする時に全く水しぶきが上がらない事を真似て新幹線の先頭車両のデザインを行いトンネル突入時の衝撃波の発生を防ぐことに成功した。
バイオミミクリ―の3つの原則は次のようである。
1.自然をお手本とする。
バイオミミクリ―は自然のお手本を研究し真似るか、問題解決の手法として取り入れる、例えば太陽光パネルを幾何学的に並べるだけでなく、木の葉をまねる事を研究すると言うような、新しい科学分野である。
2.自然を尺度として考える。
バイオミミクリ―では新技術の評価を、自然に現存するものは38億年間にわたる改良の結果で、正しいものであるとして、機能性、最適性、耐久性の評価を行う。
3.バイオミミクリ―は新しい自然への知覚と尊敬である。それは我々が自然から何かを得ようとするのではなく、自然に習おうとする新しい時代の幕開けである。
ジャニン・ベニュスのプレゼンテーションが今話題のTEDで見ることができるので、次のURLを紹介する。プレゼンは英語であるが、このサイトに全文の和訳が付いている。
http://www.visualecture.com/wordpress/?p=1430
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Posted By : dantesforest |
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02 Jul 2012 06:11:36 am |
先進国を真似ないで |
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発展途上国は即刻ジオポリマーセメントに切り替えるべき
当ブログでは、製造時に大量のCO2を発生するポートランドセメントに代わるものとしてジオポリマーセメントを2011年の8/20, 9/7, 11/17, 12/11に紹介した。ジオポリマーセメントは現在一般にセメントとして使われているポートランドセメントに較べ80%も製造時のCO2の発生量が少ない。
このセメントはアルミニウムシリカ・セメントとも呼ばれ、アルカリ活性化した火山灰、高炉スラグ、フライアッシュ、カオリナイト、金属成分を含むスラグ等を原材料に作られる。ポートランドセメントの製造工程で石灰石を1350℃の高温で焼結する時に石灰石から放出されるCO2と高温を得るために燃やす燃料からCO2が大量に放出されるが、ジオポリマーセメントでは原材料の一つである水ガラスと苛性ソーダの製造時に多量のエネルギーを消費する為にCO2の放出があるだけで、ポートランドセメントに較べると80%の省エネになる。
ジオポリマーはアルミニウムシリカの粉末とアルカリシリカ溶剤の化学反応により作られる。古代エジプト人やローマ人はアルミニウムシリカ粉末は火山灰を使った。産業革命の発祥の地であった英国には火山灰が無い為に、たまたまポートランドに豊富にあった石灰石を使ってセメントができないものかと考えられたのがポートランドセメントでそれが世界中に広まった。
製鉄所から出る高炉スラグや石炭火力発電所から出るフライアッシュも原料になる。日本やドイツにおけるこれらの産業廃棄物の再利用はかなり進んでおり、高炉スラグは日本では50%、ドイツでは88%が、フライアッシュは日本では80%が、ドイツでは25%がすでに特殊セメントの材料として使われている為か、日本とドイツのセメント業界はジオポリマーセメントへの転換の機運は無い。日本ではコンクリート建造物の寿命は50年と言われてビルの建て替えが行われているが、ジオポリマーに変えると建造物の寿命が数百年にも延びるのは、建設業界やセメント業界にとって好ましくないからと言うのは、穿った見方と言うべきであろうか。
現在、世界で最も大量のセメントを使用しており、今後も2030年までは消費の増加が続くとされる中国とインドでは、高炉スラグもフライアッシュもほとんど再利用されることなく廃棄されている。中国の石炭火力発電量は世界一で大量のフライアッシュが出ているのにかかわらずである。
注)フライアッシュ:石炭火力発電所では石炭を小麦粉の様な粉末にして少量の水と混ぜてバーナーから噴霧して燃やす。燃えカスは細かい灰でフライアッシュと呼ばれる。
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30 Jun 2012 06:15:06 am |
バイオ燃料 |
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現在のバイオ燃料は持続可能な開発を助けない
代替燃料や再生可能エネルギーの話を農業分野の人と話すと必ず話題は「バイオ燃料」になる。アメリカでは原油価格の高騰にともない、まるで集団酩酊状態でバイオ燃料が誇大に語られている。
マレーシア、インドネシアや西アフリカの国々の広大な面積の熱帯雨林がパームヤシに植えかえられ、ブラジルの熱帯雨林は破壊されてサトウキビ畑となり、いまやエネルギー経済の一翼を担うまでになってきた。
自然保護主義者や環境学者達も一時はバイオ燃料に希望を託した時期があった。米国と欧州では自動車用のバイオ燃料が環境を救うとバイオ燃料市場形成の推進役となった。これは我々の犯した大きな間違いであった。
国連環境計画(UNEP)に出された報告によると、バイオ燃料の長所のみが誇大に評価され、短所は知らされていないとしている。特に顕著なマイナス面は自然熱帯雨林がパームヤシの林に置き換えられることで、熱帯雨林を取り巻く大気の成分、メタン、笑気ガス、CO2の大量移動が起き分布が変わった為に熱帯雨林の破壊が進むと言う事である。またブラジルの熱帯雨林がサトウキビ畑になることは生物多様性の観点から間違ったことである。また、バイオ燃料用の作物と食用作物の耕地面積の取り合いの為に食用トウモロコシの耕地面積が減り、最貧国の人々の中心的な食糧であるトウモロコシ価格が高騰すると言う人道的な問題もある。現在、バイオ燃料は自然保護運動家の攻撃の的となっている。
