ダンテの森    
26 Apr 2013   09:39:53 am
省エネ鉄鋼メーカー
スクラップ鉄と連続プロセスで熱効率を稼ぐ米メーカー

 日本の製鉄業界は、徹底的に省エネが図られ世界でも最もエネルギー効率が良いと思われているが、1トンに粗鋼を生産するのに必要な熱量は、世界平均は28ギガジュール(GJ)、国平均としてはドイツが18GJ、日本は22GJ、米国23GJ、中国とインドは37GJである。鉄鋼メーカーとして最も効率が良いのはアメリカのニューコア(Nucor)で、12GJである。

 ニューコアは現在米国最大の鉄鋼メーカーであると同時に最大の鉄クズの使用者である。2008年には生産量の80%を鉄クズを原料に鉄鋼製品を生産している。2003年にエネルギー消費を17%低減することに成功している。

 インディアナ州クロウフォーズビル(Crawfordsville, Indiana)の製鉄所では、2007年12月に世界初の連続鋳造圧延を始めた。第一回目の生産では38時間の間休みなく、製鉄―鋳造―圧延の工程が途切れなく行われ、24杯の取鍋に相当する2467トンの鉄が2387トンの薄板鋼板として生産された。

 この技術はオーストラリアのBHPと日本のIHIの共同開発になる技術である。これにより、高炉からインゴットにしてから、薄板鋼板を製造するのに較べてファクター5のエネルギー生産性を達成した。これまで高炉メーカーの独占であった、建築用の型鋼も電炉メーカーでも生産が可能になった。

 ニューコアの成功は、伝統的な鉄鋼メーカーや中小の平炉・電炉メーカーに大きな刺激を与え、設備更新が会社存続の大きな条件であることを気付かせることになった。また、鉄スクラップ市場がエネルギー低減に貢献することが再認識されることになった。ニューコアは直接還元による鉄鉱石からの銑鉄と、鉄スクラップの混合率のフレキシブル化を実現して、市場の動向に応じて生産する工場を建設している。

 同社は25,000人のチームパートナー(同社では社員をこう呼んでいる)が、世界で最も競争力の強い製鉄会社との誇りを持って働いている。2008年のリーマンショックに発する経済危機の際にも一名の解雇者を出さなかった優良企業ある。

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25 Apr 2013   10:52:41 am
水資源と農業
世界の淡水の70%を農業が消費

 淡水は化石燃料に次いで重要な資源である。地球温暖化による気候変動は、乾燥地帯には干ばつを多雨の地域には洪水をもたらし、その傾向は年々ひどくなっている。世界の淡水資源の70%は農業が消費(7000立方キロメートル)しており過去50年で3倍になっている。だから農業での消費削減が決めてとなる。

 パシフィック研究所のピーター・グレイク(Peter Gleick)が隔年で発行している「世界の水」(World’s Water)に掲載されたもので、どのような方法で農業における節水が可能かを述べている。

■正しい作物の選択: 気候や土壌に合った作物に転換することで50%もの水を節約する事ができる。畜産にも同様で、例えば乾燥した地方での牛の飼育は適さない。
■効率的な灌漑技術: 地表にパイプを這わせるだけの点滴灌漑でも十分効果が上がる事がわかった。後発開発国の貧困農家にも推奨できる。
■灌漑計画: 適正な時期に適正な量の水やりで17%の水の節約と8%の増収が可能。
■先進的灌漑技術: いろいろな方法、例えば水やりの中断を適正な時期に行うことで、30〜50%の水の節約と果実の大きさや糖度などの品質の向上が可能。
■雨水の貯蔵: 古来から雨水は溜池に溜められ灌漑用水として使われていた。雨水を集めるしかけを作り、灌漑用水とすることで、農業用水の消費を減らすことができる。
■都市排水の再利用: これは欧州では普通の事であるが、米国の研究で述べられている。都市排水を浄化して農業用水として使うことで、水道水の節約となる。

 立地条件に合わせてこれらを組み合わせて実施することで、80%つまりファクター5の水資源効率の向上が可能となるとしている。同時に栽培システムは環境の変化に対して強くなることも述べている。その上決して少なくは無いポンプ電力の節電にもなる。

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24 Apr 2013   03:10:00 pm
バイオ燃料と遺伝子操作
バイオマス燃料ハイテクプロジェクトは要注意

 農業分野での再生可能エネルギーと言うと、まずバイオ燃料が頭に浮かぶ。酪農から出る畜糞尿からメタンガスを取り出して、燃料に使うなどは好ましい例であるが、少し前になるが、メキシコでそれまで地元民が主食にしていたトウモロコシがバイオ燃料用の種類に植え変えられ地元の貧しい人達の主食が不足したと言うニュースや、インドネシアに大企業がパームヤシの植林をする為に大規模な熱帯雨林伐採を行ったとか、アマゾンの熱帯雨林がバイオ燃料用のサトウキビ林に変わったとか、自然保護団体からはイエローカードを突きつけられている。

