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07 Aug 2012 07:25:58 am |
冷戦時代の成果 |
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ジオポリマーはソ連がセメント不足に対抗するものとして再発見
セメントは世界で年間2.5ギガトンと言う途方も無い量が製造される工業製品で、その時に1.8ギガトンのCO2を排出して、世界の地球温暖化ガス(GHG)排出量の6%の責任がある。新興国の建設が進む中2050年にはセメントの需要は5ギガトンになると予測されており、CO2環境負荷は3.6ギガトンの排出量となる。
これは現在広く使われているポートランド・セメントの場合であって、これをジオポリマー・セメントに変えることで70%のGHG排出が減少されることが解っている。
このジオポリマー・セメントを再発見したのは、ウクライナの科学者ビクター・グルコブスキー(Viktor Glukhvsky)である。1960年台のソ連のセメント不足を補うためにポートランド・セメントの代替品を研究していた。鉄鋼の盛んなウクライナで多量に廃棄されていた高炉スラグをセメントとして使う研究を進め、住宅、鉄道枕木、土管、上下水道水路、工場の床、プレキャスト建材等広く使われるようになった。しかし冷戦期間中でこの技術が西側に知られる事は無かった。1990年になって始めてジオポリマー・セメントが学会に発表されたが、注目を浴びることは無く1994年と1999年の会議録に掲載されただけで終わっている。
2006年に「アルカリ活性セメントとコンクリート」と題して発表されたものにオーストラリアの研究者が着目して、2008年にグルコフスキーと共同でメルボルンに研究所を設立してこの研究所から発表している。
この中で、ジオポリマー・セメントは強度が優れていること、耐酸性、耐塩素性に優れ寿命が長いこと、凝固時の酸素の透過度が少ない為に骨材の鉄骨や鉄筋が錆びる事が無く強度が保てることなどの優れた面が報告されている。
ジオポリマーの名付け親はウクライナの科学者で1970年台にセメント技術研究をしていたジョゼフ・ダビッドビッツ(Joseph Davidovits)である。彼はエジプトのピラミッドは巨石を積み上げたものではなく、その場で型枠にジオポリマーを流し込んで作った人口石で出来ていると主張したが、エジプト政府は否定している。
この段階ではジオポリマーがエネルギーを使わない事には全く着目されていない。現在コンクリート建築の寿命が50年と言うのが常識になっているが、ジオポリマー・セメントにすれば150年〜200年になると言われており、大きな省資源となるが、建設業界などには有りがたく無い話しとして歓迎されていない。
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06 Aug 2012 06:52:42 am |
冷暖房と換気の無駄 |
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エアコンの無駄を無くすだけで世界中の原発はいらなくなる
冷暖房と換気、HVAC(Heating, Ventilation and Air-Conditioning)は総エネルギー消費の大きな割合を占めており、アメリカでは30%、欧州では56%、中国では61%である。
アメリカ、カリフォルニア州エネルギー委員会の調査によると、商業ビルにおいて、人が居ないのに冷暖房が行われる事によるエネルギーの無駄な消費は最大67%にも達することが分かっている。家庭ではこまめに入り切りされる冷暖房も会社では無頓着に使われていると言うことになる。
HVACの省エネ対策には様々な方法がある。例えば窓をガス封入のペアガラスと断熱構造のサッシの取りかえる事が挙げられるが、これに代わる方法として窓ガラスに赤外線より長い波長の光を最大99%までカットし、且つ可視光線は70%透過するものや、熱線は70%カットして可視光線は99%透過するものが市販されており、これらを貼る方法が有る。又、外壁の色も重要で、屋根の色を白くペイントするだけで室内温度を10℃は下げることができる。
図はカリフォルニア州の年間平均気温が異なる、オークランド、パームスプリング、サクラメントの3個所で採られた省エネ対策が、各項目ごとにどれくらい効果を表したかを示すグラフである。左から、屋根の断熱(20〜25%)、LED等の高効率照明への転換(2〜3%)、壁の外断熱と窓の対策を、西、南、東、北の方角別にその効果をしめし、屋上や屋根の色を白にする(3〜4%)、外気と接する壁面の面積を可能な限り少なくする設計を採用する(5%)、エアコン機器を最新の省エネ型に交換する、と並んでいる。
これらを全部行うと50%近い省エネとなりHVACのエネルギー消費は総エネルギー消費の30〜60%(国・地域により変わる)の約半分が省エネできる事になり、そのインパクトは大きい。これを行うのが「建築物のグリーン化」であり、グリーン化ビジネスが成立し、新たな雇用も生まれている。その上、これだけでも世界の原子力発電所を止める事が可能であり、シェールガスやメタンハイドレート等の新たな化石燃料も必要無くなる。
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27 Jul 2012 05:58:06 am |
農業用水の省資源 |
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中国は単位面積当たりの収穫量は多いが、水の消費量も多い
世界の淡水の70%は農業により消費されている。農業用水の需要は作物により大きな差がある。穀物1kgの収穫にはその種類により0.4〜5.0トンの水を消費し、畜産では1kgの牛肉を得るには32トンの水を消費している。その他、土地の含水性や用水路の途中の漏水などによる損失によっても大きな差がでる。
