|
18 Oct 2012 11:31:23 am |
各国の環境関連法 |
|
|
環境に関する法的規制については国により法体系が異なる。
アメリカでは1970年のはじめに、大気汚染と水質汚染問題解決の為に環境関連法の波が押し寄せていた。
資源保護とリサイクル関連法、有害物質規制法(TOSCA)、野生生物法、そして最も重要と言える1970年1月1日施行の環境政策基本法(National Environmental Protection Act)等である。そして、同年には環境保護庁(EPA)と言う実働部隊が設置された。
1980年のLove Canal事件を引き金に、カーター大統領が工業界に公害事件が起きた場合に対処する財源を予めプールして置く緊急資金法を制定した。このような連邦政府の動きに並行して各州は環境関連の幾多の法律を作って行った。中でも大気汚染に悩んでいたカリフォルニア州では厳しい規制や法律が施行された。
アメリカに於ける環境関連法の制定は、決められた規制値を超えた事により訴訟を起こされた企業を罰すると言う、アングロサクソン的律法の考え方から来ている。かくして、企業に対する訴訟は嵐のように起こり増加の一方を辿った。その対応が負担となった産業界は、これらの法律は役所の怠慢を産業に押し付けるものだとの世論を形成して行く事になった。
欧州では、少し異なった形で各国の環境関連法が形成されて行った。まず、EUが当時先行していたフランス、オランダ、ドイツを参考にして規制値を決めた。各国はその規制値を守るような法律を、EUと連携を取りながら作って行った。ある企業がEU内に工場を建設しようとするとき、その国の法律に従い規制値を守った設計の工場を作るが、操業にあたってはEUからの認可を必要とする。この認可制度がお役所仕事であるとの悪評は立ったが、認可を受けた工場は法的に守られ、訴訟の嵐に合う事は無かった。
日本ではさらに事なったアプローチが取られた。政府は産業界と打ち合わせた上でまずかなり高い長期達成目標値を発表した。これをもとに各企業は長期計画に沿って短期目標値を設定して環境改善の為の設備更新を行っていった。この方法は、予想以上に効果的でその結果は1976年のOECDで角倉一郎氏が誇り高く報告をしている。日本がまだ環境先進国であった頃の話である。
|
|
| |
カテゴリー : Factor Five |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
15 Oct 2012 06:11:05 am |
政府主導で輸送改革 |
|
|
トラック長距離輸送を鉄道輸送に変えたドイツの国家プロジェクト
地球温暖化ガス(GHG)の23%は交通から排出されているが、その内35%が貨物輸送によるもので、この部門は年率2.3%で増加し続けている。
貨物輸送で最もエネルギー効率が良いのは鉄道輸送で1トンの貨物を1km運ぶのに0.09MJ(メガジュール)のエネルギーが消費され、6gのCO2が排出される。
船舶輸送では0.17MJ, 15gで、大型トラックは3MJ, 200gである。小型トラックでは21MJ, 1500gに跳ね上がる。
大型トラックで行っている長距離輸送を鉄道や船舶に変えれば、大幅なエネルギー効率の向上が期待できる。しかし、現状の枠組みでは容易ではない。トラックやけん引台車を鉄道や船舶で運ぶとトラック会社は鉄道や船会社から運送代金を請求されこれがトラック会社の経営を圧迫するので、現実的では無い。
この問題を解決する為に、ドイツではドイツ鉄道(DB)がトラック輸送大手のシェンカ―(Schenker)を買収して北はフィンランドから南はイタリアまでの長距離輸送部分を鉄道に切り替えた。その為に全地域に24のトラックターミナルを整備し、数分間でトレーラーでけん引されてきた台車を鉄道に乗せ換える事を可能にした。(写真)
その結果、1日に13,300の長距離トラック輸送が無くなり、300万個/日、240億トンkmの貨物輸送が鉄道に置き換えられた。これは、ドイツ鉄道(DB)にとっては重要な収入増となった。
この様な変革は、政府主導の貨物輸送とロジスティクス・マスタープランの策定により実現された。政府の資金援助と指導力なしには実現不可能であった。この計画を実施するにあたり、余剰となるトラック運転手の職場確保と、特別退職金等の処置が取られた事は言うまでも無い。このドイツの成功例を見て、フランス、英国、アメリカも同様の計画を策定中である。
DB-Schenkerの案内のURL:
http://www.logistics.dbschenker.ch/file/1415022/data/hang3.pdf
|
|
| |
カテゴリー : Factor Five |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
13 Oct 2012 08:54:52 pm |
タブレットPCは省エネ |
|
|
減少の一途をたどるデスクトップPC
デスクトップPCは徐々にノートPCに置き換えられている。その理由は、大きさ、重量、材料の量、消費電力、騒音、発熱などによる。タブレットPCはノートPCよりも更に全ての面で小型軽量である。
ここに掲げる表は欧州(EU+スイスとノルウェイ)におけるデスクトップPC、ノートPC、タブレットPCの設置台数の推移(推計値)と置き換えによる材料の節減、消費電力の削減、それによる地球温暖化ガス(GHG)の削減量を表したものである。
