ダンテの森    
07 Oct 2012   10:16:08 am
スマートグリッドとEV
小型火力発電所になり得る電気自動車

 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHEV)自動車を家庭の電源につなぎ、自動車を充電するだけでなく、逆に自動車の電池に蓄えられた電力を家庭の電源として使うと言うのが話題になっている。

 一方、電力の分配をしている電力線網を賢くすると言うスマートグリッドと言うのも話題になる。スマートグリッドはアメリカで始まった言葉であるが、各家庭にある電気メータにコンピュータを組み込んで、消費電力を逐次中央に光ファイバー経由で報告をするのみでなく、ネットワーク経由で家庭の家電をスマートフォンやPCから制御もできる。オバマ政権は2009年に34億ドル(2700億円)の予算で国家プロジェクトを立ち上げ、GE、シスコシステム、グーグル等が参加している。中国では第五次5カ年計画に4兆円(50兆円)をスマートグリッドに充てている。日本では10電力会社が、日本は既に最高の技術レベルで送配電網はできているので必要ないと消極的である(これは全くの嘘である事は、311の後の計画停電騒ぎで馬脚を表した。)が、2011年に電力村嫌いの菅政権が予算を付けて5年間に4000万台のスマートメータを付けることが始まっている。

 スマートグリッドが機能するようになれば、どの地域にどのくらいの電力需要が有るかを正確に把握ができ、データが集まればシミュレーションを行って精密な需要予測が可能になる。再生可能エネルギーの発電量予測や、工場等の大口需要予測を計算に入れて、需要と供給のバランスから電力の販売料金、買い取り料金を見積もる事も可能になる。家庭では安い時間帯に電気を買ってEVやPHEVに充電しておいて、高い料金の時に売電する事で設けることも可能になる。

 ここで注意したいのは、PHEV自動車エンジンで発電して充電した電気を高く売る方が儲かる等と言う事には間違ってもならないような税法上の仕組みが必要な事である。それでないと、火力発電所に変わって自動車が発電所になるだけで、化石燃料の消費は火力発電所よりも大きくなる事は間違いが無いからである。省エネリバウンドのリスクはどこにでもある。

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05 Oct 2012   06:57:28 pm
安いエネルギー価格の弊害
安いエネルギー価格が都市周辺に車なしでは通勤さえできない住宅地を造成した。

 ファクター5ではアメリカでのエネルギー政策の失敗がリーマンショックの原因であったとの仮説を唱えている。これについては当ブログの2011/9/17と2012/2/6でも取り上げているので、参考にしてもらいたい。

 乗用車に対する課税が引き上げられた事に対抗したデトロイトはトラックの税金並みで乗用車の豪華さ快適さを備えた新カテゴリーSUVを発明した、大きな重い車体と4輪駆動と豪華な車内、大きな強力なエンジンを備えており、燃費は3〜6km/ℓと大変に悪い。この車を使って会社に通勤する事は多くのアメリカ人の夢となった。

 この車なら片道100kmのフリーウエイも苦にならないと、都市の周辺に新たな宅地が造成されて行った。図は1992年から1997年までの間に農地や山林から宅地に転用された土地の面積の多い順に色分けして示したものである。数十㎢単位での住宅地開発が行われた。山手線の内側の面積は65㎢であるのでその規模が分かる。

 この住宅の殆どは住宅価格の毎年の値上がりを前提に組まれた超低金利の長期間ローンで低所得者に販売された。住宅価格相場が上がるとローンの組み換えをする事で、手元に現金が残ると言う奇妙な仕掛けであった。

 しかし、これはガソリンは安いものとの仮定の上に成り立っていた。原油価格は1998年には1バレル9ドルと安く、ガソリン価格は1ガロン(3.7ℓ1ドルもしなかった。これは1ℓ20円以下と言う安さである。原油は値上がりを続け2000年には35ドルとなったが、それでもガソリン価格はガロン2ドル程度で我慢ができた。

 ところが2006〜2008年にかけての原油は急騰し一時140ドルを超えた。これは中国とインドがその経済発展の為に価格を厭わず原油を買い付けた事に起因しているが、140ドルを超えたのは、機関投資家に依るものである。年金基金等の巨大なファンドを持つ機関投資家が設けをたくらんで原油を買い付けた為に急騰した。

