ダンテの森    
09 Mar 2012   05:59:12 am
化石燃料は高くつく
エネルギー価格に神経質にならなければならない理由

 何故ファクター5ではエネルギー価格を上昇させる事にこだわるのか。新しい省エネ技術が世の中に認められれば、その技術は自動的に市場に認められそれなりの価値を生むのではないかと言う考えがある。

 携帯電話は世の中に出て来て全く新たなコストを消費者に押しつけたが消費者はそれをすんなり受け入れている。iPodは音楽の販売形態をCD購入から対価を支払ってダウンロードすると言う新たなビジネスモデルを作り、これも消費者に受け入れられた。このどちらも全くそれまでには無かったものなので消費者は受け入れた。

 ソーラーパネルとバッテリーとLEDランプを組み合わせたソーラーライトは今後、後発発展国にはこれまで無かったものだから受け入れられる事であろう。

 しかし、ファクター5で取り上げている省エネは照明、暖冷房、移動と言うサービスを受けるのに必要なエネルギーの量が画期的に少なくなると言うものであって、決して新しいサービスを提供するものではない為に新たな価値として認められにくい。

 照明、暖冷房、移動と言う同一サービスを受けるのであるから以前と同じ対価を払えば良いだけの事である。同一サービスに対する同一価格を消費者は負担する。その為の環境税であるが、それであっても強い抵抗が予想される。省エネで生まれた価値は携帯電話やiPodのような目に見える新しいサービスでは無いからである。

 多くの消費者にとって電気は電気でしかなく、それが石炭から作られようが太陽光から作られようが、同じ価値しか持たないからである。

 既に世界でもトップクラスのエネルギー価格になっている日本のことをフォン・ヴァイツゼッカー教授は日本はすでに世界の先端を進んでいると真面目に称賛している。

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08 Mar 2012   05:57:17 am
エネルギー価格の誘導
長期的環境税によりエネルギー価格の上昇を誘導

 省エネにより生じるエネルギー消費量の減少がエネルギー価格を押し下げるとそれによる消費の増加が起きる事を防ぐために、環境税によりエネルギー価格を中長期にわたり継続的に上昇させる政策が必要であると、ファクター5の著者フォン・ヴァイツゼッカーは繰り返し述べている。

 この政策は最低でも50年間程度の間エネルギー価格が上昇し続けるように環境税を調整しながら誘導する必要がある。価格が市場経済の中で無理なく上昇を続ける事ができるように変動の許容範囲を定めた帯(図参照)を設定して、帯の上下限値の間で有れば価格は自由に変動できるようにしておく。価格が限度を超えそうになると政府は市場介入をして修正を行う。

 途中、この政策を中断させるような強力な力や帯の幅を広げるような圧力がかかる場合もあろうし、石油枯渇が現実的になったり中東情勢や異常気象が続いたりすると価格が上がる事になるであろう。過去に労働賃金と労働生産性の関係においても生産性が上がっても賃金が上がらなかったりその逆で有った時期も歴史的に起きている。

 経済学者はこの考え方への評価は外部コストの内部コスト化であるとする。しかし、この場合厳密な計算をして価格への反映をする必要はない。地球温暖化や生物多様性の問題は計算で値が求められるものではないからだ。

 エネルギーと地下資源の消費は人件費よりも高くつくと言うことが証明されるだけで良い。課税の対象が人件費からエネルギー費に変わることで財務会計の考え方も変化してくるであろうことを望む。そうすればより省エネを指向する企業や国家の財政は良い方向へ進むことになる。この長期的環境税は技術革新、インフラ、消費者の考え方を変え投資家や市場が持続可能社会へと志向するようにしむけるものである。
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05 Mar 2012   05:56:32 am
水資源の有効利用
水不足は世界の緊急課題

 農業は世界の水資源の70%を消費している。

 農業における水の消費は米、麦、トウモロコシ、豆などの作物の種類、畜産、酪農などにより大きく異なり、さらに国により使用法や用水路の整備の度合いが異なる事により差が出る。

 穀物類1kgの収量に対し国により0.4~5トンの水を消費する。畜産(鶏、牛、豚)では1kgの食肉を生産する為に2~32トンの水を消費する。中国、アメリカ、インド、ブラジルの主要生産国での水の使用量には大きなばらつきがある。