2010年にデスクトップPCから、ノートPCとタブレットPCに置き換えられた為に約208メガワット時(20万8千キロワット時)の電力消費が節電され、2020年には1GWh(100万kW時)の省エネになる。これは典型的な原発1基あるいは石炭火力発電所1基分の電力に匹敵する。
これにより2010年には40万トン、2020年には200万トンのCO2換算のGHGが削減される事になる。
|
|
| |
カテゴリー : Factor Five |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
12 Oct 2012 04:56:25 pm |
ITと持続可能な社会 |
|
|
IT無しには持続可能性社会の実現は考えられないが、課題もある。
IT(Information Technology, 情報通信技術)は目覚ましい発展を続けて来た。IT機器の大きさ、重量、使用されている材料、消費電力は初期のIT機器の1000分の1以下になっている。ITは今後も高性能化、小型化、省電力化し続けてゆくであろう。今後はITが他の産業の資源生産性の向上の為の中心的要素になって行く。
EUは2008年に「EUが今後も発展して行くのに最も重要な事は、エネルギーを含めた資源消費量と経済発展を切り離すことである」としており、これにはITが果たす役割に大きな期待がされており、ITは持続可能性社会のコアと言える。
しかし、現状はIT産業そのものにもまだ問題を抱えており、ITを使った技術にも課題は多い。
●一次的課題。IT産業そのものの資源生産性の問題、例えばIT機器の消費電力、待機時の消費電力、サーバーセンターの巨大な電力消費の問題、スパムメール等によるIT資源の無駄遣いの問題などがある。それより最も大きな問題は、IT機器のリサイクル率の低さと言う問題である。現在世界で年間5千万トンの電子系廃棄物が処理されている。2008年には3億台であったPCが2015年には20億台になると予想されており、電子系廃棄物の量は増加の一途である。現在リサイクルされているのは20%程度で、その他は埋め立て処分されているのが現状である。
●二次的課題。ITが産業界で使われる事により、大きな省エネ効果がが実際に出ている。在宅勤務、電子請求と支払い、スマートグリッド、ビルオートメーション、ロジスティックなどで「最適制御」により資源生産性が大幅に向上している。従来有ったものがITに置き換えられたもの、例えばTV会議は出張を無くし、ディジタル写真は銀塩フィルムを無くした。しかし、携帯電話の様に以前には世の中に無かったものが出現して、その為に資源が使われる「誘導効果」も合わせ持つ。
●三次的課題。ITの発達により長期的に起きる社会習慣の変化、経済構造、工業構造の変化がある。これはエネルギー消費に頼らない持続性社会を作る大きなチャンスをもたらすが、ITの発展により、いままで想像もできなかった新しい資源消費が進む産業が興る可能性も含めて注意をし続ける必要がある。
|
|
| |
カテゴリー : Factor Five |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
11 Oct 2012 05:54:42 am |
電力固定買い取り制度 |
|
|
人類は過去には再生可能エネルギーしか使っていなかった。
何千年かの人類の歴史で人力や家畜の力以外で動力源として使われてきたものは、水力、風力と言う再生可能エネルギーだけであった。
化石燃料の発見、さらに電気が動力源に使えるようになってからは、水力発電と言う例外を除いては、再生可能エネルギーに対する興味が急速に衰え、産業界、経済界から忘れ去られ、姿を消してしまった。
再生可能エネルギーが再び姿を表したのは、1970年代のオイルショックからである。その後1980年代に起きたチェルノブイリの原発事故と、このころから科学者達が化石燃料の浪費によるCO2の排出で気候変動が起きているとの主張も有って、再生可能エネルギーは再び注目をされるようになった。
各国は競って開発と市場への売り込みを始めた。デンマークとドイツでは再生可能エネルギーが経済的に成立する様な法律が作られた。ドイツでは1990年に再生可能エネルギー法(EEG)と電力固定買い取り法(FIT)である。
ドイツの当時の政府であった、社民党(SPD)と緑の党(Gruen)の連立政権は再生可能エネルギーの発電設備の投資額が完全に償却が終わり、何年間か利益を生むくらいの期間にわたり高額な買い取り電気料金を保証するような、補助金制度とFITを作った。
日本では、奇しくも2011年3月11日の東北大地震当日の午前中に菅内閣により閣議決定され、本年2012年7月からFITが実施されている。この効果は大きく太陽光パネルの設置は9月現在昨年比150%以上の伸びを示している。
つい最近まで、経産省、資源エネルギー庁、マスコミ、お偉い先生方はこぞって、太陽光や風力はお天気任せであてにならないエネルギー源なので、期待できないと言っていたのが、いとも簡単に再生可能エネルギー賛成に変わっているのが面白い。
|
|
| |
カテゴリー : Factor Five |
Posted By : dantesforest |
|
|
|
ページ: Prev 1 2 3 4 5 ...42 43 44 Next |