 ガソリン価格はガロン3ドルを超え、SUVでの長距離通勤は不可能となり、周辺の住宅地の人気は下がり住宅価格は下落した。それがサブプライムローンの破綻につながり、リーマンブラザースの倒産になった。

 エネルギー価格を市場に野放図に委ねるとこのような結果が待っているとの教訓であった。

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28 Sep 2012   04:21:57 pm
カッシューム・ブルックスの仮説
エネルギー効率が上がっても消費は下がらなかった。

 エネルギー効率「省エネ」は20世紀半ばに一度だけ大変に注目された事があった。それは1973年の第一次オイルショック、それから1978〜1982年にわたっての第二次オイルショックの時である。

 原油価格の高騰の為に、石炭、原発の見直しや、当時流行していた石油暖房の見直しが叫ばれている頃であった。そして、数千年の人類の歴史で唯一のエネルギー源で有った再生可能エネルギー(水力、風力、太陽熱)などに、当時の科学者や技術者はエネルギー・ルネッサンスと名付けて俄かに注目していた。

 そして、エネルギー効率を改善することつまり省エネも、石油依存から離れる為の手段の一つとして考えられるようになった。英国では省エネを「第五の燃料」と呼んだくらいである。石油、石炭、原子力、太陽に続くのが「省エネ」と言う新しいエネルギー源だるとする考え方であった。これは各国に広がり、スエ―デンは省エネ基準を厳しく定めた建築基準法を制定した。アメリカはCAFE(Corporate Average Fuel Economy)でエネルギーの効率アップを推進した。

 1970〜1980年にかけてアメリカのDaniel KhazzoomとイギリスのLeonard Brooksはこれらの省エネ推進の総合的な結果がどのようなものであるのかを知る為に調査を行った。その結果は驚くべきもので、エネルギー効率の改善が行われていたのに拘わらずエネルギーの消費は減るどころか増加していたのである。

 二人の研究者はそれぞれ、異なった仮説を立てて、この現象を説明しようとしたが、それは省エネが進んだ為に生れた利益の使い道として、新たなエネルギー消費をともなう産業が興った為であった。

 このグラフの1978〜1982年まではエネルギー消費が後退しているが、それは1982年が当時としては原油価格がピークであった事に関連しており、その後価格が沈静化した後は消費量は増え続けている。エネルギーの消費量は、エネルギーの価格とより深い相関関係にある事が分かる。

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27 Sep 2012   09:39:11 am
物流の環境負荷
増加の一途をたどるトラック輸送

 ここ数十年の世界の物流の増加は年率3.6〜5.9%と、経済発展よりも成長率が高い。物流は増加する一方で、今後も年率4%程度の成長率で増加すると予測されている。

 持続可能な開発の為の経済人会議(World Business Council for Sustainable Development, WBCSD)は2050年までの世界の物流の成長率を年率2.3%以下に抑制するべきであると提案している。

 図は、世界の物流を、宅配、鉄道輸送、大型トラックに分けてその推移の予測をしたものである。この図のシミュレーションした基礎データは2004年のもので、2008年のリーマンショックが起きた時の物流量の大幅減少は考慮されていないが、2009年以降、中国、インド、ブラジル、ロシアの経済発展で、ほぼこの図の状態に戻っていると考えられる。

 注目すべき点は、最も環境負荷の大きな大型トラック輸送が最も増え続けると予測されている事である。トラックによる物流を減らすか、トラックそのもののエネルギー効率を革命的に上げる対策が必要である。
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26 Sep 2012   11:26:44 am
IT機器の省エネ
意外と使われていない省エネモード

 オフィスで使われているIT機器の省エネについては、2011年10月29日のブログでも書いたが、英国の研究機関によるとオフィスの消費電力の15%はIT機器によるもので増加傾向にあり、2020年には30%に達すると予想されている。

 全世界のインターネット上の情報量は2006年には637GB/秒であったものが2025年には121TB/秒と実に120倍の爆発的な増加により、IT機器の電力消費も2006年には470億kWhであったものが2025年には2400億kWhに増えると予想されており、これはCO2に換算すると1億3千万トンになる。

 図は連続運転した場合、業務時間のみ電源をONにした場合、省エネモードを使用後5分でスタンバイ状態になるようにした場合の比較である。実際には、スタンバイからの復帰に掛る時間が待ちきれなくて連続運転モードにして使っている場合が多いが、グリーンな仕事モードに変えることで地球環境に与える負荷を軽くできる。

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