ダンテの森    
20 Dec 2011   07:04:23 am
ファクター5戦略(2)
(1)エネルギー効率の改善

 エネルギー効率の改善はファクター5で最も多くのページを割いている戦略である。最も早く、簡単に実現できそして費用対効果も良くGHG(地球温暖化ガス)の抑制ができる方法である。

 前著ファクター4が出版された1970年代には省エネと言えば10〜30%を議論されていた。1980年代になると50〜80%が議題となり、1990年代からは90〜99%もの省エネが現実として報告されている。

 全米省エネ同盟(US Alliance to Save Energy)は50%の省エネを実施してもアメリカ経済は産業も家庭も現在の水準に全く影響が出ないと言う見積りを出している。

 タイムマガジンが1973年から2009年までに省エネされたエネルギーの総量を集計したら、原油の使用量の1年分、石炭と天然ガスの2年分、米国国内の原発が発電する電力の6年分に相当するとしている。

 ファクター5で更に新たな事実も報告している。ACEEE(全米省エネ経済会議)は省エネは300億ドルの資金で1000億ドルの産業を生み出すとしている。

 持続可能システム設計者のAmory Lovins氏によると、現存する省エネ技術の最も優れた技術を選び、その全てを投入すれば米国が輸入している原油と天然ガスの量を半分にし、総電力需要は1/4になるとしている。つまり、米国が氏はらている燃料の輸入価格は半分になり、各家庭の電気料金は1/4になり、米国のGHG排出量は現在の半分以下となるとしている。

 2008年のマッキンゼイ報告によると、現存する省エネ技術を採用する事で「壮大な結果」つまり2020年には世界は現在の消費エネルギーの半分になるとしている。そして各セクターで実施される省エネ技術への投資は多くの配当が得られるとしている。マッキンゼイによれば平均して17%の配当が試算されており優良投資先であるとしている。結果として2020年には9000億ドルの省エネが可能となる。


カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
19 Dec 2011   02:47:12 pm
ファクター5戦略(1)
システム設計者の担う責任

 持続可能社会の建設はシステムデザインが大変重要となる。

 システムデザイン全体の中で省エネ、エコ対策の設計費用はそのプロジェクトが始められる段階においては項目として上げられ予算配分もされるが、実際に目的のものが出来上がるころにはその80〜90%はもはや判別のつかない形でプロジェクト全体の中に埋もれてしまっているのが現状である。

 その上、インフラ、建築物、乗り物、工業製品や家電製品のデザインサイクルは10年以上の長い間変化しない。つまり、日進月歩で開発されている省エネの為の技術や新材料は取り入れられるのは次のデザインサイクルを待つ事になる。

 今日、我々の持続可能社会への取り組みはシステム設計者の考え方に委ねられていると言っても過言ではない。

 我々はこの現状を打開する方法を開発しなければならない。その為には情報の集積と提供、分野別研究をまとめる枠組みが必要となる。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は第4次報告で次の8つの分野の戦略に分けている。

1. エネルギー効率の改善
2. 燃料の転換
3. 排温、排エネルギーの回収と利用
4. 再生可能エネルギー
5. 資源材料の転換
6. 製品そのものの転換
7. 資源材料使用効率の改善
8. CO2以外の地球温暖化ガスの排出削減

 ファクター5では各セクター毎にこれらの項目についての議論がなされており当ブログでも取り上げている。


カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
18 Dec 2011   03:21:51 pm
持続可能性社会への道
私たちの奇跡の地球には時間が無い。

 持続可能性社会へのテクノロジー開発の実態はと言うと設計の専門家達は、世界で開発されている個別の新しい技術を統合する持続可能システム技術の開発を始めたばかりである。全体システムデザインとしては効率アップの為の方法の開発の初期の段階にある。

 しかし、これが標準化されるまでにはフィールドテストと呼ばれる実証実験を経なければならずこれが大きな問題となる。我々の奇跡の地球はそれを待つほどの時間の余裕が無いのである。トライアンドエラーを繰り返し、データを取り、解析をして、論文が作られ、学会で議論をつくし、論文が出版され、標準化委員会に掛けられそこで議論された後に初めて工業標準となる。このプロセスは最低でも10年がかかる。

 今、我々が必要としているのは世界の隅々で実践されている有効な省エネの知識を集約して大幅な効率アップ方法をこの10年間に見つけ出し実行する事である。

 材料工学のイノベーション、断熱、照明、スーパーウインドウ、インテリジェント電気分配等は全体設計に根本的な設計基準を必要とする。材料工学の開発速度は早く6カ月は「長期」と考えられている。システム設計はとてもそれに追いつけない。

 例えば、冷蔵庫の効率は熱伝導によるエネルギーロスが最も大きい。最近欧州で開発された断熱材を使えば一気に50%の省エネができると実証されている。他の例では、新開発の繊維材料を使う事で自動車、航空機、列車、船舶などあらゆる交通機関を画期的に軽量化できる事が分かっているが、その為にはこれらの設計基準を新たにする必要がある。
カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
17 Dec 2011   06:04:58 pm
製鉄所(3)
まだまだ効率アップが可能な分野

 GHG(地球温暖化ガス)の8%は鉄鋼生産から排出されている。

 2007年の世界鉄鋼生産量は1300Mt(メガトン=100万トン)であったが、そのほとんどは少数の主要生産国で生産されている。

 製造方法はどの国でも殆ど変わらない為に国間での比較は容易である。鉄鋼生産は2005年から2007年の間に8.3%増加している。競争が激しいこの業界では製造コストは可能な限り下げられているが、その生産効率は国によってかなりのばらつきが有る。

 1995年におけるドイツは18GJ/t(ギガジュール/トン)であるが、同じ年の中国では37GJ/tであった。主要生産国の比較は添付の表をご覧いただきたい。

 世界で最も生産効率の良い鉄鋼メーカーは米国のNucor社で12GJ/t(2006)であったが、全米の平均は23GJ/tに留まっている。この分野での省エネは最新の電気炉を使いスクラップからのリサイクルを行う事で最大93%の省エネが達成できる。

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16 Dec 2011   11:51:41 pm
材料のリサイクル
リサイクルによる省エネ

 材料のリサイクルによる省資源は原材料から製品を製造する場合とスクラップから製品を作る場合の製造に掛るエネルギー量を比較して考える。

 アルミニウム97%、銅70〜85%、鉛60〜80%、マグネシウム95%、紙64%、プラスティック80〜88%、ガラス68%の省エネが可能である。

 原材料の採掘と運送に必要なエネルギー量とリサイクルした場合のエネルギー量の差である。例えばボーキサイト(アルミノ原料)からアルミを取り出すには900℃で有るがリサイクルの場合660Cしか必要ない。市中から出されるゴミの中からアルミ缶をより分けるのは容易である。現在世界のアルミの30%はリサイクルからで2025年には40%を超えると予測されている。

 理論的には全ての金属は無限にリサイクルができるが、紙のように3〜4回しかリサイクルができないものもある。国に依っても取り組みの度合いは異なり、例えばガラスのリサイクルはドイツとフィンランドでは80〜90%であるが、アメリカは30%以下となっている。



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