 アメリカ・カリフォルニア大の研究チームは遺伝子操作を行った微生物にトウモロコシ茎やスイッチグラス(北米大陸に繁生する雑草)から作ったセルロースを食べさせてイソブタンを作るのに成功したと言う。イソブタンの特徴はエタノールとちがい、ガソリンとの混合比率が幾らでも良く、イソブタンだけでも自動車は走るので使いやすい点であると言う。これ以外にもカリフォルニア大バークレイ校では、遺伝子操作された大腸菌で同じくセルロースからブタンを製造する研究をしていると言う。

 しかし、このような微生物を使ったバイオ燃料の研究にはリスクが有る事を忘れてはならない。

 例えば、植物を食べて燃料に変える様な微生物が突然変異を起こし、世界に広まって全ての植物を食べ始めるような危険は絶対に無いのか。我々のコントロールが及ばない事態(福島原発事故で経験済み)になる事は無いのか、十分な検証が必要である。

 ファクター5では資源生産性を5倍にすれば、資源は1/5で済み、豊かな生活を変える必要もないと提案している。そして、資源生産性を5倍にする、つまりファクター5にする為の技術は今、既に現存していると述べている。少しでも環境負荷を増やすリスクは犯すべきでは無い。正しく省エネをすることは新たに発電するのと同じ事である。


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01 Dec 2012   10:47:10 pm
幸福度の数値化
GDPは幸福の尺度では無い。

 2012年8月20日のブログで環境を表すものとしてIPATの式と言うのがあることを紹介した。これは、環境負荷(I) = 人口(P) × 一人当たりGDP(A) × 技術的環境改善係数(T)の事である。このうち環境負荷(I)を数値的に表す方法はいくつかある。例えば環境フットプリントや一定のサービスを受け取る為に消費する資源の量を表すMIPS(Material Input Per Service)等がそれである。

 難しいのは生活品質である快適性や幸福度を数値化する事である。IPATの式では単純に一人当たりGDPをパラメータAとしているが、GDPが幸福度を示しているとは言えない。

 何がいったい人を幸福にするのだろうか、幸せな結婚、やりがいのある仕事、友人、社会の一員としての自覚などで得られる幸せの方が、資源を消費することで得られる幸福よりも大きい。この事は持続可能な生活様式への地ならしとして重要なことであ、ここには節約、辛抱、あきらめなどの暗いイメージを伴う言葉で表されるものではない。

 ファクター5で提唱する資源効率の改善は、全体的システム改善で行うもので、桁外れに大きな改善で持続可能な消費をもたらすものである。その結果、鉄鋼生産量は何メガトンも減り、電力会社は何ギガワット時も電力を作る必要が無くなり、それらに携わる人件費も下がりGDPは低くなる。しかし、GDPが下がる事を恐れることは何もない。GDPは単に売上の尺度に過ぎないからである。生活の快適度や幸福度には直接関係がない。

 この説明に良くあげられるのは、自動車事故である。事故を起した車を修理する為にかかる部品代や人件費、もしけが人が出れば医療費がかかりそれを払う保険会社の仕事が増える。これらは全てGDPを押し上げる。しかし事故を起こした当事者が幸せであるはずは無い。

 また、地球温暖化の為に潮位が一メートル上昇する為に沿岸に有る都市は莫大な費用を掛けて大規模な土木工事を行うが、これもGDPを押し上げている。これが人類に幸福を与えているとは言えない。

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27 Oct 2012   05:57:55 am
現代農業は資源浪費型
農業分野の省エネにはまだまだ余地が有りそう

 現代の農業の在り方は非常に資源浪費型であり、多くの省資源の可能性が有る分野である。

 例えば、世界の水資源の70%は農業によって消費されているが、その数%しか農作物には届いていない。

 特に酪農は水資源もエネルギーも大量に消費している。オーストラリア酪農公社によると、灌漑用水の25%と大半の地下水が酪農家により消費されている。

 農場が直接消費するエネルギーとしては電力と車両や農機具の燃料であるが、間接的には肥料や農薬の製造に消費されるエネルギーが有る。窒素肥料の製造には大量のエネルギーが必要で、1トンの窒素肥料の製造には28〜35ギガジュールのエネルギーが使われるが、これは1トンの銑鉄やセメントを製造するよりも多い。

 農場のエネルギー消費は過去20年間に、大規模化、自動化、24時間操業などにより増加の一途で、アメリカでの酪農での電力消費は乳牛1頭につき年間800〜1200kWhで、これはアメリカの平均的住宅1軒の1ヶ月分の電力消費に等しい。酪農における電力消費の最大のものはミルクの搾乳から貯蔵までにかかるもので50%を占める。続いて照明に20%、換気に20%が消費されている。

 一般的に農家の省エネモラルは低く、こまめにスイッチの入り切りを心がけるだけで簡単に数10%の電力を節電できると言う調査結果が有る。当ブログの2012/5/5に詳しい。
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