次に各作物の1kgの収穫に必要な水の量をトンで示す。
穀物:トウモロコシ 0.5〜2.1、小麦 0.8〜1.5、米 1.6〜3.5、ジャガイモ 0.9〜1.0、大豆 1.7〜3.5、大麦 1.3
畜産:牛乳 1.3、豚肉 2.0〜4.6、牛肉 16.7〜32.2、羊肉 7.0
その他:コーヒー 17.0、お茶 24.5、綿花 5.3〜17.0、たばこ 0.4〜0.6などとなっている。
同一作物でも水の消費量の大きな差は非効率的な用水の方法と管理にある。各国はまだまだ水資源利用の効率化を進める余裕が有り、効率化を進めなければならない。
中国は総面積に対する耕地面積が9%とアメリカの13%に較べると少ないが、1ヘクタールの農地で10人を養っている。世界平均は4.4人である。それでも中国は食糧自給率は95%以上を維持している。
中国農業は多毛作、大量の肥料投与、多大な人手による細かい作物管理により高い収穫率を達成している。農耕地の40%は人工的に灌漑が行われており、これは世界平均の18%、米国の13%に較べかなり高い。ただし、中国では農業用水は設計の粗雑な用水路と長い用水路での漏水により30%しか作物の根には達していない。この分野は中国政府が今後改善を進めて行くことであろう。
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23 Jul 2012 08:09:01 am |
グリーン経済への移行 |
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重要な政治的枠組み、それより重要な賢い国民
グリーン経済への移行を勇敢に始めた企業、例えばトヨタは1997年にハイブリッド生産を始め、フィリップスは2007年に同社の製品の光源を全てLEDにすると宣言していずれも大成功を収めている。しかし、これらのパイオニアたちが成功した背景には、原油価格の高止まり、2003年の金属材料価格の高騰、2004年頃から各国で始まった環境政策の改革などの周辺条件が大いに貢献している。
周辺条件には全く影響されずに成長を遂げた、携帯電話やインターネットのように、従来は存在すらしなかった新しい市場が生み出され、消費者も生産者も利益を感じるような革命的な産業分野とは異なる。
その為、グリーン経済への移行は、政治的、心理的、経済的なあらゆる角度を考慮した政治的な枠組みが重要になる。
経済政策的にはグリーン経済への移行は、ファクター5で記述している70〜80%もの大幅な省エネ・省資源を行う事で大幅な産業構造の変化が予想されるが、可能な限りシームレス(つなぎ目なし)で行われなければならない。蓄積された社会資本や設備投資が廃棄されるような事は極力避けるような施策が必要である。また、グリーン経済への移行の為の新たな資本投資も推進する必要がある。
重要な事はしっかりした政治的な枠組みをつくる事で、今後も発生するであろう大きな周辺条件の変化にも止まることのないグリーン経済への移行を担保することである。
過去に起きたリーマンショックでは、世界の経済人、技術者、マーケティングの専門家、投資家、政治家、マスメディアがこぞって茫然自失となり、方向を見失ってしまった。
グリーン経済への移行を、間断なく進める為には、政策も重要だがそれよりも、環境問題を十分に理解した、賢い消費者の力が最も必要とされる。
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19 Jul 2012 06:02:57 am |
古代セメント |
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環境に優しく、強く長持ちするジオポリマーセメント
現在使われているセメントはポートランドセメントで製造時に大量のエネルギーを消費し、CO2を排出しており、これをジオポリマー・セメント(古代セメント)に置き換えることで地球温暖化ガス(GHG)の大幅な減少が可能である。
オーストラリアの研究機関CSIROがジオポリマーセメントについて研究の結果、現在ポートランドセメントが使われている全ての用途に置き換えが可能であるとしている。CSIROがジオポリマーセメントの機械的強度を測定したところ、打設4時間後の強度が20MPa(メガパスカル)、高湿度に保たれ28日経過後には90MPaである。ポートランドセメントの標準強度は36MPaで、超高強度の場合60MPaである。また凝固時間は短く-20℃では10時間、+20℃では1時間と短い。
マドリッドのエドゥアルド・トロハ研究所がジオポリマーセメントで鉄道用枕木としての研究をした結果大変良好な結果を得ている。鉄道用枕木はコンクリートの用途としては最も機械的負荷が高いものとして知られ、これに使用可能であると言う事は全ての用途に適応可能である証明となる。
ジオポリマーセメントの研究が始まってまだ20年しか経過をしていない事から経年劣化についての検証がされていないとの議論が有るが、ジオポリマーセメントが古代セメントとも呼ばれるように、歴史を振り返る必要がある。古代ローマの建築物は火山灰をセメントとして使っていた事が分かっている。火山灰はまさにジオポリマーである。2000年経った今もローマのコロッセオやパンテオンを見ればその経年強度は殆ど劣化していない事が証明されている。
建設業界としてはコンクリート建築が50年の寿命として建て替え需要があることの方が環境保護よりも重要だと考える向きも有るようである。しかし、それはグリーン経済、すなわち持続可能社会への移行の過渡的な問題に過ぎない。
ジオポリマーセメントについては当ブログ2011/12/11、2011/9/7等にも詳しい。
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