 人口増加による食糧の不足が農業用水の需要を増やし、都市部への上水道の供給がさらに水不足に拍車をかけている。各国は水資源利用の効率化を緊急に図る必要があるが、長期的な水資源の持続可能性を踏まえた計画が必要である。

 中国は深刻な水不足と耕地面積の不足に直面している。中国では現在1ヘクタールの耕地面積で10人分の食糧を生産しており、これは世界平均の4.4人の倍以上である。その上国家政策により食糧自給率は100%であるので、農地は2毛作、3毛作で疲弊しつつある。中国の灌漑率は40%で世界平均の18%よりかなり高い。因みにアメリカの灌漑率は18%である。

 しかし、中国の灌漑用水の内30%しか作物の根の部分には到達しておらず70%は蒸発、地面への吸収、漏水で消えている。インド、ブラジルでも大差は無い。

 地下点滴灌漑を行う事で95%の水資源の節約が可能であることは2011/9/19と2011/9/20に書いた。
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27 Feb 2012   06:02:41 am
食品小売の省エネ
浪費の象徴スーパーマーケットの省エネ

 今日殆どの食料品はスーパーマーケットで売られていると言っても過言ではないだろう。従来のスーパーマーケット程省エネには程遠いものはない。

 お客がドアから入ると頭の上から夏なら冷風が、冬なら温風が吹き付ける。何度かまばたきをしなければならないほど眩しい照明が両側の商品陳列棚を照らしている。棚の谷間を歩いて行くと棚には冷凍食品、冷蔵食品、野菜、果物などがそれぞれの保存に適した温度の空気を吹き付けられて並んでいる。しかし、その間の通路はお客にとって快適な温度に保たれている。冷凍・冷蔵食品棚のそばの通路は夏でも暖房されているのだ。ここでは冷凍機と暖房機が同時に働いてしのぎを削っている。

 巨大な空間、空気の流れや熱の伝搬等が考慮されていないレイアウト、断熱を考えていない陳列棚等、スーパーマーケットは75~80%の省エネが可能である。

 世界最大の小売りチェーンWALMARTについてはこのブログではすでに何度か取り上げているが、ファクター5ではそれ以外のケーススタディも取り上げている。

図はスーパーマーケットの電力消費の内訳である。

Source: Australian Grocery and Food Council (2003)
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26 Feb 2012   03:40:57 pm
パン工場の省エネ(3)
実際にパン工場はどのような省エネを行ったか

パン屋さんの省エネの話の最終回(3回)です。

 ストーンミル・ベイクハウス(Stonemill Bakehouse)社はカナダで100年の歴史を持つ個人企業の製パン会社である。同社は2007年に「環境負荷ゼロ企業宣言」を出し直ちに節電プログラムと再生可能エネルギーからの給電を実施した。
 同社は原材料のフードマイルの削減の為に地元産の有機栽培穀物に切り替えた。その為地域の河川は農薬による環境負荷が低減された。
 包装材料やその他の消費財はリサイクル製品にした。製造機械には省エネの為の改造を行った。これらにより2008年には12%の節電を達成した。
 同社のURL: http://www.stonemillbakehouse.com/

 ファーガソン・プラレ・ベイクハウス(Ferguson Plarre Bakehouse)社はオーストラリアで100年以上の歴史を持つ個人企業で、1つの工場と50以上のショップを展開している。同社は「環境負荷ゼロ企業宣言」を出し強力な省エネプログラムを推進した結果70%の省エネを達成した。その主な内容は次の通り。
▼照明器具の取り換えとセンサーを使ったプログラム制御による最適照明。
▼欧州から輸入した最新のハイテクパン焼きオーブンの採用。
▼断熱処置とレイアウトを考えたオーブン室にオーブンを集合させる事で熱を閉じ込める事で熱効率の向上を図った。
▼冬場の寒冷期間には焼きあがった製品の冷却時に出る排熱をオーブン室に導入して熱を利用した。
▼冷蔵庫、冷凍庫の熱交換器の排熱を回収して給湯に利用。
▼太陽熱温水器による給湯。
▼10万リットルの雨水タンクを設備し従業員用トイレの洗浄に使用。
▼配送トラックをハイブリッド車にして25~30%の燃料の削減を達成。
同社のURL: http://www.fergusonplarre.com.au/History/Greenhouse-Challenge.html


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