農業や林業から得るバイオ燃料は第二世代に移行することが望ましい。第二世代バイオ燃料とは、セルロースを基本とした燃料で、エタノール、バイオディーゼル、ブタン、メタノール、MTHFで、原料として考えられているのは、間伐材、成長の早いポプラやユーカリ、あるいは葦などである。製造にはこれら原料をまずバクテリアによりセルロース化して糖化工程に移る為に時間がかかり、収量もパームヤシやサトウキビに較べて少なく、広い耕地面積が必要となる。現在、セルロース化を促進する技術の開発が進められており、第二世代バイオ燃料が市場に登場する日も近い。
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28 Jun 2012 06:57:12 am |
ゴミの無い社会に |
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ゴミ処分場への投棄から焼却、リサイクル、都市鉱山へ
数百年にわたってゴミは衛生上の問題でしかなかった。道路や街を清潔に保ち、農業、手工業、家庭からできるだけ遠ざかったところにゴミは溜めておかれた。食品ごみは、コンポストにされるか家畜の飼料にされた。一昔前の工業においては殆どの材料は再利用されるようなシステムが作られており、出されるゴミの量も少なかった。
19世紀になってそれまでは考えることができなかった様な大量のゴミ、石炭ストーブから出される石炭の燃えカスが出されるようになり初めて廃棄物処理が問題となった。それ以来ゴミの排出量は増加の一途をたどっている。
プラスティック、ガラス、釘やヒンジの付いた木材、家具、日用品、事務機器がゴミとなっている。かなりの間ゴミは都市近郊に貯めておくことが一般的であった。しかし、虫やネズミの発生、地下水の汚染、悪臭などによりこの方法は継続が不可能となった。最近は、ゴミの投棄は禁止となり焼却炉による処理が一般的になってきている。処理時にだされるヘドロは肥料に変わるが、重金属の混入が無いかに神経をとがらせる必要がある。
1980年代に入っていくつかの国、特に日本とドイツではゴミを資源と考える動きが出て来た。ゴミの中から再利用可能なものを見つけ出して資源とすることでゴミの量も減らす事ができる一石二鳥の考え方である。
ドイツでは1980年代に包装廃棄物政令が出された。この法律により、販売業者は包装材の直接回収か回収システムを用意することが義務付けられた。これはまさにグリーン経済の誕生の瞬間とも言えるできごとであった。これにより70%が再利用されるようになった。次の段階は都市鉱山と言われる貴金属やレアメタルの回収である。ドイツでは1996年に循環経済・廃棄物法が制定された。
ゴミの処理法として現在一般化している焼却炉による処理は衛生面や大気汚染面には配慮されたシステムになっているが、貴金属やレアメタルの回収には向いていないので、新技術の開発が望まれている。ゴミを出さない製品設計が求められている。
このテーマについては林哲裕氏著「ドイツ企業の環境マネジメント戦略」に詳しく取り上げられている。
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27 Jun 2012 04:23:27 pm |
資源効率改善の歴史 |
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資源効率アップと消費拡大は産業革命の双子の兄弟
産業革命は英国から起こりありとあらゆる産業分野にわたり、またたく間に世界中へと広まった。70億人分の食料を生産する農業も例外ではない。70億と言う数字はマルサスにもジェボンズにも想像を絶する数字であろう。
石炭の埋蔵量はいまだにピークはむかえていない。そして、我々はやはり人類がいくら資源の効率を上げても、効率が上がることで消費がさらに進みいずれは成長の限界に突き当たると言うジェボンズのパラドックスを認めざるを得ない。もっとも資源の枯渇よりも先に地球温暖化による限界の方が先におとずれる事になるであろう。
ブーメラン効果というのは人類が工業化をはじめたときから副産物のようについて回るものであったのかもしれない。ジェボンズのパラドックスは、人類の長い歴史の中で産業革命以降の現象を事後評価しただけであったと言う事ができるかも知れない。
人類は自然を利用することを知り、資源をより効率よく使う事で人口の増加に対応してきた。人類は狩猟と採集をすることでそれ以前の状態から進化した。しかし、狩猟と採集だけでは地球上に数百万人がやっとである。その後、農耕と牧畜を学習した事で同一面積から10倍もの収穫を得ることができるようになった。
しかし、人類は生産効率の上昇よりも速い速度でその収穫物を消費する方法を見つけ出した。そうして人口は数百倍となり肥沃な土地を対象に部族間での戦争が起きるようになった。人類は定住するようになり、文化が芽生え、分業による職業が生まれた。村、町、都市、国家が形成され、指導者階級も形成された。エリートの存在はそうでない人々にとって羨望の的であった。この社会格差が上昇志向を原動力とする学習意欲や勤労意欲を盛んにして、結果として産業の発展をけん引することになった。
トマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus、1766年2月14日[1] - 1834年12月23日)は、イギリスサリー州ウットン出身の経済学者。古典派経済学を代表する経済学者で、過少消費説、有効需要説を唱えた人物として知られる。
ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons,1835年9月1日 - 1882年8月13日)は、イギリスの経済学者・論理学者。著書『経済学理論』
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